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李在鎔のサムスン、今回はHT産業だ

[ワーカーズ8号 イシュー]サムスン主導医療営利化、どこまできたか

ソン・ジフン記者 2016.05.06 13:42

公共医療が脅かされ始めてからずいぶん経つ。 一部では李明博政権にその責任を転嫁するが、実は金大中(キム・デジュン)政府の末期に出てきた「経済自由区域意志政および運営に関する法律」が医療を産業化するという動きの始まりだった。 参与政府の医療先進化政策もその軌を受け継いだ。 李明博政権と朴槿恵政権に至り、医療民営化や医療営利化という名前を得たが、実体は違わない。 公共医療を放棄して、国民健康を民間資本に任せること。 しかし、その時から今まで、医療営利化を主導している人がいる。サムスンだ。 この企画では、サムスンが医療営利化の時代にどう備えているのか、 その対応のためにどんな作業をしてきたのか、 サムスンの医療営利化ロードマップはどれほど完成しているのかを調べる。 最初にサムスンが医療営利化時代を備えて描いた青写真を見てみよう。 次は医療営利化に備え、病院を所有する方式をサムスン病院の事例で探し、 三番目にはサムスンと政府が共に作り、医療営利化政策を樹立した過程を調べる。 最後に、医療営利化が形成された海外事例を通じ、韓国社会の未来を占う。-編集者注

1993年、李健煕(イ・ゴニ)サムスングループ会長は 「妻と子供を除いてすべて変えろ」という新経営宣言をした。 本格的な李健煕時代を知らせたこの宣言の後、 サムスン電子は国内の携帯電話市場で業界1位になった。 半導体産業でも常勝疾走した。 そして2010年、また宣言があった。 サムスンはバイオ産業と医療機器、太陽電池、自動車転地、LED事業の5つの「新樹種」事業を発表した。 サムスンはこの5つの新樹種事業に総額23兆を投資すると明らかにした。 グループ全体の売り上げの80%がサムスン電子に注がれている状況で、新しい事業モデルが必要だったサムスンの宣言だ。 それに歩調をあわせてサムスン一家の経営権継承にも速度がついた。 1代の白色家電と2代の半導体に続く3代目の李在鎔のサムスンがどんな事業に力を注ぐのかを明言したわけだ。

発表当時、5つの事業のうち、サムスンが一番関心を示した分野は、太陽電池と自動車用電池事業だった。 サムスンは太陽電池に6兆ウォン、自動車用2次電池に5兆4000億ウォン、LEDには8兆6000億ウォンを投資するが、 バイオ製薬と医療機器には相対的に少ない2兆1000億ウォンと1兆2000億ウォンを投資すると明らかにした。 しかし6年経った現時点で、李在鎔副会長の動きは当初の計画とは少し違っている。 太陽電池部門は一部の方向が歪み、グローバル市場で競争力が不透明になったという評価が一般的だ。 LED部門も新樹種事業化以後、ある程度は進んでいると伝えられたが、その後、具体的な計画が出てこないうえに、 事業がサムスン電子に吸収された後に部品を生産している程度に終わったという。 残されたのは、バイオ産業と医療機器産業だ。

サムスングループはHT体制に改編中

サムスン経済研究所は2010年に保健福祉部から研究用役の依頼を受け、報告書を発表する。 「未来福祉社会実現のための保健医療産業先進化方案」というこの報告書で眼につく単語は「HT産業」だ。 報告書は「HT(Health Technology)」を「健康増進または病気の予防・治療のための諸般の技術」と定義した。 これまでは医療機器および製薬産業を「BT(Bio Technology)産業」の領域で主に扱った。 しかし「HT」という新しい概念が導入され、医療情報システムと健康保険はもちろん、 遠隔医療などの「健康」をめぐるすべての内容が「金儲け」の範疇に入った。

