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ソルリを「誹謗中傷禁止法」に入れるな

[ワーカーズ メディアタック]全て本人の姿で住もうと闘争したひとり

クォン・スンテク(言論改革市民連帯) 2019.10.31 09:04

アイドルグループf(x)出身の俳優ソルリ(実名、チェ・ジルリ)が死亡した。 「女性」だという理由で苛酷な有名税を払わなければならなかったソルリ。 彼女にひどい誹謗中傷が始まった時は、 本人が望まない方法で熱愛の事実が公開されたときからだった。 それはグループから出る決定的な原因にもなった。 その後、ソルリは個人のSNSでファンと対話した。 「自由奔放」な20代の平凡な日常だった。 しかし、彼女の動きは「奇行」として消費された。 ボーイフレンドとデートする写真を書き込むと 「純潔」という定規であらゆる性関連の誹謗中傷に苦しまなければならなかった。 ここに「ノーブラ」、「関種(かまってちゃん)」、「麻薬」は 絶えず彼女に付いて回るレッテルになった。

ソルリという人が、自分に使われた「女子アイドル」の枠組みから抜け出し始めたのもその時からだった。 グループ活動をする時はどうしても自分の行動が他のメンバーにも被害を与えかねないので 注意していた側面が大きかっただろう。 結局、ソルリは一人になった後、「自分」を見つけたという話だ。

そのようにして少しずつ成長したソルリは、社会的偏見と戦っていた。 ノーブラの議論に対してソルリは 「下着の着用は個人の自由」とし 「ブラジャーワイヤーは消化器官など健康に良くない。 着用しないほうが自然で可愛いとよく思う」という所信を明らかにした。 彼女は「(ノーブラ問題になった時)恐れて隠れることもできた」とし 「だがそうしなかった理由は、多くの人が(ノーブラに対する)偏見がなくなれば良いと思ったからだった。 『これは思ったよりたいしたことではない』と言いたかった」と答えた。 その日、「麻薬」ついて釈明をしたりもしたが、 ソルリは「私は法律違反行為はしない」と話した。 素晴らしい回答ではないか。 個人の自由と法律違反行為をはっきり区別して行動しているという話だった。 それでもソルリは法律違反行為をした他の芸能人よりも、 大衆の冷たい視線と誹謗中傷に苦しんだ。

ソルリは偏見と戦うことを越えて、いつのまにか「連帯」を語る程成長していた。 彼女は慰安婦被害者を賛える日と3・8世界女性の日を記念する文などをSNSに掲載して、 ファンと対話を続けていった。 「Girls Supporting Girls」の文句が書かれたTシャツを着た写真を書き込んだりもした。 彼女の戦いは、そうして少しずつ拡張されていった。 ソルリのサイン会に来たあるファンが 「オンニ、私はノーブラです。ノーブラ」と言った理由は、 おぞましい誹謗中傷に苦しんだソルリの善良な影響力のためだった。

そんなソルリが死亡した。 韓国社会は彼女の死の原因を「誹謗中傷」に求めている。 国会は誹謗中傷を禁じる「ソルリ法」を発議すると騒々しい。 だが、その方向が悪い。 インターネット実名制とは… 憲法裁判所は2012年8月、すでに情報通信網法インターネット実名制(制約的本人確認制)が国民の基本権を過度に制限するとし、 全員一致で違憲とした。 インターネット実名制が誹謗中傷に対する解決策になるだろうか。 冷静に確かめてみなければならない。 誹謗中傷などの名誉毀損性コメントを書く者を罰することは現行法でも可能だ。 ポータルは利用者の個人情報をすべて持っているだけでなく、 捜査機関が要求すれば提供しているためだ。 悪性コメントを書いたネチズンに対する法的対応が実際に行われているではないか。

