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貨物連帯が物流を止めた理由...『車を走らせる奴隷』貨物労働者

多段階下請構造に賃金搾取...政府と大企業、解決の意志なく

ユン・ジヨン記者 2012.06.25 19:36

貨物連帯本部(本部長キム・ダルシク、貨物連帯)が6月25日に全面ストに突入し、 約3年でまた物流大乱が起きる兆しだ。

約1万2000人の貨物連帯組合員をはじめ、非組合員もストライキに参加すること が予想され、主な国家産業団地と港湾、空港、生活必需品運送市場に赤信号が 灯りそうだ。

政府は例によって『厳正対処』を警告している。クォン・ドヨプ国土副長官を はじめ、関係部署は25日に合同談話文を発表して「貨物連帯側が無理な要求を して不法行為をすれば、法と原則により厳正に対応する方針」と明らかにした。

しかし政府が言及した労組の『無理な要求』は、短くても4年、長ければ10年前 から要求してきた事案だった。その上2008年、政府が労組側に約束した『標準 運賃制導入』も守られず、貨物労働者の人生はまだ以前と同じだ。

現代版奴隷、貨物労働者...『多段階下請構造』に搾取

『現代版奴隷』と呼ばれる貨物労働者は、あらゆる社会構造的な悪法、悪習が 凝縮された制度の中で暮らしている。『特殊雇用労働者』に分類されて、労働 基本権を認められず、多段階下請構造の中で運賃を搾取され、燃料代値上げの 直撃を受ける。

そればかりか『個人事業主』と定義される貨物労働者が仕事を止めれば、すぐ 『不法ストライキ』のレッテルが張られる。労働三権は認められないが、仕事 を止めればすぐ『不法ストライキ』と裁断される、労働者も個人事業主でもない あい昧な位置に置かれている。

そんな彼らの人生を一番苦しめるのは『多段階下請構造』だ。現在韓国の貨物 運送市場は、大型運送会社から斡旋業者、零細運送社、貨物労働者などを経る 3段階の下請構造を持っている。大韓通運、現代グロービスなどの大型運送会社 が荷主から物量を受け、1次斡旋業者に渡すと、また2次下請業者へ渡り、最後 に貨物労働者が物量を受ける構造だ。

この過程で斡旋手数料の中間搾取が発生し、結局貨物労働者の手に残る運送料 は、荷主が支払った運賃の63%に過ぎない。実際に交通研究院の統計によれば、 2011年4分期のコンテナ貨物労働者の平均収入は189万ウォンだが、斡旋業者を 3か所以上経て物量を確保する労働者の収入は70万ウォン程度だ。

特に中間で斡旋手数料を取る中間企業は、事務費用以外の出費なく、固定的な 収入を上げるが、貨物労働者は1億5千万ウォンもの車両費の他にも、道路費と 燃料代を含む油類税の負担まで抱えている。

石油価格暴騰に生存威嚇...ネズミの尻尾ほどの運賃料に莫大な税金まで

すべての費用が貨物労働者に転嫁される構造の中で、天上知らずに高騰する 燃料代は彼らの生存を直撃する。

特に労働者の運賃が燃料代値上げについて行けない時は、生存威嚇に苦しむ。 2007年4分期から2008年2分期までの軽油価格は27%上昇したのが、労働者の運賃 は逆に2%低下した。2010年4分期から2012年1分期までは軽油価格が20%上昇したが、 運賃は9%低下した。

石油価格の補助金制度が運営されているが、これは事実上、財閥運送業者への 支援金と評価されている。運送市場の運賃を実質的に決めるグロービス、大韓 通運などの財閥運送業者は、石油価格補助金にあたる運賃を削減しているため だ。ユン・チャンホ貨物連帯事務局長は「運送会社が運送料を策定する時に、 石油価格補助金の分を差し引くから事実上、これは大型物流企業を支援する制度 としてしか運営されない」と説明した。

それでも莫大な税金は貨物労働者の役割だ。燃料代が全て労働者のポケットか ら払われ、油関連税金が上がれば貨物運送市場で貨物労働者だけがさらに税金 を支払うことになる。現在貨物労働者が購入する軽油に付加される税金は40% 程度で、貨物労働者1人は収入の約58%にあたる金額を油関連税金で支払っている。

