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性労働者運動に連帯するわれわれの姿勢

-性売買防止法施行1年を評価しながら

社会進歩連帯

性売買防止法の施行から1年、性売買に関し、いつよりも多彩な社会的論争が 行われた。だがこれらの論争では性売買は何が原因で、性売買女性の性労働者 としての組織と権利の主張をどう考え、どう運動するのかという、性売買防止 法についての賛否論争という構図の中だけで進められた。これらの論争では、 性売買を法的に処罰することによって根絶できるという意見に反対することは、 性売買の存在をそのまま認めるものであるかのように誘導されることもあった。 施行から1年が過ぎた現在も、論争は平行線をたどり交わろうとしない。この 文章で、性売買女性の人権のために制定された性売買防止法が、性売買女性の 生存権の要求により批判され、これが性労働者を自己組織化させたことを性売 買防止法施行1年の逆説的な結果と評価しつつ、性労働者運動に連帯するわれ われの姿勢を明らかにしたい。

性売買防止法は『健康家族』保護法か?

性売買防止法施行1年を控えて女性家族部が始めたホワイトタイ・キャンペー ンは、性売買女性の人権のために制定した性売買防止法の趣旨も面目を失う程 に退行的だ。女性家族部の関係者は「社会的に支持される相手と最善を尽くし て関係しようということ」とし「性売買には配偶者への背信という意味が含ま れる」と述べた。これは、家族外の性関係についての保守主義的な観点をその まま示すものだ。女性家族部は、今年から施行された健康家族基本法を主管す る官庁でもある(そのために女性部から女性家族部へと名前を変えた)。健康家 族基本法は、『すべての国民は家庭の構成員として家庭生活を営む権利を持ち、 すべての国民は家庭の重要性を認識して婚姻と出産の社会的重要性を認識する 義務」を規定している。家族の解体と低出産が国家の危機と認識される状況で、 女性に結婚と出産を法的に義務づけるという発想に他ならない。そのため国家 は、家庭を『わいせつ物、歓楽街、暴力などの環境から保護』を支援しなけれ ばならない。政府は健康家族を保護するために、危害環境の性売買(そして、 性売買女性)を根絶しようと思っているのだ。こうした家族の価値と重要性を 強調することは、経済危機による家族解体の危機を家族内の女性に転嫁しよう とするものであり、家族制度外の女性への非難を導く。こうした状況は女性に とって真の危機になりかねない。しかし、女性運動は性売買防止法の強力な施 行を要求するばかりで、この状況の根本的な批判ができずにいる。

彼女たちはどこへ行ったのか?

女性家族部と女性団体は、性売買防止法施行1年の最も大きな成果として、 「性売買が犯罪だという認識を拡散させたこと」をあげる。しかし性売買が犯 罪と認識されて処罰されたことで、性売買女性たちの人権と、巨大な性産業の 二重の搾取構造は改善されたのだろうか? そして性売買防止法施行1年の成果 が性産業の減少だったとして、性売買集結地の業者と集結地性売買女性が半分 に減ったことを根拠にあげる。しかし、これは目立つ集結地を集中摘発したか らだ。集中摘発による集結地の性売買女性の生存権が脅かされることは、「産 業構造の健全性を確保するための避けられない過程」程度に軽く扱われる。ま た、釜山と仁川の集結地試験事業の成果を脱性売買率ではなく、脱業者率 (35%)で表現しなければならない理由は何か? マスコミは、集結地の規模が小 さくなったかどうかは分からないが、隠れた性産業は増えたと報道している。 このように、法は経済的な貧困のために性労働をしなければならない女性の現 実を反映しないばかりか、禁止主義的な接近では性労働者が性労働の過程で受 ける暴力と搾取、(陰性化の過程で)人権蹂躙などの問題に積極的な対応ができ なくなる。また、禁止主義は法の枠外で性売買を量産する犯罪組織、それと結 託した警察を作り出すことで闇の性売買を可能にする構造を量産することにな る。陰性化は、単に性売買業者が見えなくなること、摘発が難しくなる現象を 指すのではなく、性売買女性を不法な地位に追いやり、搾取と暴力に対してぜ い弱にし、性労働を専業にさせる弊害を持つという理由で、積極的に批判され なければならない。

地域再開発事業のための自活政策?