ソルリの死亡原因を「誹謗中傷」だけに限定することにも疑問を提起する必要がある。 ソルリのファンは、一般のネチズンの誹謗中傷よりも「マスゴミ」のほうに大きな怒りを表出している。 ソルリがファンと対話するために書き込んだSNSの写真を転載し 「またノーブラ」、「関種(かまってちゃん)」という題名で記事化して議論に油を注いだのがメディアだからだ。 そんなメディアがソルリの死亡後に「誹謗中傷が問題」と書いた記事を読むと 反吐が出そうだ。

どうだろう。 マスコミ、彼らは反省せず、変わりもしない。 ソルリの遺体が移送される場面を撮って、写真記事にしたのは報道機関であった。 遺族の要請によって非公開にされた遺体安置所を公開したのも記者であった。 韓国記者協会の自殺報道勧告基準に従わず、 記事の題名に「自殺」という用語をそのまま書いた。 ソルリの死亡の方法さえ、題名と記事にそのままのせられることも起きた。 ソルリの死亡さえ照会数商売に利用しているのは果たして誰なのか。

[出処:JTBC2 〈誹謗中傷の夜〉画面キャプチャー]

これだけだろうか。 ソルリの死亡に対して具体的な内容が公開されたのは、 消防当局の責任も大きかった。 119救急隊の活動動向報告書が職員によって外部に流出したという。 死亡したソルリの現場の状況が詳しく記録された文書であった。 唯一、ソルリの死亡の過程がわかったのはこのためだった。 ソルリは生前「人から最大の傷を受けた時」に言及したことがあった。 体調が悪く、病院を訪ねたソルリ。 さまざまな検査をしたが痛みの原因を見つけられなかったという。 そんなソルリに対して医師は「産婦人科疾患かもしれない」と診療を勧誘し、 これを受け入れると「妊娠」デマに苦しまなければならなかった。 病院の職員がソルリのカルテチャートを撮影して流出させ、 デマが手のほどこしようもなく広まったのだ。 人間として当然享受すべき基本的な権利さえも保護されなかったソルリだ。 それも当然保護すべき誰かからである。

ファンはネイバーなどのポータルに書き込まれた多くのソルリ関連の検索語に疑問を提起した。 「ソルリ」という検索語を入れると2次加害に該当する単語が出てきたのは事実だ。 それをファンが「関連検索語変える」運動として 「ソルリ愛している」など現在の内容に変えたのだ。 ポータルの「リアルタイム検索」に続いて「関連検索語」について社会的に再考される必要がある部分だ。 この他にもソルリの所属会社SMエンターテイメントに対する批判もある。 SMはシャイニーのメンバー、ジョンヒョンを失ったのと同じ所属会社だ。

第1世代アイドル、神話のメンバー、キム・ドンワンの一針は、 だから私たちすべてに突き刺さる。 「若い友だちがきちんと食べることができず、 ゆっくり眠ることもできない状況でも、 健康で明るい微笑を見せるようにに願う大人たちがあふれています。 セクシーでもセックスしてはならず、 タフでも誰とも戦ってはいけない存在になることを願っています。 多くの後輩が金と名前の甘さのために、 どれほど心の病気を抱えて働くべきか悩んでいます。(…) 大型プロダクションの安易な対処は、接触せずに広がる伝染病の宿主になることを見過ごしてはいけません。」

いつかソルリがこんな話をしたことがある。 自分に対して「こんな人もいる」と考えてほしいということだ。 彼女の死が相変らず信じられない。 どこかにインスタグラムに写真を書き込んで愛する人々と対話していそうなソルリ。 自由奔放だった彼女を、誹謗中傷防止のための「ソルリ法」など何か一つで定義したくない。 ただ「全て本人の姿で生きようと激しく闘争したひとりがいた」と記憶したい。 それこそ、あるいは彼女をひっそりと記録する方法ではないだろうか。

「故チェ・ジルリさんの冥福を祈ります」

[ワーカーズ60号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-11-03 03:53:36 / Last modified on 2019-11-10 13:23:06 Copyright: Default

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