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北朝鮮核実験に関する韓国社会運動の反応

2006年10月9日午前、北朝鮮が行った核実験について 韓国の反応がマスコミを通じて伝えられている。 マスコミが伝えない韓国内のさまざまな議論の概略を紹介する。

金大中前大統領による「太陽政策」を対北政策の基本に置く青瓦台および政府与党は、これまで経済支援などによる対話政策を続けてきた。 だが北朝鮮が核実験を行ったことは国連決議への違反、南北非核化共同宣言への違反などとして強く反発、日米が主導する国連の決議に賛成する意志を表明している。 また従来の太陽政策では核実験を阻止できなかったとし、根本的な太陽政策の修正も避けられない見込みで、今後は日米とともに北朝鮮への制裁・圧力に参加することになりそうだ。

対北強硬論を主張しつづけてきた野党ハンナラ党は、与党の太陽政策が核を育てたとして与党を強く批判している。 野党はまた政府に対し、人道支援をはじめいっさいの経済協力事業、支援事業の即時中断を要求するとともに、韓米同盟の強化を求めている。

こうした国会の動きに対して、左派系の市民・労働団体では 核実験を批判すると同時に、米国の経済封鎖を始めとする強硬な措置が最大の原因であるとする意見が多い。 核実験の批判と米国の責任という2つのポイントに対する比重は、各団体の傾向により異なっている。 社会主義的な志向性を持つ民主系左派は、北朝鮮の核実験を批判するトーンが強く、 南北統一的な志向性を持つ自主系左派は、米国の責任を問うというトーンが強いと言えそうだ。

左派政党の民主労働党は韓半島非核化宣言を支持し、平和を願うという立場から、北朝鮮の核実験強行に対して遺憾を表明しつつも、 北朝鮮孤立化政策により核実験の原因を作った米国に最大の責任があると主張、北朝鮮への制裁に反対している。 つまり、北朝鮮の核武装を止めるという名目で行われてきた米国の経済制裁が逆に今回の核実験の口実になったという点で、米国の北朝鮮政策そのものに誤りがあったとする。 民主労働党としては今回の核実験に関していかなる軍事的行動にも反対し、直接対話、同時行動が問題解決の近道だとしている。 また、野党ハンナラ党による支援中断の主張に対しては、人道支援と経済交流は核開発の原因ではないため、問題解決につながらないとして反対している。

政府はコメやセメントなどの水害支援物資の積み出しを停止しているが、 人道支援・経済協力などの分野で活動してきた社会団体の多くは、 核実験への憂慮を表明しながらも 民間による対北朝鮮支援事業は政治とは無関係な民衆レベルの支援であるとして、いかなることがあっても支援は中断すべきではないと主張、政府の支援中断要請に反発している。

一般の市民団体もやはり、北朝鮮の核実験を強く糾弾すると同時に 北朝鮮を追い込んだ米国の外交政策にも批判の声をあげている。 核実験に対する見解は、おおむね核実験が朝鮮半島の民衆を核の脅威の担保にするもので、地域の平和と安定を脅かすという点で一致する。 リベラル系の市民団体の多くは、韓半島非核化宣言と6.15共同宣言の精神を基本理念として北朝鮮との交流や支援事業を行ってきた。 核実験がこうした前提を破壊するものである以上、容認できないという立場だ。 その反面、野党や日米などによる北朝鮮への悪意的な対応が 北朝鮮が核実験を行う口実と根拠を提供したことを指摘し、 武力行使や経済封鎖などの強硬な対応はさらに事態の悪化を招くとし、 対話の継続と包括的妥協による解決を主張する。

民主労総と韓国労総もやはり、北朝鮮の核実験には批判的な態度を示すと同時に 経済制裁で緊張を高めた米国の責任を指摘、対話による問題解決を主張している。

なお、韓国のマスコミの大部分は強硬論の立場だが、ハンギョレなどの 一部のメディアはやや異なる論陣を張っている。 ハンギョレは社説で核実験に対しては批判し、国連による制裁にも理解を示するものの、 朝鮮半島を戦争に導きかねない武力的な攻撃を憂慮し、韓国が率先して外交的努力により 危機を回避することを求めている。 特に南北の経済協力事業は、戦争の危機を緩和する有効な手段であるとし、政府の経済協力中断の方針を批判している。

文責:安田(ゆ)


Created byStaff. Created on 2006-10-10 02:55:20 / Last modified on 2006-10-12 23:17:45 Copyright: Default

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