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トランプの弾劾、金正恩の白馬、文在寅の無能

[ワーカーズ]朝鮮半島

ペ・ソンイン(聖公会大) 2019.10.28 11:51

トランプ米国大統領がボルトン安保補佐官を電撃更迭したが、 これに期待する人はあまりない。 本人が自ら決めるトランプの政治スタイルにもう慣れたためだ。 後任の国家安保補佐官について聞く取材陣の質問に彼が答えた言葉もこれを確認させる。 彼は「私と一緒に働くのは非常にやさしい。 なぜやさしいのか分かるか? 私がすべての決定をするからだ。 彼らは仕事をする必要がない」と話した。[1]

ただ彼がリビア方式を批判して「新しい方式」に言及したので期待と憂慮が交差した。 「リビア方式」は、北朝鮮が先に非核化をすれば 米国が制裁緩和・安全保障など相応措置をする方式だ。 ボルトンが主張し続けてきた。 しかしトランプがリビア方式を放棄して、 新しい協議案を持って行く用意を明らかにしたため、 当然関心と期待感は高まるしかない。 スティーブ・ビーガン国務省対北朝鮮政策特別代表も、 柔軟で創意的な接近を主張してこれを裏付けた。 だが新しい方式については具体的な兆候どころか、ニュアンスもなく、 北米実務交渉が順調かどうかは大言壮語できない。

そうした憂慮のために北朝鮮は10月2日、 潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射して実務交渉での円満な合意のために、 新しい方案を持って出て来いという強力なメッセージを送った。 SLBMは北朝鮮が今年発射した10回の短距離ミサイル・新型放射砲などとは次元が異なる戦略兵器だ。 これは米国の態度の変化が確認されなければ、対決的な局面に行くかもしれないという信号だ。

米国の既存の方式に対する反発

結局、10月5日のストックホルムでの米朝実務交渉は決裂してしまった。 2月のハノイ2次首脳会談決裂から8か月目に再開された実務交渉が、 次の交渉日も決められないまま終わった。 米朝実務交渉の決裂後、双方から全く反対の評価が出てきた。 北朝鮮外務省のキム・ミョンギル巡回大使が朗読した声明と 取材陣との質疑応答を読むと、いくつかの特徴を確認できる。

まず北朝鮮は「安全保障」が大変重要で優先的な事案だということを強く主張している。 北朝鮮は声明で「朝鮮半島の完全な非核化は、われわれの安全を威嚇し発展を阻害する すべての障害が、さっぱりと疑う余地なく除去された時」といった。 取材陣の質問への回答でも 「われわれが要求する計算法は、米国がわれわれの安全を威嚇して われわれの発展を威嚇するすべての制度的装置を完全無欠に除去する措置を取った時」 と強調している。 北朝鮮の要求は非核化対安全保障であり、 米国の新しい方式は何よりも安全保障が優先されるべきだという点を明確にした。 安全保障は北朝鮮が以前から要求し続けてきた一貫した主張で、 新しくない核心的な事案だ。

二番目に、実務交渉で米国は既存の立場である先非核化措置を議題に提案した。 北朝鮮はこれに対し 「米国の威嚇をそのままにして、われわれが先に核抑制力を放棄すれば 生存権と発展権が保障されるという主張は、 馬の前に車を置けという話と同じ」と明らかにした。 取材陣の質問にも 「米国が独善的、一方的、かつ枯淡に旧態依然な立場にしがみつくのなら、 百回、千回向かい合って座っても対話に意味がない」と答えた。

北朝鮮が交渉で提示した先決条件は、 韓米軍事演習中断、最新鋭武器および核兵器の搭載が可能な戦略爆撃機など、 米国の戦略資産の朝鮮半島での展開禁止、 そして制裁緩和の約束だ。 したがって、米国の新しい方式や創意的な提案は、 北朝鮮の先決条件に対して応えるものでなければならなかった。

