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〔レイバーネット国際部・I〕
台湾の国立美術館に派遣され、その後解雇された労働者を支援する芸術家の取り
組みが掲載されていたので訳してみました。

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2010/08/29 苦労報道

芸術家・陳界仁の個展で解雇された派遣労働者を支援
国立美術館は派遣労働者を直接雇用せよ

王毅豊 (苦労網 特約記者)

原文および写真
http://www.coolloud.org.tw/node/54130

街頭闘争の風景がいきいきと台北市美術館のホールに出現した!昨日(8/28)、
芸術家の陳界仁は個展会場のホールを、国立美術館での違法派遣に抗議して解雇
された職員に提供した。そこでは、政府部門による違法行為の放置に抗議する記
者会見が開かれ、国立美術館は違法派遣をやめて、二名を職場に戻すことを要求
した。

解雇された二人は、当初、美術館の誘導員の仕事の募集に応募した。しかし出勤
の一日目、「維新保全」という名の会社が彼女たちの雇い主であると通告された
。しかしこの雇い主の姿はほとんど見かけず、毎月彼女たちの賃金から8000元を
ピンハネする以外は、直接の管理責任も負っていないかのようだった。この派遣
会社は労基法84条第一項にある「監視」業務が労基法の関連規定を回避すること
ができることを利用して、誘導員を「警備員」として派遣した。そうして派遣さ
れた労働者は、休暇が制限され、国定休暇、特別休暇、慶弔休暇などもなく、夜
間の残業を強制されるが残業代が支払われない。さらにひどいのは、契約更新の
際に、妊娠検査報告の提出を求められ、妊娠していないことが証明されないと契
約を更新されないという。しかし台中市(国立美術館所在地)の性別平等委員会
は性平等に反するとはいえないと認定した。

労働委員会〔労働省〕によると、妊娠報告の件については台中市政府はすでに労
働委員会の決議に基づき、今年三月に再度、性平等委員会の審議で、性差別であ
ることを認定した。労基法違反という指摘については、台中市もすでに派遣会社
に対して労働検査を実施し、法律に従って処分を下しているという。解雇された
蔡善■〔=雨かんむりに文〕によると、国立美術館は業務入札の種類を「警備員
入札」から「労務入札」に変更したので派遣労働者は残業手当を受け取ることが
できるようになったが、休暇の部分については従来のままの違法状態だという。

国立美術館は2004年から、同じ派遣職員らに対して、三ヵ月ごとの雇用契約更新
を6年間も続けてきた。これは「労働基準不」第9条第一項の「継続性のある業務
は期間の定めのない契約としなければならない」という規定に違反している恐れ
がある。



【写真説明】芸術家の陳界仁が抵抗する労働者を応援する。個展を開く予定だっ
た台北市美術館のホールを抗議行動の場所として提供し、去年の抗議行動で使っ
た横断幕を掲示し、政府に対して「派遣を終わらせ、直接雇用へ」を要求した。
公的な芸術空間が社会運動の闘争の現場に変わった瞬間だ。(撮影 王毅豊)

国立美術館の派遣労働者を支援するために、「帝国の境界線上にて」という個展
を開催中の陳界仁が、会場のホールを記者会見の場として提供し、展示期間中も
記者会見の写真や抗議行動の資料を展示し続けるという。蔡善■によると、展示
会場には誘導員はおらず文字の説明だけだが、それは誘導員の「ストライキ」を
象徴的に表現するもので、ストライキは労働者の抵抗の最高形態だ、と語った。

蔡善■は、最初は復職のために国立美術館の外で「派遣を終わらせ、直接雇用へ
」の横断幕を掲げて闘っていたが、美術館の職員から妨害され、もうすこしで横
断幕すら持っていかれそうになった、今日は陳界仁の支援によって、同じ職種の
職場で、国立美術館には持って入ることのできないこの横断幕を、台北市美術館
で掲げることができたと語った。「陳界仁がこのような機会を提供してくれたこ
とにとても感謝しています。度胸のある芸術家はそう多くないですから」。

陳界仁は、芸術誘導員は専門的な業種で、芸術教育に責任を負う仕事でもある。
派遣という〔不安定な〕形態で誘導員を雇用することはこの専門性を否定するこ
とであり、芸術の創作の第一線を崩壊させてしまうことになる、だからこれは労
働問題だけでなく、「芸術教育全体の問題でもあり、人の思考、存在の価値と意
義の問題でもある」と語る。



【写真説明】芸術家・陳界仁と解雇された国立美術館の職員。(撮影 王毅豊)

この展示会の前に、陳界仁は、今後は台北市美術館での個展を開くことはないだ
ろう、と述べていた。彼によると台北市美術館では外国の展示があまりに多く、
現地文化に打撃を与えており、これらの展示が商業ベースで広告化されていると
いう。またこれらの西洋芸術が神秘化されている一方、自分たちの周辺にある現
地文化がほとんど見当たらず、このままでは台湾文化は植民地化されてしまうと
いう。「わたしが展示空間を提供した理由は、美術館は本来は公共空間であるべ
きで、現在のテーマを議論する場でもあるべきだと思ったからだ」。また展示さ
れた横断幕については「これは彼女たちの作品だよ」と強調した。そして他の芸
術家も他の展示会場で、彼女たちを招いて発言の機会を与えあげてほしい、そう
することで一種の集団的行動となり、文化の植民化現象の変革につなげたい、と
語った。

会場では「派遣労働者を国立美術館に直接雇用させよう」の署名行動も同時に行
われた。「創作者職業労働組合」の発起人である湯皇珍、台北現代芸術センター
の崔広宇、芸術家・張美陵、展示プロデューサーの徐文瑞、鄭慧華、鄭美雅など
も会場を訪れて署名をおこなった。



【写真説明】記者会見の会場では、国立美術館は解雇した労働者を職場に戻して
直接雇用することを求めた署名活動も行われた。(撮影 王毅豊)


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