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LG、下請甘い汁だけ吸ってベトナムに行った

[ワーカーズ・イシュー(1)シニョン、労組しよう]下請企業の雇用惨事責任をLGに問う理由

パク・タソル、ユン・ジヨン記者 2019.06.27 14:20

[イシュー(1)シニョン、労組しよう]順序

  1. シニョンプレシジョンの労働者はLGの携帯電話を作ります
  2. 25年前、22歳でシニョンに入社しました
  3. 「男女平等賞」を受けた会社から追い出された女性労働者たち
  4. LG、下請から甘い汁だけ吸ってベトナムに行った
  5. 雇用政府の意志、女性の解雇だけは避ける?

[出処:パク・タソル記者]

ソウル市永登浦区LG電子本社前。 昼休みをむかえて外に出てきた会社員に宣伝ビラを配る組合員たちの手が忙しい。 A4 1枚の宣伝ビラは、シニョンプレシジョン分会のニュースレター 「シニョン、労組しよう」の特別号だ。 元請のLGがシニョンプレシジョンの雇用惨事問題とどうからんでいるのかを説明する文が載っている。 一日中、太陽が一番高い時間。 まだ初夏だが、組合員たちの額に汗がにじむ。 同じ労働者として、解雇問題を扱う女性労働者の話を読んでみてもいいのに、 投げ出す手が多い。 LG電子で働く人たちは、皆そう反駁したのか、 もしかして会社に嫌われないかと思って怖がっているのかわからず、 薄情な気がする。 先に宣伝ビラをくれと言って「ご苦労さま」と話す人々は、うれしい恵みの雨のようだ。

シニョンプレシジョンで13年間働いたある組合員は、 「LGがこの高いビルを建てられたのは、 LGの職員だけでなく、下請企業、その下請の下請企業が一緒にしたためだ。 共生企業と言うが、堪忍袋が切れる。 甘い汁だけ吸って海外に行き、 下請企業と共存の道を模索したことがあるのか訊ねたい」と話した。 下請企業の労働者たちは同伴成長委員会と 公正取引委員会が主管する同伴成長指数評価で 2015年から3年間、最優秀等級を獲得したLG電子の素顔を一番よく知っていた。

ワインフォン、アイスクリムフォン、チョコレートフォンといったフィーチャーフォンから V20、Googleピクセルフォン2、Q6、G5、Googleネクサス5X、V10、G4、G3等のスマートフォンまで、 LGの携帯電話はシニョンプレシジョン労働者の指先を経た。 LGはシニョンプレシジョンを「優秀協力社」と言ってその労苦を何度も祝賀した。 シニョンプレシジョン代表理事室には 「LG電子協力会最優秀会員社賞」、 「自主改善BEST PRACTICE優秀賞」、 「優秀協力社賞」、 「品質革新賞」など、多くの賞が陳列されている。 「革新的品質改善およびオンタイム調達、費用競争力部門の卓越した実績をあげた」 ために受賞したというこれらの賞は、 事実、シニョンプレシジョンの労働者一人一人が受けるべき賞だった。

シニョンプレシジョンの組合員たちは 「優秀協力社」に選ばれるために忙しかった何か月かの時間を覚えている。 きつい溶液をまいて機械の汚れを取り、 真っ赤になった目をこすりながら「不良率ゼロ」に挑戦した。 LGの偉い人たちの動線の邪魔になるかと思って 食事時間、休み時間も変えて働いた日々だった。 物量の「オンタイム調達」のために捧げた時間は数え切れない。 緊急の注文だといえば、退勤してもまた戻って徹夜で働き、 不良が出たといえば仁川工場でも平沢工場でも駆けつけて何日か留まった。 夏休みもLGの日程が決まらなければ行けなかった。 名節には新製品が市場に発表されるので、 名節の時も出てきて働かなければならなかった。

シニョンプレシジョンのように射出から研磨、コーティング、組み立てなど 携帯電話のケース部品工程全体を運営する所を EMS(Electronic Manufacturing Services)社と呼ぶ。 新しいスマートフォンのモデルは一年も経たずに出てきてサイクルが短いので、 LGはこれを弾力的に維持するためにEMS社を活用した。 工程が外注化されるほど、危険負担は下がった。

