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LNJ Logo 「雇い止め・JAL争議・大高事件」にみる暴走する裁判所(北健一)
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以下は、6月の「週刊 新社会」(写真下)にジャーナリストの北健一さんが「暴走する裁判所」と題して、3回にわたって連載したものです。許可を得て、転載紹介します。(編集部)

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●暴走する裁判所(上)

「夜勤明けで突然『契約を終わらせたい』と説明され、頭が真っ白になった」

 桜井斉(ひとし)さん(43)は、「雇用は今回限りで次はない」という趣旨(不更新条項)の記された契約書にサインしたときのことを、そう振り返る。

 桜井さんはホンダ栃木工場で、社員と肩を並べ、期間工として約11年間働いてきた。だが、リーマンショックの起きた08年12月末、雇止めに遭う。

 ホンダは周到だった。1ヵ月前の契約更新時、桜井さんたちと「不更新条項付の契約を結んでいたのだ。断れば、明日から働けなくなる。そう考えた期間工がやむなくサインすると、それがクビ切りの「合意の証」にされる。まるで�猗槊瑤穂��瓩世辰拭�

 納得できない桜井さんは雇止め撤回(地位確認)の裁判を起こすが、今年2月、東京地裁で敗訴する。判決で渡辺和義裁判官は、桜井さんたち期間工を「需給調整に対応する臨時的、一時的雇用者」だとした上で、契約書へのサインを理由に、「雇用契約の更なる更新に対する期待利益を確定的に放棄した」と決め付けた。11年働いても「一時的雇用」、断れば明日から仕事がないという不安の下でのサインが「期待の放棄」。ものづくりを支える非正規労働者の実情を無視した冷たい判決だった。

 東京地裁でいま、そんな判決が相次いでいる。歪みは、労働事件で特に目立つ。

 渡辺裁判官は、昨年末、IBM退職強要事件でも酷薄な判決を出していた。こちらの被害者は正社員だ。

 IBMで営業支援業務に携わっている杉野憲作さん(54)らは、2008年、会社から退職強要を受けた。わずか3カ月で、1500人もの同僚が職場を去った。

 安心して働ける職場にしたい。杉野さんはそう考え、同僚3人と裁判を起こす。杉野さんら原告側は、机を蹴り、ペットボトルを振り回して退職を迫るなど、上司の常軌を逸した言動を秘かに録音し、提出した。人権侵害の退職強要の、それは「動かぬ証拠」だった。だが判決は、「(会社を辞めないという)不誠実な回答に終始する原告に対する苛立ちの現れとしての軽微な動作又は癖(貧乏揺すり)にすぎなかった」と、密室での脅しを庇ってみせた。

 杉野さんは言う。

「判決を聞いて、『またパワハラを受けた』と思いました。最初は会社からでしたが、今度は裁判官から」

 労働者や市民の権利を守るべき裁判所が、金と権力を持つ側ばかり勝たせる。その背景に何があるのか。「司法という権力」の闇に、迫ってみたい。

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●暴走する裁判所(中)「倒産村」の理屈を鵜呑み

 大企業の事情ばかり斟酌し、労働者にあまりにも冷たい――。そんな東京地裁労働部の審理のなかには、「まるで自作自演」という批判が起きているものもある。ほかならぬ日本航空(JAL)解雇裁判だ。

 JALは、一昨年の大晦日、パイロットと客室乗務員(CA)165人を整理解雇した。

 この解雇について、稲盛和夫会長(現名誉会長)は「誰が考えても、経営上必要なかった」と講演で明言し、法廷でもその旨証言した。会社更生手続き中の解雇だったが、実施されたのは、JALが空前の営業利益をあげた年度途中だった。

 経営が傾いた会社がやむなく行う解雇の是非は「整理解雇4要件」(4要素)という基準で決まる(�/涌�整理の必要性、��解雇回避努力を尽くしたか、�H鏖鮓杣圓凌輿�は合理的か、�っ銚鬚覆票蠡海�は妥当か)。裁判を通じ、この解雇は必要性もなく、手続きも乱暴だったことがはっきりした。

 結審の日、会社側はこれまでの審理を無視して、「本件には整理解雇4要件は適用されるべきでない」との学者意見書を突然提出。裁判官に却下された。「解雇は整理解雇4要件を満たしていなかった」。原告(組合)側だけでなく、会社側もそう考えていた証左、にも見えた。

