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韓国政府とサムスン、フィンランドの法案で苦境に陥るか

[ワーカーズ インター]フィンランド、企業に対する人権侵害予防義務化の試み

ナ・ヒョンピル(国際民主連帯) 2019.07.09 09:56

最近の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の訪問と釜山-ヘルシンキ直航路線発表で話題になったフィンランドは、 韓国には見知らぬ国家だ。 サウナと歯に良いガム、あるいはテレビ番組に登場したフィンランドの青年たち程度が、 普通の韓国人が覚えているフィンランドの全てだと言っても過言ではない。 もちろんある人は(今はその地位を失ったが)一時、 世界携帯電話市場の強者として君臨したフィンランド企業 ノキアを思い出すかもしれない。

企業供給網まで人権侵害の確認を義務化

文在寅大統領の訪問前の6月初め、 フィンランド政府は自国企業に供給網にまで人権侵害の有無を確認(Check)することを義務化する法案の導入を発表した。 法案の導入のために関連の利害当事者を対象として意見を聞く作業を始め、 関連の研究が終わり次第、議会は法案を議論するものと見られる。 もしフィンランドでこの法案が通過すれば、 フランスに続いて「人権実践点検義務(Human Rights Due Diligence)」を自国の企業に義務化する二番目の国家になる。 特に、フィンランドが今年の7月からEU議長国になるという点で、 EU次元で議論が広がる可能性も大きい。 [1]

[出処:青瓦台]

ヨーロッパの各国が企業に対して供給網にも人権侵害確認義務を付与する試みは、 2011年に制定された「国連ビジネスと人権に関する指導原則」のためだ。 この履行原則により「人権実践点検義務」という概念が導入された。 これは、各企業が人権侵害を起こす余地をあらかじめ確認し、 確認された問題を是正措置して、 履行の有無を監視して、 報告することを包括する概念だ。 韓国では「人権実態調査」とも翻訳されるが、 単に企業に予防次元の確認を要求するだけではなく、 人権侵害の危険に対する是正措置義務を要求するという点で、 国家人権委員会は「人権実践点検義務」と翻訳している。 まだ韓国では公式の翻訳用語が確立されていない不慣れな概念だが、 こうした企業の義務が供給網にまで適用されるという原則を確立したという点で、 ぜひ注目すべき用語だ。

人権実践点検義務が国連とOECDで採択された2011年以後、 EU国家を中心としてこれを法律に具体化する試みが続いている。 代表的には以前の「ワーカーズ」で紹介したフランスの法案だ。 [2] これ以外にも英国に進出した企業が、供給網でも人身売買などの行為をしないことを報告するように義務化した 英国の現代版奴隷防止法(Modern Slavery Act)も、 人権実践点検義務を導入した事例だ。 この法により、サムスン電子も報告書を提出した。 [3]

これだけでなく、オランダでは企業の供給網まで児童労働禁止に関する人権実践点検の義務を導入する法案が議論されている。 ドイツ政府とデンマーク議会もフランスと似た法案を導入する議論を進めている。 すぐEU次元で韓国企業を含み、EUに進出した企業に対して 人権実践点検義務を義務化することはないが、 大企業と関係を結ぶすべての供給網に 少なくとも児童労働、人身売買、強制労働などの問題について点検し、 措置履行義務を付与することは逆らえない流れになったのは確実だ。

韓国政府と企業はどうするべきか

フィンランドで法が導入されれば、 ノキアは自社の携帯電話部品の原料から部品を供給する全世界の協力業者から 自社の海外生産工場に至るまで、 携帯電話の製造過程で労働権を侵害していないか、 部品の調達過程で武力紛争と児童労働にかかわっていないか、 生産過程で住民の環境権を侵害していないかを確認する義務を課せられる。 これは、携帯電話メーカーであるサムスンやLGも結局、 該当の基準による報告書を必ず作成しなければならないという 国際的な圧力と向き合うということを意味するは。 サムスンの場合、サムスンの下請企業まで行かずとも、 サムスンが直接運営する海外工場で 「労働権を含む人権侵害がない」という言葉を信じる人は誰もいないだろう。

サムスンだけの問題ではない。 国内の大企業の国内外の協力業者と部品供給業者まで人権実践点検義務を実施すると、 まさに労働権の問題だけでも自信を持って報告書を公開できるのか疑問だ。 そして報告書を公開した時、 ヨーロッパの企業が自分たちより低い基準を適用する韓国企業に対して 問題を提起するだろうということは簡単に予想される。

そうした側面で、なぜEUが韓EU FTAを根拠として韓国政府に対し、 国際労働機構の中核的協約の批准を要求するのかが理解できる。 韓国政府のILO中核的協約批准がきちんと行われなければ、 韓国企業は義務は果たさずに金を儲けるだけの企業だというと烙印を押されることになる。 本国の韓国で国際基準を守れない企業が、 海外事業場と供給業者や協力企業にきちんと労働権侵害予防措置をすることはできないだろう。 したがって、韓国政府はILO中核的協約批准はもちろん、 少なくとも児童労働および人身売買、強制労働に韓国企業とその供給網がかかわらないように、 人権実践点検義務を義務化する法案を準備しなければならない。 大したことはなかったが、文在寅大統領の北欧訪問が こうした時代の変化を認識する契機になったことを期待するのもこうした理由だ。[ワーカーズ56号]

〈脚注〉

[1] この文は企業人権利ソースセンターの事務局長のフィル・ブルーマー文(Europe takes a big step towards companies having "duty of care" on #HumanRights)を引用および参考にして作成された。原文は https://www.eureporter.co/ economy/2019/06/12/europe-takes-a-big-steptowards-companies-having-duty-of-care-onhumanrights/

[2] http://www.newscham.net/news/ view.php?board=news&nid=102134

[3] https://www.modernslaveryregistry.org/companies/9094-samsung-electronics-uk-limited/ statements/30205

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-07-20 22:41:21 / Last modified on 2019-07-20 22:43:33 Copyright: Default

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