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教室内の奇妙な性教育

[ワーカーズ・イシュー(1)]国際女性デー特集(3)

パク・タソル記者 2019.03.08 10:38

[順序]

(1) 教室内の奇妙な性教育

(2) フェミニズムの挑戦…学校の敷居を越えられるか?

(3) スクールMeTooの引き金を引いたもの

[出処:キム・ハンジュ記者]

「女が誘惑して男を誘うのが性暴力の原因?」

蔚山のD高校三年生だったK氏は昨年、外部の講師から「猟奇的」な性教育を経験した。 歳を取って落ち着いた年齢帯の女性講師は、 性暴力を派手な被害者のせいにした。 そして「純潔を守れば恥じずに堂々としていられる。 お前たちも結婚する人が純潔なら良くないか。 人生で一番重要なものは生殖器だからしっかり守らなければならない」という言葉をよどみなく吐いた。

当時は学校現場にMeToo運動が広がっていた時だった。 K氏は「クラスの友達もみんな問題だと感じる程、おかしな授業だった。 学校側が準備したものだから信じて従うべきではないかという悩みも聞いたが、 当時のMeTooもそうで、問題だと思えばすぐに話すほうがいいと考えて担任の先生を訪ねて行った」と話した。

同じクラスのP氏も不快だったのは同じだった。 該当講師は「半分以上の男性が性売買をする。 ここにいる君たちも2人に1人は性売買をするだろう」と、 男子学生にも問題発言をはばからなかった。 P氏は「男である私も気持ちが非常に悪かったが、 女子学生はさらに気分が悪かったようだ。 性暴力も女が悪くて起きると言い、 性売買も性を売る女性が悪いという調子で話した。 ある友人はその授業のために衝撃を受けて気分が悪いといった」と当時を回想した。

結局、K氏とP氏は同じクラスの友達と共に担任教師を訪ねて行って、 問題の性教育授業内容を詳しく伝え、 担任教師のチン・ジェヒ(仮名)氏は他のクラスの事例も収集した。 10クラスで行われた授業の内容は見苦しいものだった。 同じ授業資料を使ったため、問題的発言は他のクラスでもそのまま繰り返された。 K氏とP氏のクラスを含み、5クラスで深刻な水準のセクハラ発言事例が出てきた。

Aクラス「出産は必ずしなければいけない。 子供を生むなら4人は生め。 女が子供を生まなければ社会がほろびる」。 「可愛い女を見ると、おじいさんも若い男もそんな気持ちになる。 男の脳の構造は基本的にそのようにできている。 性暴力を受けたくなければ女は控えめな服を着て、 そのように行動しなければならない」。

Bクラス「男は女にすぐ飽きるので女は可愛く装わなければならない。 女がちゃんと装えば男も性売買をしない」。

Cクラス「性暴行の場合、服を脱いだり派手でけばけばしく切る女も悪い。 性暴行された女はまるで戦場で怪我をした人のようにXXだ」。

Dクラス「じっとしていれば性暴行されない。 じっとしていろ」。

学校は117学校暴力緊急支援センターを通じてセクハラ事件を受け付け、 各クラスの学生代表を呼んで意見を集約した。 学生の代表者たちは謝罪と再教育などを要求した。 だがきちんとした謝罪を受けるのは難しかった。 問題の講師たちは謝罪の場で 「子供のように思ってそう言った」 「歳を取ったので、理解してくれ」といった話をした。

教師のチン・ジェヒ氏は 「このような形の男尊女卑を強調し、古ぼけた性教育資料を土台にした教育がまだ現場に残っているということは衝撃的だった」とし 「今回は学生の申告で制約を加えられたが、他の学校はそのままやり過ごしたところも多い」と憂慮した。 チン氏は「蔚山市庁が推薦した団体だったが、 講師陣は学校に提出した名簿から違っていた。 団体では講師が足りないので、全国から一括して集めた」とし 「教育庁で性教育の時間だけを確保して、 性教育講師には全く気を遣わない」と吐露した。

問題になった外部講師は蔚山市両性平等公募事業で選ばれた 「多文化家庭子供後援会」の所属だった。 多文化家庭子供後援会に所属する講師は、 D高等学校をはじめ5つの高校で110余時間、性教育の講義を進めた。 蔚山市は該当団体から経緯書を受ける一方、 来年の公募事業から排除する方針を発表した。 D高等学校の学生代表らが要求した再教育もなされた。

純潔運動本部?

学生たちによれば、彼らの授業資料には「韓国青少年純潔運動本部」という団体名が書かれていた。 「多文化家庭子供後援会」と「韓国青少年純潔運動本部(以下純潔運動本部)」はどちらも統一教傘下の団体だ。 多文化家庭子供後援会の現院長と前会長は、統一教の長老でもある。 統一教は教理的な理由で人種間の結婚を奨励し、 着実に合同結婚式を進めているが、 そのために多文化関連イベントや事業も活発だ。 多文化家庭子供後援会も統一教のこうした事業の中で推進された。

一方、純潔運動本部は1998年から小・中・高校学生たちに性教育を施行し、 純潔を強要して問題になった所だ。 この団体は純潔講義をした後、純潔約束宣誓をさせた。 純潔アメと銀粧刀の絵が描かれた純潔下敷などはその当時、学生に配った純潔のアイテムだった。 2000年代に入って保護者の反発で約束宣誓などをなくしたが、 純潔運動本部は相変らず公教育の現場で性教育を粘り強く進めている。