 ところが3月29日(パイロット)、30日(CA)に言い渡された判決は、まさかの原告全面敗訴。東京地裁前は、怒りに包まれた。  パイロットの原告団長、山口宏弥さんは、こう話す。

「東京地裁が認可した『会社更生計画』にもとづいて、地裁が選んだ管財人の手で行われた解雇を、同じ東京地裁が、公正に審理できるのでしょうか」

 実際、2つの判決は、「会社更生計画にもとづく解雇だから正しい」という理屈で貫かれている。関係者の間で「2つの判決のネタ本」とささやかれているのが、結審の日に提出された証拠の一つ、早稲田大学大学院・伊藤眞教授の意見書だ。

 会社更生計画にもとづいて公正な管財人が行う解雇は、あらかじめ「客観的な正当性が確保」されている。会社に予想外の利益が出ても、解雇をやめれば更生手続きに対する「出資者、経済社会」の「信頼を傷つける」、というのだ。

 倒産ビジネスに群がる人々は「倒産村」と呼ばれる。伊藤教授はその論客だ。

 カネを出す者の利益を最優先し、会社更生計画を治外法権に置けと叫ぶ「倒産村の理屈」を、JALは最終準備書面に盛り込み、裁判官は鵜呑みにした。3月29日と30日は、地裁労働部が倒産村に屈した日だったのか。

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●暴走する裁判所(下) 事件をねつ造「裁判所前の男」


 *6.13法廷イラスト=ジョニーH

 日本航空の解雇裁判の問題は前号で書いたが、刑事裁判でも<自作自演>がある。「裁判所前の男」大高正二さん(71・写真下右)が、公務執行妨害と傷害で起訴された「事件」である。

 大高さんは、自らの民事裁判で納得のいかない判決を受けたことを機に、東京地裁前で<官僚司法>批判を始めた。

 雨の日も風の日も、「裁判官、まじめに仕事しろ」などとハンドマイクで訴える大高さんは、不当な訴訟指揮や敗訴に打ちひしがれた多くの市民を元気づけ、「裁判所前の男」と呼ばれるようになった。

 苦々しく思った裁判所は、大高さんにだけ「カメラ付き携帯電話の持ち込み禁止」を命じる(他の市民には規制はない)。

 そして2010年8月10日、大高さんが地裁の傍聴席で携帯電話をマナーモードに切り替えるところを職員が覗き窓越しに確認するや、閉廷後に退去を命令。大高さんを囲み、体を担ぎ上げ、第二南門から構外に出した。

 こうした職員らの、法的根拠なき<有形力行使>によって、大高さんは全治7日間のけがを負う。

 ところが裁判所は、「門を施錠する際、職員S氏が大高さんから頭を殴られ、コブができた」と言い出し、警察・検察が大高さんを逮捕、起訴した。

 大高さんが敢然と無実を訴えると、東京地裁(多和田隆史裁判長)は異例の態勢をとる。審理が開かれる429号法廷前の廊下を黒い鉄柵で封鎖する。多数の職員を配置し、傍聴人全員にボディチェック。公開法廷なのに、傍聴者がまるで「国家の敵」扱いで、退廷命令も乱発された。

 検察官は「被害者」のカルテも、一部始終が映った防犯カメラの映像も、なぜか出そうとしない。

 萩尾健太弁護士ら弁護団の粘り強い追及で、真実が次第に明るみに出た。「被害者」S氏にこぶはなく、CTもX線も異常は皆無。防犯カメラの映像にも、「大高さんによる暴行」は映っておらず、客観証拠はすべて「事件=ねつ造」を示していた。

 6月13日、結審の日の法廷で大高さんは「告発から訴訟指揮まで、すべてがデタラメだ!」と訴えた。

「被害者」Sさんは、良心の呵責からか法廷で泣き崩れ、「最初に診た」最高裁診療所の医師は、カルテすら作っていない。<官僚司法>がこしらえた「デタラメなストーリー」は、すでに崩れかけている。判決は、9月19日午前10時から。

 誰しも、批判を受けるのは心地よくはない。だが、表現の自由を守るべき裁判所が、自らへの批判を「ねつ造」で封じるなら、この世は闇だ。

筆者=北健一(ジャーナリスト)

「週刊 新社会」


Created by staff01. Last modified on 2012-07-03 19:13:34 Copyright: Default

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