LG電子のカプチルと横暴

LG電子の物量により収益が決まる構造で、 LG電子はあらゆる要求ができる地位にあった。 青かったシニョンプレシジョンのロゴがライバル社を想起させるという指摘で赤に変わったのは、 多くのエピソードのうちの一つに過ぎない。

[出処:パク・タソル記者]

LGは好きな時間に、好きなだけ確保するために、 1次下請企業が他の業者と取り引きすることを妨害した。 1次のシニョンプレシジョンから他の2次下請企業の事情を聞くとそうだ。 生産能力(CAPA、キャパ)を100%に満たすのが代表の欲だったが、 50%を越えられなかった。 仕事が多い時はあふれるように多く、ない時は限りなくなかった。 シニョンプレシジョン分会によれば、 2012年末にLGはシニョンプレシジョンが事業多角化のために他社と取り引きすることを妨害した。 事業の多角化はLGへの依存度による深刻な経営リスクを減らすために必須だったが、 LGは技術流出を理由としてこれを認めなかった。 この事件は、シニョンプレシジョンで事業多角化を推進した経営陣が総入れ替えされて終結した。

シニョンプレシジョンのイ・ヒテ分会長は 「営業の多角化が妨害されなければ、危機は遅れるか来なかっただろう」とし 「LGは絶えず自分たちの注文だけ受けるように強制し圧迫し摘発した。 いつでも注文を抜くという脅迫もあった」と話した。

シニョンプレシジョンがLGに合わせて運営されたため、 シニョンプレシジョンの技術もLGに合わせるようにするほかはなかった。 LGは数年間、EMSサドルの金型設計と加工の割合を大幅に下げた。 その代わりにLG電子が指定する業者が製作した金型を使うように強制した。 シニョンプレシジョンが持つ技術力のうち大きな比重を占めているのが金型技術だったことを考慮すれば、 LGのこうした政策によってシニョンプレシジョンの技術力は死蔵されざるをえなかったと労組は主張する。

設備の購買を強制して被害を受けた情況もある。 LGのフラッグシップ・スマートフォンであるG3は、 下段のスピーカー部にこまかく小さな穴が空いているが、 これを加工するレーザー設備をシニョンプレシジョンをはじめとする下請業者に対し、 購入を強制したという。 イ・ヒテ分会長は 「当時、LGはこのレーザー工程がその後のモデルにずっと適用されるといったが、 実際にはほとんど適用されず、 結局シニョンプレシジョンはこの装備を安値で売らなければならなかった」と伝えた。

下請の危機を火事見物するように見ていたLG

LGの元請のリスクを最小化するシステムは、 2、3次下請企業等のさらに大きな被害につながった。 2016年、カブル・プラスチックの不渡りはさまざまなことを示唆する。 カブル・プラスチックは シニョンプレシジョン、チノン電子、イルヤ、ウソンM&Pなどと共に LG携帯電話ケースを作る1次下請企業であった。 中国に2つの大工場を稼動させ、 売り上げも1000億ウォン台を記録する中堅企業だった。 しかし代表理事がベトナムの不動産に投資した350億ウォンが吹き飛び、問題が起きた。 カブル・プラスチックは2016年6月30日、 55億ウォンほどの手形を決済できず、不渡りに至った。 ファン・ジョンガプ代表理事は、 特定経済犯罪加重処罰などに関する法律違反(業務上の横領と背任)で 6年の刑を宣告された。

問題は2、3次LGの下請企業だった。 カブル・プラスチックと取り引きしていた280社ほどの会社が 260億ウォンの外注加工費を受け取れなかった。 携帯電話の部品メーカーからバイク便の企業まで、 被害業者の種類も多様だった。 部品メーカー約180社が富川市に集中しており、 地域内の金型産業が大幅に萎縮するだろうという憂慮が出てきた。