報告書は、韓国が高齢化社会に進入し、医療需要が増幅している背景を提示して、 健康管理サービスの市場化と遠隔医療の導入を強調する。 核心は、この需要を公共部門ではなく企業が担うということだ。 報告書は予防とリハビリ医学・健康検診など、政府が提供していたサービスを民間領域に渡し、 IT(情報技術)を基盤に遠隔診療を導入、患者の病気情報をデータベース化しようと提案する。 結局、医療の公共性を排除した「営利化」だ。 保健医療団体連合のウ・ソッキュン政策委員長は 「HT分野の産業で一番留意すべき点は、直接の医療サービスだけでなく、 健康管理と予防医学など、これまで公共の領域が担当してきた部門にも民間企業が進出するようになること」と話した。 続いて彼は「サムスンのための営利化政策と規定することはできないが、 医療営利化がこのまま推進されれば最大の恩恵を受けるのはサムスンであるのは明らかだ」という言葉も付け加えた。
報告書が出てから6年経った今、サムスンの研究と提案によって医療営利化は現実のものになっている。 そしてその最大の受恵者もサムスンになる公算が大きい。 サムスンは全ての系列社を動員してHT産業に飛び込んだ。 新樹種事業に選定した医療機器とバイオ産業だけでなく、 病院、電子、保険、遠隔医療産業まで手を伸ばしている。 権五鉉(クォン・オヒョン)サムスン電子副会長は、2013年にサムスン電子コンファレンスで「サムスン電子が医療など新事業を通じ、 2020年までに400兆ウォンの売り上げを目標とする」と話した。 サムスンがHT産業にかける期待をうかがわせるような項目だ。 医薬品製造開発業者のサムスンバイオロジックスは、先月、年間生産能力15万リットル規模の第2工場稼動を始め、 昨年には総8500億ウォンを投資して世界最大規模の18万リットルの第3工場も作り始めた。 目標のとおりに2018年から第3工場が稼動すれば、 サムスンバイオロジックスは年間36万リットルを生産して市場占有率が32%に達する業界1位に浮上する。

サムスンは、遠隔医療事業も推進している。 李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長は2014年に中国で開かれたボアオ・フォーラムで、 サムスン電子のモバイル技術とヘルスケア事業を接続する事業計画に言及した。 ギャラクシーS5に心拍センサーを搭載し、遠隔医療の可能性を占った。 サムスンSDSが大株主になっている365ホームケアは「私たちの家族一生主治医」というキャッチフレーズでサイバー健康管理サービスを進めている。 サムスン電子は医療機器事業部を別に設置し、国内最大医療機器業者のメディシンをはじめとする医療機器企業を相次いで買収した。

サムスンは国内「ビッグ5」の病院に選ばれるサムスン医療院も持っている。 サムスン医療院は1990年代初期にサムスンが成均館大経営に参加して成均館医大設立の認可を受けて成均館大の付属病院に転換することを約束したが、 2010年までそれを守らなかったために教育部の制裁を受け、 サムスンが所有する病院のうち一番規模が小さいサムスン昌原病院を付属病院に転換した。 医療営利化政策が無事に実現すれば、ソウルにある大規模病院を営利病院に転換するための布石だという展望がある。

サムスンがHT分野産業に進出するために努力しているということは、サムスンの人事にもあらわれる。 サムスンは昨年末、サムスングループ内で「解決者」と呼ばれる三星SDSのチョン・ドンス前社長をサムスン電子医療機器事業部長に任命した。 財界ではGEとジーメンスなど世界的規模の大企業と競争しなければならない医療機器事業に、手腕のあるチョン・ドンス社長を前進配置したという分析が優勢だ。 チョン社長が3年間、サムスンSDSでソフトウェアとソリューション事業を推進した経歴をあげて、 スマートフォンと医療機器を接続した新しい形態のヘルスケア事業を展開するという展望もある。

しかしサムスンは、全社がHT事業に邁進しているという一部の視線に対して具体的な言及を避けている。 サムスン電子の関係者は「事業を拡張することで、いくつかの新しい品目を開発しているだけで、 HT分野産業に裸足で飛び込んだのではない」と話した。 彼はサムスンが着実にHT産業を準備し、主導してきたのではないかという質問にも 「海外でもすでに長い間、関連報告書があり、事業が推進されていた」とし、 特にサムスンがHT分野産業を主導しているのではないと主張した。