後で明らかになった内容を見れば、 米国の創意的な提案は、 北朝鮮に対する石炭、繊維輸出禁止の一部保留であった。 それも2種類の条件付き保留であった。 まず、北朝鮮が保有するすべての核兵器と核物質を米国に引き渡し、 北朝鮮の核施設と生化学兵器、弾道ミサイルなどの関連施設を完全に解体することを 約束しろと要求した。 その上に寧辺核施設を完全に廃棄し、 ウラン濃縮活動を中断する実質的な措置、 いわゆる「寧辺+α」の実施を要求した。[2]

米国は北朝鮮がこうした条件を履行すれば、 制裁の一部緩和、人道的支援、そして終戦宣言まで考慮するといった。 既存の北朝鮮の典型的な段階的接近法対米国の包括的合意の構図から 絶対に抜け出すものではなかった。 しかし米国の立場はハノイ決裂以後、大きく変わらなかった。 相変らず非核化の最終状態に対する明確な規定と非核化ロードマップ、 そして対話が進められる間、すべての核活動の凍結が必要だという立場を固守している。 結局、こうした要求条件は北朝鮮の気持ちを逆なでして激しい反発を呼び起こした。

三つ目に、北朝鮮は今回の実務交渉の決裂を念頭に置いていたと見られる。 米国が新しい方式と創意的な提案を具体的に出さなかったので、 既存の方式で接近することを予想していたようだ。 キム・ミョンギル大使が午後の交渉が終わった後、 北朝鮮大使館に戻って15分で会談決裂声明を発表したということは、 少なくとも午前の交渉が終わって準備するか、あるいはそれ以前から備えていたものと判断される。 そうであれば、北側は決裂声明をあらかじめ準備するほどに、 当初から大きな期待をしていなかったのだろう。

同じパターンの反復

ところで今回の米国の交渉の態度も、 ハノイ2次北米首脳会談でのパターンと同じだ。 当時、首脳会談が合意に至らなかった原因の一つが、米国内政治のためだった。 会談当日にトランプの元個人弁護士だったマイケル・コーエンが議会の聴聞会に出席してトランプの疑惑を暴露し、 意図的に会談を決裂させたということだ。 1994年のジュネーブ合意、2000年10月の米朝共同コミュニケも、 米国内政治の影響でその動力を失ったり破棄された経験がある。

[出処:By Dan Scavino - https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=69881634]

今回もトランプは来年大統領選挙だけに集中している。 トランプには大統領選挙が弾劾政局とからんで展開するので負担にならざるをえない。 北朝鮮問題が米国政治に大きな影響を与える事案ではないが、慎重にならざるをえない。 交渉決裂後、北朝鮮の声明発表と米国の反論もハノイ首脳会談当時の状況と似ている。

北朝鮮の外務省が10月6日に発表した談話でも 「米国は今回の交渉のために何の準備もせず、 彼らの国内の政治日程に米朝対話を使って政治的な目的を追求しようとした」とし、 決裂の原因を米国内政治に求めた。 その原因を米大統領選挙と認識しているのだ。

北朝鮮が米国内の政治問題を交渉決裂の原因と指摘したのは異例だ。 それも、公式的・公開的に。 それだけ米国の態度を意図的・目的意識的だと非難して不信を抱いている。 北朝鮮としては、トランプが言及した新しい方式は政治的レトリックに過ぎず、 むしろ再選のための政治的な動機で北朝鮮を管理し、交渉を活用していると考えているのだ。

金正恩の重大決心と不確かな展望

米朝非核化交渉に対する展望は交錯する。 トランプが弾劾政局をチャンスにして積極的に米朝交渉を推進し、 大きな成果を作るという分析もある。 しかしやはり弾劾防御に力を入れると米朝交渉が速度をつけられないという憂慮もある。 確実なことは、米国の対外関係の不確実性が以前より大きくなったという点だ。 ただし、弾劾政局が来年の大統領選挙まで続けば、 トランプの政策遂行にブレーキがかかる可能性は非常に高い。

