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レイバーネット日本ビデオ&トーク「パレスチナの民衆はいま」報告


 イスラエル・パレスチナから草の根活動家を招いて2002年3月14日におこなわれた、レイバーネット主催のビデオ上映&トーク『パレスチナの民衆はいま』(東京中野)には、約60名が参加した(イベント詳細)。イスラエルのパレスチナ自治区への軍事攻撃がエスカレートし、世界の社会運動が米国とイスラエルの行為を国家テロとして批判し、国連安保理の「パレスチナ国家」にも言及した決議が出される中、この問題への関心の高まりを示した。

 レイバーネット日本の河添事務局長のあいさつにつづいて、パレスチナ・オリーブ代表の皆川万葉さんが、パレスチナに関する概略を説明。皆川さんは、仙台を拠点に「ガリラヤのシンディアナ」の生産したオリーブオイルを日本で販売している。パレスチナ人は、いわゆるパレスチナ自治区に300万人、イスラエル国内に120万人(イスラエル総人口は500万人)いる。

パレスチナからのビデオレポート

 ビデオは、イスラエル内のパレスチナ系コミュニティに対して行われている『土地の没収』、そしてグローバル化の中での『イスラエル内のパレスチナ人の労働状況』を描いたドキュメンタリー(原作「ビデオ48」)。土地の没収制作は自治区への占領政策にも共通する問題で、ニューエコノミー振興と新たな植民政策を追求するイスラエル政府によるパレスチナ系住民の周辺への追い出し、そしてユダヤ系住民との断絶、パレスチナ指導者の指導力のなさ、ゲストのサーミヤさんたちの草の根の活動の様子などが描かれていた。

ガリラヤの女性活動家たち

 ゲストのひとり、サーミヤ・ナーセル・ハティーブさんは、イスラエル内ガリラヤ地方のパレスチナ人労働者階級出身の女性。イスラエル内では、パレスチナ人は建設や繊維などの労働集約部門にしかほとんど仕事がなく、サーミヤさんもユダヤ系新興都市カルミエールで若くして繊維工場の仕事をした。イスラエル建国宣言(1948年)より難民となっていた親族が暮らす地であるレバノンにイスラエルが侵攻した1982年以来、パレスチナ解放に向けた草の根の活動を始めたという。

 もうひとりのゲスト、ハダス・ラハブさんは、左派シオニストの街キブツで育ったユダヤ人女性、1976年の「土地の日」、政府が大規模なパレスチナ・コミュニティからの土地没収を行い、抗議者を射殺した事件で、そして自分の街キブツも1948年にパレスチナ人から奪われた(彼らは難民となった)ことを知ったとき、イスラエル=民主主義の国という観念を捨てたという。その後政治的なジャーナリズム活動をしている中、1988年に弾圧を受け、秘密警察によって2週間尋問されたこともあるという。

コミュニティづくりをする労働組合

 彼女たちの活動は多岐にわたる。パレスチナ系労働者にも門戸を開きパレスチナ労働者固有の困難の解決にとりくむWAC(ワーカーズ・アドバイス・センター=労働組合・1200人組織)、パレスチナ女性の自立をめざすオリーブオイル生産農業グループ「ガリラヤのシンディアナ」、パレスチナの母親たちが教育を担う「母親学校」や(排他的ではない)民族的アイデンティティを育む働く「若者の団結」(いずれも「アル・バカー・センター」の運営)、独自のメディア活動、そして「クラン(氏族)」による投票慣行に挑戦する独自の政党活動などである。彼女たちの活動スタイルには、労働運動だからこれしかやらない、市民運動だから・・、といった概念は全くない。パレスチナ人とユダヤ人の公正な共生関係をめざしている。

イスラエルの中の第三世界

 サーミヤさんによると、イスラエル建国以来、ユダヤ系の新興都市は600できたが、逆にパレスチナの街は400つぶされてきた。そして小さな土地に追い込まれて、中心的な労働市場からも閉め出され(例えば通信・電機などの部門には一人もアラブ系労働者がいない)、「違法住宅」に住まなければ生きていけない状況になり、それが更なる追い出しの口実とされる、といった悪循環の中で希望が失われている。就職案内で兵役経験者が条件とされることが、実質的なパレスチナ人の雇用へのアクセス拒否になっているという。教育分野でもそうした排除が明確で、パレスチナ系の5割の子供が高校を出ない。また近年では、労働集約部門の企業が低賃金の外国人労働者(中国・トルコ・ルーマニア・フィリピンなど)を雇い入れてパレスチナ人労働者の失業率が20%に達しているという。

なぜオスロ合意が破綻したのか

 またハダスさんによると、パレスチナ自治区で今起きている悲劇は、オスロ合意の遺産であるという。オスロ合意でパレスチナ側は十分な独立という要求よりかなり下のレベルで合意をしてしまったが、和平プロセスの中でイスラエル経済は繁栄し(一人あたりGDP17000ドル)、パレスチナはより貧しくなった(同700ドル)。いまやパレスチナ人の46%が貧困線(一日2ドル)以下の生活を強いられている。こうした鬱積した不満が、2000年9月からの第二次インティファーダにつながり、不平等をそのままにしたオスロ合意体制と、その後ろ盾としてのアメリカ中東政策は破綻した、という。

 質疑応答の中で、WACとイスラエル労働総連合(Histadrut)の関係についての質問に対しハダスさんは、ヒスタドラットは設立以来、中心的な労働市場からパレスチナ人労働者を排除してユダヤ人労働者を雇用させるための組織であり、軍事工場や電機などの先端産業の大企業労働者を主として組織している。パレスチナ人労働者は実質的に加入できない。WACはヒスタドラットには加盟しておらず、パレスチナ人にもユダヤ人にも平等に門戸を開いている、と語りました。


司会者の感想

 今回の取り組みはサンフランシスコのレイバーフェスタでの偶然的な出会いから企画されたものでしたが、石油、グローバル化、軍事的抑圧、失業など、私たちと無縁な世界の問題ではないことを感じ、私たちにとっては有意義なものになったと思います。参加した市民に労働運動のことを知ってもらう機会にもできたら、もっと良かったと思います。


文責:JNK(国際部)


Created byStaff. Created on 2002-03-17 20:12:23 / Last modified on 2005-09-05 02:58:47 Copyright: Default

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