A組み立て業者の代表B氏も当時、大きな被害をこうむって事業をたたんだ。 B氏がカブル・プラスチックから受けるはずの金額は10億ウォン程度だったが、 銀行はこの金を売掛債権に取ったため、 むしろB氏が銀行に10億ウォンを返さなければならなかった。 B氏は「財産が押収されて家庭まで破綻した」とし 「その時に信用不良になって、まだ暮らしが厳しい」と話した。

[出処:パク・タソル記者]

B氏によれば、カブル・プラスチックの不渡り過程でLGの被害は最小化された。 1次不渡りが確実視された2016年6月30日。 カブル・プラスチックから金を受け取れない状況でも、 B氏の工場はその日までに約束した注文をこなした。 工場を稼動させ続けたのは、 LG関係者から費用についての確答を受けたためだった。 しかし結局その約束は守られなかった。 彼が不渡りの前兆を知っていれば事業規模を縮小して、被害はがはるかに小さかっただろうと吐露した。

「G5を生産していたが注文が多く、督促されるので職員100人ほどが3交代で24時間工場を運営した。 各種の手当てがついたし、人手が足りない時は用役を呼んで徹夜作業をしたので人件費が倍になった。 LGで午前3時と、4時と人を送ってくるので社長の私も眠れず、全く戦争のように働いた。 もし不渡りの事実をあらかじめ知っていれば、 最小人員だけで準備しただろうに、 不意打ちを食ってしまった。 LGの携帯電話を責任持ってやらせた代価は、すべての被害を単独で負うことだった。」

B氏はLGがカブル・プラスチックの不渡りを あらかじめ知っていたと推測した。

「LGは1次下請企業の資金移動をモニターしている。 それもリスクを減らすための一環だ。 LGはカブルに入った金が何か月も外に出てこないことを知っていたし、 ファン・ジョンガプ代表理事が何度も借用を要請したので知らないはずはない。 LGでは受け取るものをすべて受け取って終わったが、 その下の下請企業の職員2〜3000人が一日で職場を失った。 良心があれば道義的にそんなことはできない。 結局、損失と被害はすべて弱い人々にいった。 LGに費用を要求しても答は同じだ。 私たちと直接契約していないといいわけをする。 その前で割腹自殺しない以上、金を受け取る方法はないと思う。」

B氏もシニョンプレシジョンのように、LGが事業の多角化を妨害したと主張した。 B氏は一つの工場が一つの業者としか取り引きできず、2つの工場を別に運営した。 B氏は「LGが重複取り引きが出来ないようにした。 私がウソンと取り引きする工場、 カブルと取り引きする工場を別に運営したのはそれが理由だ。 LGは『管理できない』、 『製品が混じる』として認めなかった。 われわれは下請の下請なので、言われる通りにするしかなかった」と話した。

富川地域ではカブルの不渡りの1か月後、 「カブル・プラスチックの不渡りに関連する協力業者などの支援方案会議」を開き、 状況を共有する一方で支援策を用意したが、 企業の被害は減らせなかった。 核心の対策は低金利で融資を受けることだったが、 事業をたたまなければならない立場でまた金を借りても借金が増えるだけなので、 申請した人はほとんどいなかった。

被害企業のうち40社ほどは「カブル・プラスチック債権団対策委員会」を作って解決策を模索したが、 意味ある成果は得られなかった。 B氏は「LGとよく取り引きをする企業はほとんどが債権団から抜けた。 2〜30億の被害を受けても問題提起をしなかった。 単価を上げてやるから債権団から抜けろというLGの推奨があったのだろう。 債権団に入ってきた企業は主にカブルとしか取り引きせず、 何の出口もなかった企業だ」と主張した。

2017年にLG電子の2次下請企業10数社が 「LG電子カプチル被害対策委員会(対策委)」を設けたのも同じ文脈から出た問題だ。 対策委はLG電子の製品の設計ミスで大規模な不良が発生し、 金属ケースを供給していた部品企業が深刻な資金難を味わったとし、 LG電子に解決を要求した。

彼らは「世界初の分離型金属ケース・スマートフォンのG5は、 LG電子の設計ミスなどで初期収率(不良のない量産割合)が20〜25%に終わった」とし 「LG電子は不良による損害を1次下請企業の漢拏キャストと2次下請企業に転嫁した」と主張した。