純潔運動本部によれば、2008年からは事業方向を性価値観教育に転換し、 学校現場で2008年に152回、2009年に244回、2010年に487回、2011年に607回、 2012年に693回、2013年に874回、2014年に682回、2015年に440回、2016年に222回、 2017年に309回の講義を行ったという。 純潔運動本部に多文化家庭子供後援会講師のセクハラ事件と教育資料について 問い合わせようとしたが連絡がつかなかった。

地域で性教育講義をしている技術家庭教師のB氏は 「首都圏外の地域の講師プールが少ないので、 性教育をする宗教団体に問い合わせが集まる」とし 「神父様が保健教師研修で性教育をしたことがあったが、 純潔を強調するなど、問題になる内容が少なくなかった」と話した。

不十分な性教育を作る構造

学生は日々権利の主体になって行くが、学校性教育は相変らず「禁止」と「禁欲」、 「問題」を中心に青少年の性を扱っている。 実際、相当数の学校では学生も教師も無視する実効性のない性教育が命脈を維持していた。

教育部は保健教育などと連係して、小中高校で学年あたり年間15時間以上、 義務的に性教育(性暴力予防教育3時間含む)を実施するように指針を出している。 だが高等学校の場合、入試のために性教育を自習時間に活用したり、 生物、保健、体育などの関連科目授業の時に時間を分けて教えたりもしている。

保健教師が性教育を担当することが多いが、 保健教師1人がすべての学級の性教育を担当するのは現実的に難しい。 さらには国内の保健教師の配置率は、期間制教師を含み法定定員の78%にしかならない(2017年)。 これさえ2016年の69%から、保健教師任用の論議がおきてから大幅に増えた数値だ。 また期間制教師の割合も30%内外なので、持続的かつ長期的な性教育計画をたてるのが難しいという限界もある。

これに伴い、学校では性教育のために、うわさをたよりに外部の講師を捜すほかはない。 性教育講師の資格や条件は現在殆どない。 性教育講師に関する国家公認システムも特にない。 ほとんどは民間の団体がカリキュラムを終えた履修者に修了証を発給する形態だ。 ク・ソンエ氏で有名な「青いわめき」や社団法人「タクティンネイル」、 女性の電話、性暴力相談所、各地域の青少年成文化センターのような団体が 直接性教育講師を養成している。

純潔運動本部も性教育講師の養成をしている。 3段階で進められる講師養成課程は、1泊2日間の 基本性知識、講義教授法、青少年の理解、性問題現況、講義試演実習などを学び、 2段階として専門講師の学校講義を最低3回傍聴する。 最後の3段階では、講義案の設計、他の講師との情報共有および討論を経て、 講師委嘱状が授与される。

国家公認システムがないという点を利用して、 ある業者が「性教育相談員」の資格証明を作って金儲けを試みて問題になった。 2008年、ある資格証明試験教材販売業者は資格証明さえ取れば、 性教育センターや性相談所を開業することができ、 学校に放課後教師として就職することができると広報したが、 これは事実ではないことが明らかになった。

不十分な性教育内容を指摘する声も大きい。 蔚山地域で性教育の講義を兼ねているある教科目の教師B氏は 「今、公教育で内実ある性教育は不可能だと思えば良い。 年間15時間以上、性教育をしろというマニュアルが降りてくるが、 いい講師の人材プールは少なくて、 基準になる教育部標準案そのものも問題の状況だ。 現場で学生たちの速度について行けないので、 退屈でうっとうしい教育が繰り返されるだけ」と話した。

標準にもならない性教育標準案

教育部も学校現場で発生する性教育問題をよく知っている。 そのため6億ウォンをかけて、性教育標準案を作ったが、 2015年に学校に配布される時から多くの批判に直面した。

女性団体はこの標準案が性別固定観念を強化する性差別的な内容を含んでいて、 性的多様性と多様な家族形態を排除しているとした。 性暴力に対する歪んだ通念を強化し、むしろ性暴力の予防を難しくするとも指摘した。 廃棄の要求が強く、スクールMeTooまで起きたため、 昨年3月に金相坤(キム・サンゴン)教育部長官は第三回社会関係長官会議を開き、 学校性教育標準案を改編すると宣言した。 教育部などは性暴力に対応する次元を越えて、 被害者の人権保障、両性の平等、民主市民教育の観点を反映させて2019年上半期に普及する計画だ。 だが保守的な宗教界と保守団体が反発しており、普及をめぐる議論が予想されている。 昨年10月、同性愛同性婚改憲反対国民連合など293の団体は、 既存の学校性教育標準案を積極的に支持するとし、 8万人の署名を教育部に提出して記者会見を行うなど、実力行使をしている。

「性教育時間が性差別的な内容で進められても、期待の数値がとても低いので問題提起をしない」というある高校生の話は、 実際に学生すべてが共有する情緒だ。 だがそれでも学校は性に対する知識と情報を最も多く得られる空間だ。 学校の性教育で情報を得るという学生は48.9%に達した。 学生たちはSNS、YouTubeなどのオンライン空間で自発的に情報を得るが、 その数値は22.5%に終わる。[ワーカーズ52号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-03-11 22:07:19 / Last modified on 2019-03-12 12:30:21 Copyright: Default

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