また、集結地の閉鎖政策を推進する方法と意図にも問題がある。集結地閉鎖計 画が、地域再開発事業の一環として進められているのだ。一例として、ソウル 市の性売買防止対策推進は、2002年の李明博ソウル市長就任以後、江南・江北 均衡発展事業の一環としてのニュータウン事業、均衡発展促進地球事業などの 都市再開発を本格的に推進し、これにより開発の対象となる地域の一つである 城北区下月谷洞地域で性売買に従事する女性の自活支援問題が浮上しはじめた。 タシハムケセンターは、こうして用意されたソウル市の性売買総合防止対策に より、ソウル特別市の委託で「性売買根絶のためのハンソリ会」が運営する官 民の組織として2003年9月1日に開所した。ソウル市の集結地自活支援事業は、 再開発のための一種の地域撤去事業費用として形成されたわけだ。これが成功 的な方法だと評価されたことで、女性家族部は8月31日に2005年の集結地試験 事業を9地域に拡大すると発表、その推進方案として管轄地方自治体と警察署 などの関係機関との協力体系の構築、摘発と地域開発など、総合的に効果的な 集結地整備対策を用意すると発表した(2005年8月31日女性家族部報道資料)。 2004年3月22日に全員一致で国会を通過した性売買防止法への賛成は単一では ない。むしろ性売買防止法推進を主導した女性運動は、法と制度を活用するど ころか、国家の代わりに法と制度を施行して、運動の批判能力と躍動性を失っ ていることを深刻に自己批判しなければならない。

法の趣旨はどのように実現されているのか?

女性部と女性団体は、性売買防止法が購買者、斡旋者の処罰を強化することで 性売買を防止し、性売買被害者の『保護と自立』の支援を目的にするという。 この点で、これまでの売春行為防止法が性売買女性の処罰を中心に『善良な風 俗を害する』売春行為を防止したことと比べ、性売買防止法の目的と趣旨は一 歩進んでいると評価した。法の趣旨はどう実現されたのだろうか。それは、警 察の取り締まり強化によってだった。警察の摘発は、顕著な成果を出すために 目立つ集結地を中心に行われ、これが性売買女性の生存権デモという結果とし て現れた。性売買女性の生存権デモは、性売買防止法の根本的な限界を見せた。 性売買防止法は、なぜ女性が性産業に流入し続け、性産業が24兆ウォン、GDP の4%に達するほど巨大化しているかを説明できない。そのため、貧困のために 性労働をしなければ生存できない性労働者の要求を明らかにし、性売買現場の 具体的な現実を改善する方法を摸索しなければならないが、それどころか性売 買女性を救出されるべき犠牲者と見て、性売買現場は閉鎖されるべき空間だと 認識した。性売買女性のデモは、性売買現場が彼女たちの仕事場であり宿舎だ ということ、われわれが性売買の原因と指摘する貧困の現実が具体的に表れる 所だという点を知らせた。さらに重要なことは、性売買を犯罪と規定し、法律 で処罰したことで、性売買女性は基本的な権利も語れない無権利の状態におか れ、さらに極端な暴力という現実に置かれていたという事実だ。性売買女性の デモを触媒として、性売買防止法に対する賛否の構図の中で議論が進められた が、闘っている性売買女性はもうひとつの烙印を味わった。同じように主張し、 デモをしても、一つの声と認められない現実を経験し、彼女たちは自身を労働 者として自己組織化する必要性を一層感じることになった。これが性労働者組 織の発足の背景だった。今、性労働者は自治組織を結成し、警察の摘発と劣悪 な待遇に共同で抵抗し、事業主との労使協議によって労働条件を改善して、性 労働者の権利と要求を作成している。これがまさに性売買防止法の最も逆説的 な結果だ。

性売買は、女性の貧困、女性労働の現実、性の商品化、家族制度の下で抑圧さ れる女性の性欲など、女性一般が体験する問題が重なってあらわれる複雑な社 会構造的な問題だ。そのため、性売買が個別の行為者の行為を処罰で根絶でき るとする現在の禁止主義的な観点を批判し、社会構造的な支配、搾取、暴力の 問題に争点を拡大して、性労働者の主体化と組織化を可能にするために、性売 買の非犯罪化を主張している。特に、禁止主義は『根絶』という名で性売買女 性を『被害者化』する。結局、性売買女性を被害者という概念で規定するため、 性労働者を権利の主体と認めずに、救済し保護される存在として「対象化」す る点が最大の問題だ。韓国における女性運動のこうした禁止主義的な観点は、 性売買防止法施行以後組織された性労働者の存在と要求を無視するものである ことが明らかになった。また、禁止主義的な態度を取ってきた女性運動として は、法の執行で性売買を管理して減少させられるという前提により、国家の法 執行に依存せざるをえない。これは、女性運動の役割を自ら『徹底的な法の執 行と警察の取り締まり強化を繰り返し要求』させることに制限し、女性運動は 家族の強化といった保守主義的な反撃にぜい弱になる。