こわれた運命共同体、ほろびるのは下請の役割

一方、LG電子は去る4月、スマートフォンの国内生産中断を電撃発表し、 モバイル・コミュニケーション(MC)部門の生産拠点をベトナムに移転すると発表した。 中国、ベトナムへの移転はずっと進められていたが、 国内生産の中断は大きな影響が予想されることだった。 先立ってウソンM&Pはベトナムに工場を作って仁川工場を閉鎖、 大量失業が発生した。 そこで働いていたある労働者は 「昨年の初めに工場が廃業した。 正規職は退職金でももらえたが、 非正規職労働者たちは退職金ももらえないまま出てこなければならなかった」と話した。 この労働者も「LGの注文に合わせるために、残業と夜勤を繰り返した」と明らかにした。

直ちにシニョンプレシジョンの下請企業も危機に処している。 現在まで2つの会社が廃業したことが確認された。 シニョンプレシジョンの下請企業のS社の関係者は 「2〜300人の職員が夜昼二交代で働いていたのに、今は休業状態」とし 「シニョンがメインベンダーでもないので仕事を要求できる状況でもなく、 やむをえずそうなった」と話した。

LGが下請企業の事業多角化を妨害したため、 1、2次の下請企業は自ずからLGに依存する運命共同体になるしかなかった。 LGの収益がそのまま彼らの収益で、赤字がそのまま彼らの赤字につながった。

LG電子モバイル・コミュニケーション(MC)部門の売り上げは、 過去には騰落を繰り返したが、2014年からはずっと下降傾向を描いている。 下請企業の状況も似ている。 イルヤ、ウソンM&P、チノン電子、カブル・プラスチック、 シニョンプレシジョンは売上額が急減し、営業利益では赤字を記録している。

このような状況でカブル・プラスチックは2016年に廃業し、 シニョンプレシジョンは昨年から清算手続きに突入すると脅している。

こうした危機は、単に携帯電話の部品下請企業だけの問題ではない。 財閥企業と取り引きする下請企業のほとんどが、全般的に似たような問題を抱えている。 労働者運動研究所のパク・チュンド研究員は 「亀尾地域もこれと似ているが、サムスン、LGなどの企業が海外に出ていき、 使い捨てにされて倒産する業者が続出しているという報道が10年前から出てきた。 サムスンやLGの1、2次下請企業は財閥企業だけに納品していたので、 技術的自発力が低い。 財閥従属性は強まったのに財閥企業が彼らに対する責任を負わないことが問題だ」と批判した。

パク研究員は、電子産業の危機が造船業と自動車産業危機と同じぐらい深刻なのに、 これに対して特別な対策がないと指摘した。 パク研究員は「電子産業はサービス業よりも労働強度が強いが、 賃金が高いため生計に責任がある女性労働者が多い。 彼らを生計補助者ではなく生計扶養者と見て、深刻な危機として受け止めなければならない。 雇用を維持するための政策が必要だ」と強調した。

一方、1次下請企業はLG元請の被害者でもあるが、労組弾圧の加害者でもある。 シニョンプレシジョンは労組設立の直後に整理解雇などを敢行し、 現在は清算を押し通している。 カブル・プラスチックでは2002年労組ができたが、 2003年に支会長が追い出されて労組は瓦解した。 初代支会長だったイ・ヘウォン正義党京畿道党副委員長は 「500ウォンのパン一つで残業をさせた」とし 「女性労働者が劣悪な条件の中で食事もできずに働くのを見て、 労組を結成するようになった」と話した。

イ前支会長は 「300人の組合員で始めたのに会社の懐柔と脅迫が続き、 私が断髪してハンストをした時には30人程度しか残っていなかった」とし 「ハンスト25日目に倒れたが、その時まで交渉が進まず、 組合員に対する損賠と告発をすべて取り下げる条件で退社し、労組もなくなった」 と説明した。 元請は下請の甘い汁を、 会社は労働者の甘い汁を吸う込む構造の中で、 最も無力な労働者たちは相変らず路上に追い出されている。[ワーカーズ56号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-07-04 06:00:19 / Last modified on 2019-07-04 19:15:31 Copyright: Default

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