貨物労働者全体が支払った油関連の税金は2011年基準で9兆ウォンに達する。 2011年の韓国全体油類税19兆2千億ウォンの34%に達する金額だ。

『特殊雇用労働者』というくびきと奴隷契約、最低賃金未満の賃金なども貨物 労働者の人生を苦しめる。運送業者が一方的に契約を解約したり、契約更新の ために権利金を要求したり、貨物労働者営業権を任意に売買するのも珍しくな いためだ。特に貨物労働者の月平均労働時間は320時間だが、月給は政府統計で 180万ウォン程度だ。時給にすれば最低賃金水準にもならない4500ウォン以下の 金額だ。

何よりも『現代版奴隷』になった貨物労働者は職種を変えるのも容易ではない。 ハン・ジウォン労働者運動研究所室長は「2008年の原油高時代の時に、政府は 労働者に燃費が良い車に変えろと言い、労働者は1億5千万ウォン以上の車両を 買い替えたので、簡単に仕事を止めることもできない」と説明した。

政府、「無理な要求は厳正対応」警告...労組「対話したい」

現在、貨物連帯が政府側に要求しているのは、△標準運賃制法制化、△運賃30 %値上げ、△営業用トラックへの免税油支給、△貨物自動車運輸事業法をはじ めとする貨物運送関連法制度全面再改正、△貨物運送労働者など特殊雇用労働者 の労働基本権保障と労災保険全面適用などだ。

[出処:チャムセサン資料写真]

こうした要求は2008年の全面ストライキ当時の要求をそのまま再現している。 4年という時間、貨物労働者の処遇と制度改善が実現していないためだ。特に、 李明博政権は2008年に1年間のモデル実施後、2009年に標準運賃制を導入すると 約束した。だが今まで政府との交渉は足踏み状態だ。

標準運賃制の場合、多段階下請構造で貨物労働者の最低運賃を法的に保障する 制度だ。現在『申告運賃制度』が施行されているが強制力がなく、事実上、守 られずにいる。そのため貨物連帯が要求する『標準運賃制』は、法制度的な 強制力で最低運賃を保障することがポイントだ。

だが政府は6月5日に、強制力のない標準運賃制を最後の仲裁案として出した。 ハン・ジウォン室長は「標準運賃制での政府と労組の最大の差は、強制条項を 含むかどうかで、政府案は強制条項が全くない」とし「もし、最低賃金制度に 強制条項がなく、勧告案だけなら誰が守るか」と指摘した。

労組側は運賃30%値上げの要求も、運送業者が十分な支払能力を持っていると 主張している。ユン・チャンホ事務局長は「軽油価格は27%上がったが持込車主 の運賃は3%下げられた。これは運賃が30%は上がらなければ正常な状況ではない」 とし「特に大企業運送業者は営業利益が57%も増加するなど、十分な支払能力 を持っている」と説明した。だがまさに運賃料を決める大型運送会社は貨物労組 との交渉に出てこない状況だ。

一方、こうした貨物連帯の要求案に対して政府は「無理な要求で不法行為を行っ た場合、法と原則により厳正に対応する方針」とし「運送を拒否する貨物運転 手には6か月間、石油価格補助金支給を停止して、運送妨害および交通妨害など 不法行為の様態により、運転免許および貨物運送従事資格を取り消したり停止 する」と警告した。

また「貨物連帯と持続的な対話により、早期に終結するよう努力する」と明ら かにしている。だが労組側は事実上、政府が対話を拒否しており、真摯に交渉 に出てくることを要求している。

ユン・チャンホ事務局長は「政府が対話で問題解決をすると発表したので期待 したが、全面スト宣言4日目になっても政府部署の誰からも交渉要請がない」と し「むしろはやく対話で解決したいのは私たち」と強調した。続いて彼は、 「もし今週を越え、長期ストになれば社会、経済的に大きな問題を引き起こす」 と警告した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2012-06-26 06:25:38 / Last modified on 2012-06-26 06:25:41 Copyright: Default

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