韓国における性労働者運動発足の意味

「われわれ性労働者は断言します。性労働者運動は貧民運動であり、社会変革 運動です。そして、社会的な汚名に苦しめられる性労働者が、もう沈黙してい ないという人間宣言です。」 (全国性労働者連帯(ハン女連)、「7.3 『貧困と 暴力に抵抗する世界女性行進』に参加して」より)

個人の人間・市民・労働者としての権利と、人間として尊重され、社会的価値 が認められる権利は、彼らの労働に社会的な価値があるかどうかを条件とする ものではない。すなわち人間として(労働に対する)権利を主張する。しかしこ れまで性労働者は、してはいけないことをしているという道徳的な断罪で、他 の労働者は経験しない烙印を押されてきた。性労働者という規定は、自分たち に肯定的な同一性を付与し、権利の主体になろうとする方式であり、必要なこ とだ。必要なことは、彼ら自身が権利の主体になり、自身の現実的な条件を理 解し、自ら要求できるようにしすることだ。これが性労働者としての権利宣言 の最も重要な意味だ。

例えば、民主性労働者連帯は12大綱領で「性労働と脱性労働に関することは、 性労働者自身が自主的に決める」と明らかにしている。これは現在政府が施行 する脱性売買-自活政策は、経済的貧困の問題、性差別的労働市場、非正規職 拡大といった問題の解決がなければ成功しないという批判だ。現在、合法的な 組織として認められてはいないものの、性労働者の自治組織を結成したことは、 女性団体が性売買防止法の成果基準として語る脱業者(脱性売買)率よりはるか に重要な意味を持つ。例えば、性労働者は自分の権利を認識し、集団的な力を 持つことになるが、これは性売買防止法以前は当然と思われた摘発による調査 の時、警察官の暴言と差別的待遇に抵抗し、正当に扱われる権利を獲得した。 性労働者の宣言により、ただちに性労働者への社会的烙印が取り除かれるわけ ではない。合法的に性労働者を認め、各種の社会保障体系を利用できるドイツ でも、性労働者たちは合法的な登録を敬遠している。恐らく、結婚や転業時に 不当な差別や心理的な萎縮を味わうからだろう。それほど性売買の問題は複合 的であり、性労働者が経験する現実もそれしか方法がない。

韓国における性労働者運動は今まさに始まったばかりだ。これは、これまで犯 罪者の身分におかれ、自分自身の存在と要求を示すことができなかった性売買 の当事者による運動だという点で大切な運動であり、新しい女性運動の一部分 になるだろう。そして韓国における性労働者運動は、女性運動の多くを変える 運動だ。

性労働者運動と連帯するわれわれの姿勢

性労働者運動と連帯することは、女性への抑圧(貧困と暴力)構造に対する分析 を深める過程と共に形成されなければならなず、われわれは性労働者を含む 女性労働者の自己組織化と闘争を広げる努力をしなければならない。

現在の新自由主義世界化は貧困を深化させ、現在の類例ない性産業の規模の拡 張は、こうした新自由主義世界化の別の顔だ。したがって貧困の女性化と女性 に対する暴力を増大する構造への闘争は、新自由主義世界化への抵抗だ。また、 女性の居場所を家庭に限定し、女性の労働の価値を切り下げ、不認定を維持す る現在の家族制度を批判しなければならない。したがって、現在の不公平な男 女関係を変える彼女たちの闘争は重要であり、これらの女性の闘争は、特に性 労働者の権利保障とそのために組織化する権利の擁護を含んでいる。

すべての女性労働者は搾取状況から保護されなければならない。それは性売買 に反対する側ではなく、虐待に反対する闘争により形成されなければならない。 女性の人権が、常にあらゆる場所で尊重されるように保障される必要がある。 われわれは、女性に対して社会が加える搾取と性差別構造の中で生存する性労 働者の生存力を尊重し、このような搾取と差別がこれ以上維持されることがな いように、性労働者と連帯する義務がある。

2005年09月24日21:48:25

原文

翻訳/文責:安田(ゆ)


Created byStaff. Created on 2005-09-26 21:42:17 / Last modified on 2005-09-26 21:43:34 Copyright: Default

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