今回の実務交渉後、北朝鮮が繰り返し交渉期間を「年末」にしたのも 米国の政治日程と意図を看破したためだ。 これ以上、同じ試行錯誤は繰り返さないという意志の表現だ。 したがって、追加の実務交渉を念頭に置けば、 米国を圧迫する強硬な対応は必須だ。 これは表情管理ができないほど、焦り、いらだっているという意味だ。

ただし北朝鮮が自分の意図のとおりに立場を貫徹するかどうかは未知数だ。 非核化の解決法に対する米朝間の間隙が大きいうえ、 弾劾調査に直面したトランプが北朝鮮の要求のとおりに譲歩するのは容易ではないためだ。

こうした中で、金正恩(キム・ジョンウン)委員長の最近の動きが多くのことを示唆する。 白馬に乗って党指導部とともに白頭山にのぼった金正恩の 「重大決心」とは果たして何だろうか? 年末まで武力デモの強度を高めるかもしれない。 労働新聞は10月23日、南北関係に対する決断に対して報道した。 金正恩委員長は、 南北協力の象徴である金剛山の南側施設に対する撤去を注文するなど、 金剛山観光を強く批判した。 また、現代的な施設を新しく北朝鮮式で建設すべきだと明らかにした。 これと共に 「先任者たちの依存政策は非常に誤っていた」とし、 金正日国防委員長を批判する珍しい光景も演出した。 それだけ韓国政府に対する不満と激烈な怒りを表出したのだ。

この渦中で北朝鮮は伝統友好国である中国とロシアとの軍事協力を強化する姿だ。 10月14日、北朝鮮の軍部序列1位の人民軍総政治キム・スギル局長が 中国共産党中央軍事委員会の苗華(ミャオファ)政治工作部主任と会って 中朝間の「血盟」関係を強調した。 キム・スギル局長とミャオファ主任はどちらも中朝軍部の中心人物だ。

先日は北朝鮮が中国とロシアなど7か国が参加する 「チェントゥル(中部)-2019」大規模合同訓練に軍事参加団を送った。 この訓練はロシア軍の歴代最大の軍事演習で、 兵力12万8000人、戦闘機とヘリコプターなど航空機600機、 軍艦15隻、タンク250台、イスカンデルミサイルなど各種の武器と装備 およそ2万台が動員されたという。 訓練の目的は米軍とNATO軍を牽制するためだ。 北朝鮮が軍事参加団を送ったのは今回が初めてだ。 非核化の相応措置として米国に安全保障を要求する状況で、 交渉のテコを強化し、妥結に失敗した場合の安全弁まで確保しようとする意図と見える。

それでも文在寅政府は のんびりと原則的な立場を繰り返すだけだ。 政府の関係者は「今は対話のモメンタムを維持することが急務」だという。 北朝鮮が没収・凍結した金剛山施設は認めないという。 しかし法的に取れる方法はないという。 先日は11月に釜山の韓アセアン特別首脳会議に 金正恩の出席の可能性も提起した。 これが文在寅政府の現実認識の水準だ。

朝鮮半島平和は、そのままで与えられるものではない。 1回、2回の交渉では終わらない。 それでも交渉以外の選択肢を想像するのは難しい。 では交渉にどう臨み、交渉で何を引き出すべきかを考えなければならない。 互いの目標が違えば、その間に精密な戦略と激しい調整が必要だ。 その過程が省略されたまま、平和メッセージを発信するだけだとすれば、 それは政策ではない。[ワーカーズ60号]

〈脚注〉

[1] キム・ジェジュン、「[特派員コラム]『100%』トランプ印の外交時代」、京郷新聞、2019.9.25.

[2] キム・ジヌ、「米国が北朝鮮に提案した『創意的アイデア』は石炭・繊維輸出禁止留保」、京郷新聞、2019.10.15.

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-11-03 03:53:36 / Last modified on 2019-11-03 03:55:43 Copyright: Default

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