政府とサムスン、押して引いて

ところで、サムスンが新樹種事業を発表した2010年から最近まで、 サムスンが注目する事業に政府が呼応する形態の様相が続いている。 サムスンのHT産業進出は、政府の医療営利化政策推進とも合致する。

2010年、サムスンは医療機器事業とバイオ産業を新樹種事業に選び、 サムスン経済研究所は政府の依頼で作成した報告書で、医療産業先進化のために医療機器と遠隔医療を育成すべきと主張した。 これに呼応するかのように、李明博政権は遠隔医療許容案を国会に提出しようとしたが失敗した。 李明博政権が国会の反発で遠隔医療許容案提出に失敗すると、 朴槿恵政権は業務引継委員会の時から医療産業先進化で装った医療営利化政策を主張し始めた。 朴槿恵政権は続いて公共地方医療院の晋州医療院の閉鎖を手始めに、投資活性化対策を通じて病院の付帯事業拡大、営利子会社許容、メディテル許容、初の営利病院認可などを推進した。 この他に「医療観光」を名目にして国内病院の海外営利病院への資産流出などを認める「医療海外進出および外国人患者誘致支援に関する法律」を制定した。 また、遠隔医療推進を強行しており、予防、管理領域の「健康管理サービス」までガイドラインで強行している。 公共病院閉鎖、病院部隊事業拡大、健康管理サービスまで、すべてサムスンが推進している事業だ。

時々刻々と変わる局面

サムスンが何の問題もなく、HT分野産業に進出しているとばかりは言えない。 医療営利化の核心として議論される民間医療保険で、サムスンはかなり困っている。 国内最大の民間医療保険会社であるサムスン生命は、早くから公共医療保険を民間保険に変える計画を明らかにしてきた。 サムスン生命は2005年「民営健康保険の現況と発展方向」という報告書で、政府の保険を代替する包括的保険を最終段階として提示した。 2010年、サムスン経済研究所の報告書が描く医療営利化の最終段階でも保険を含む「健康管理」のすべての領域を民間が担当している。 しかし2008年のキャンドル集会以後に医療民営化が全国民的な抵抗に突き当り、その核心として民間医療保険が指摘され、民間医療保険を筆頭とする医療民営化は言い出すことが難しくなった。 政府も民間医療保険許容を遠慮なく話すことができない状態だ。 そのうちに医療営利化を追求する政府ができることは「民営化ではない」と弁解する一方、 隠密に健康保険が保障する領域を縮小し続け、民間保険が収益をあげる道を開くことだけだ(これを証明するかのように、健康保険公団の黒字幅は毎年大きくなっている。 健康保険が保障領域を縮小しているのだ)。 医療民営化に対する国民的な反対がサムスンと政府の医療営利化構想にストップをかけたわけだ。

医療営利化政策が激しい反対に突き当ると、政府も時々刻々と新しい戦略を出している。 姜錫勲(カン・ソックン)セヌリ党議員が出した「地域戦略産業育成のための規制フリーゾーンの指定と運営に関する特別法案」などがその例だ。 14の市道別に戦略産業を選定し、規制を一気に撤廃するという内容を骨子とするこの法は、 全面的な医療営利化に従う反対を避けて主要拠点地域から営利化するという布石と見られる。 この法が通過すれば、規制フリーゾーンに指定されたすべての地域で食品医薬品安全庁が許可していない医療機器の製造と市販が認められる。 心拍センサーが付いたギャラクシーS5も食品医薬品安全庁の許可なしで売れるわけだ。 また、規制フリーゾーンでは個人の同意なしで個人医療情報の活用もできる。 ウ・ソッキュン政策委員長は 「これまで大衆は比較的うまく医療営利化を防いできたため、医療営利化を推進する形態も多様化している」と指摘した。 規制フリーゾーンのような新しい方式の営利化政策が現れるたびに、これを反対して阻止する方法も繰り返し更新されなければならないという指摘だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2016-05-11 03:41:28 / Last modified on 2016-05-11 03:41:29 Copyright: Default

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