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面接の歴史

[ワーカーズ イシュー] 1997.1121.20000.982

キム・ハンジュ、パク・タソル、ユン・ジヨン記者 2017.08.29 16:19

「私たち皆は今、汗と涙と…苦痛を要求されていています」
大統領が涙を流しながら訴えた。 苦痛を分担しなければ生き残れないと強調した。 いったいなぜこんな苦痛が到来したのかを考える暇もなく、 人々はベルトをきつくしめた。 パク・セリ選手の素足の闘魂を見て愛国心を強め、 国の借金を返すぞと金集め運動に参加した。 色々な面で紛らわしい時代であった。

そして20年、一世代が流れた。 その時の苦痛を担った人々は、今どのように暮らしているのだろうか。 そして彼らに苦痛を強要した人々は今どこにいるのか。 いえない傷に膿がたまる。 努めて忘れようとするほどに、世の中が穏健になるほどに、なおさらだ。 自分の手にあるだけだと思っていた苦痛が今では世代をはるかに超える。 われわれは陳腐で悲観的な話を放棄できない。

1997年11月21日は、韓国政府がIMFに救済金融を申請した日だ。 ではこの程度でバイバイ、 われわれは果たして苦しかった97年体制に別れの挨拶をできるのだろうか。

中小企業労働者、シム・イウン

8月の焼き付ける陽射しの下で自己紹介の映像を繰り返して撮す。 厚く塗った化粧が暑さで溶けて流れる。 シム・イウン(28、仮名)氏は下半期の採用では何がなんでも成果を上げなければならなかった。 うんざりした書類脱落を越えて、面接官の顔を見物することが今回の応募の目標だ。

シム氏は針の穴と噂されるマーケティング分野に応募した。 これまで頭をかきむしりながら、自己紹介書を書き、 拷問に耐えるようにプログラム提案書を作成した。 年を追って採用の難易度はますます高まった。 今年は自己PRをする映像を撮ってこいという。 1分以内の短い映像でいかに自分の魅力と新鮮さをアピールできるだろうか。 悩んでいるうちに締め切りの日がせまってきた。 同じ境遇の就職準備生の友人に撮影を任せた。 何度もNGが出て撮影時間はますます長くなった。 原稿に詰まって、セミの声が大きすぎて、表情が自然でなくて、 何度か撮り直した。 口元にけいれんが走った。

やっと編集した映像を貼付して履歴書を送った。 結果が出てくるまで、血が逆流するような時間に耐えた。 だが審査結果は落第。 就職準備カフェに行くと支援者のスペックと準備した映像についての説明が続々と書き込まれている。 どの点で脱落したのかを問い、また答える。 慰さめになるのはシム氏よりもっと熱心に準備した人々も苦杯をなめたということ程度だ。

翌年、シム氏は地獄のような就職準備生の世界からかろうじて脱出した。 視線を一気に下げて中小企業に応募した結果だ。 中小企業の採用手続きははるかに単純だった。 圧迫面接に備えたからなのか、自暴自棄の心情でだったからか、面接も無難に通過した。 それでも就職準備期間に受けた傷と苦痛はそのまま後遺症として残った。 応募した会社名を見たり聞いたりすると突然胸がどきっとた。 わざわざ会社名を避けてまわり、就職準備の過程を思い出すまいと努めた。 心が苦しくなり自己恥辱感がこみあげた。

シム氏の友人の1人は就職を準備して、笑いを失った。 友人と無駄口をたたく時も大きく笑えず、他の空間にいる人のように無理に付き合うこともできなかった。 症状は長く続いた。 就職しても長い間、憂鬱感から抜け出せなかった。 就職さえできればすべてが解決するだろうと考えた友人の心配も大きくなった。

初めは会社に適応しようと疲れているからだという友人は、 結局全てに無気力になったようだと打ち明けた。 シム氏は友人を十分理解できた。 シム氏だけでも金と時間、エネルギーを一気につぎ込んでも、いつもじたばたしていた。 TOEIC学院に通って、TOEICスピーキング、資格証明を取得するために韓国史を勉強した。 毎日カフェに集まって、同じ境遇の就職準備生どうしスタディをした。 教育奉仕も着実にしたし、3〜4社でインターンの経験も積んだ。 それでも足りず、大企業が実施する適性試験問題を勉強した。 面接が決まると家族全員がシム氏の機嫌をうかがった。 面接用ヘアーとメーキャップを装着したまま、不便なスーツを着た。 履き替えるヒールと資料などをかばんいっぱいに入れた。 面接場に入るまで、マスカラをつけたとても濃い目で資料を熱心に隅々まで調べた。

就職準備でシム氏の体力は尽き果てた。 初めは就職さえすれば、すべてが完璧になると思った。 だが就職はもうひとつの「奪われること」の始まりだった。 4年間、会社員のシム氏はますます会社の仕事がつらくなる。 ともすれば夜勤に、退勤後も続く会社からのメッセージ、 週末も業務の準備でゆっくり休めない。 会社の事情で代理進級が遅れただけなのに、社主はまだシム氏を新入社員扱いする。 業務が多いのも学習の一環だと説教する。 自分の日常を放棄して生きているだけのように、ため息が出てくる。 考えてみれば日常はいつも未来に抵当を取られていた。 大学に行けば、就職をすれば、という前提を付けて諦めるだけだった。 当然のように、諦めたことは永遠にシム氏から遠ざかって行った。 いつのまにか青春が暮れようとしている。

シム・イウンのお父さん

シム氏は90年代後半、IMF外国為替危機の時期をとても生々しく覚えている。 当時、彼女は小学生だった。 学校の作文の時間に経済危機で苦しくなった両親の事情を書いた。 とても切切としていたからか、校内で賞も受けた。 シム氏はその頃、生まれて初めて酒に酔って人事不省になったお父さんの姿を目撃した。 カバンもなくしてさまようお父さんの姿、そして何も言わずにお父さんの新しいカバンを買って来たお母さんの姿が忘れられない。

シム氏のお父さんはいつも構造調整が襲いかかる会社で定年近くまで粘った。 会社生活30年はいつも危険で不安だった。 互いが互いを評価して、警戒した。 残忍なシステムの中で、人々は互いに憎まれないように対応した。 文学が好きだったお父さんは、処世術やいろいろな自己啓発書を読みふけった。 名節のたびに上司の家に贈答品を贈り、ご機嫌伺いの挨拶をした。 疲労でくたくたになった体をひきずって会食に参加し、酒の席で財布を開いた。 「割当」を満たすために卑屈にもなった。 いくらあくせく暮らしても、結局平凡な人生を追っているだけだという疑いを感じた。 だが、ここから抜け出せば崖っぷちだった。 先に出て行った同僚を見ただけでも分かった。 同期のある同僚は会社を出た後、アパートの坪数を減らして保険の外交をしながら毎日毎日不安な生活を送っていた。 あるドラマの台詞のように、会社が戦場なら、外は地獄だった。

お父さんは、強い構造調整で悪名高い保険会社に通っていた。 構造調整はいつもせまってきた。 息を殺しながらの暮らしが日常になった。 進級どころか、会社にしがみつくことさえ大変だった。 構造調整の前に会社は職員を呼び、自分がなぜ会社に残らなければならないのかを説明しろといった。 暴風前夜のような緊張感の中で、くだくだしい面接が行われたりした。

お父さんは最善を尽くして、なぜ自分が会社に残らなければならないのかを説明した。 本人と、本人が属するチームの成果をもれなく話そうと努力した。 同じ部署の誰を、どのように切るのかについての計画も提示した。 面接はいつも真夏の炎天のように、人のやる気をなくさせた。 ある職員はとんでもない部署に発令された。 堂々と話したり、泣きついたりもした。 大部分の職員は静かに荷物をまとめた。 生き残ったお父さんは、つましく部署をまとめた女子職員に退職を薦めた。 構造調整の嵐が過ぎると、お父さんは罪悪感と無力感に苦しみながら、しばらく気が抜けたようになっていた。

経済危機が近づくたびに家の雰囲気は重く沈んだ。 家族に素振りを見せないようにしても、うまくいかなかった。 結局、定年の数年前に名誉退職を申請した。 お母さんは残念がったが、これ以上退く所がなかった。 お父さんはここまでやれば最後まで頑張ったようなものだと自らを慰めた。 退職後、家にいる時間が増えて、お父さんはお母さんとよく喧嘩をした。 お父さんは30年外で苦労したのだから、もう家で休みたいといった。 お母さんは30年間家事にしばりつけられていたので、もう家事負担をしようとお父さんに要求した。 シム氏を育てながら、大型マートのキャッシャー、 イベントの短期アルバイトを併行して、 家事労働までしていたお母さんの要求も当然だった。

いつのまにかお母さんとお父さんは人生の第2幕の前をうろうろしていた。 明らかに以前とは違う人生だが、あるいは以前よりさらに虐げられた暮らしかもしれない。 お父さんは最近、競売を習ったり不動産投資先を調べてみたり、 ビル管理人の職を尋ね歩く。 新しい生活の前で、すでに呼吸が息苦しい。

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-09-10 23:42:40 / Last modified on 2017-09-10 23:42:42 Copyright: Default

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