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怪物になったサムスン、王国の支配、もう共に終わらせよう

[寄稿]サムスン解雇労働者キム・ヨンヒ氏の江南駅鉄塔高空籠城300日

チェ・ヒョジョン(政治学者. 慶煕大フマニタスカレッジ解雇講師. 〈大学は誰のものか?〉著者) 2020.04.03 10:16

人を殺す者を殺人者と呼ぶ。 では救えるのに死ぬまで放っておく者は何と呼ぶのだろうか。 自分自身によって苦しむ他者を見ながら、 彼の苦痛から自分の優秀さを感じ、 その苦痛が大きければ大きいほど自分の力も大きいと感じる者、 そうした者を何と呼ぶのだろうか。 われわれは悲しみにも苦痛にも共感できない存在を怪物と言い、悪魔とも言う。 他人の感情に共感できず、悪行に罪悪感を感じず、 自己中心的に思考するだけの反社会的人格をサイコパスという。

サムスン解雇労働者のキム・ヨンヒ氏が江南駅鉄塔で高空籠城を始めてから300日になる。 背が180cmの彼が直径1mしかない鉄塔に横たわって手を伸ばすと一方では頭と肩が外に出て、 反対側はふくらはぎの下の足が出る。 夏には猛暑に焼かれ、冬は酷寒の所。 労組をするなというサムスンの法を犯した者、 奴隷として生きろという資本の命令を拒否した者が、 この地のどこにもサムスンの力が及ばない所がなかったので最後に上がったところは 人が生きられない所、地上25m、0.5坪の高く狭い鉄塔だ。 私たちすべてが見えるそこで彼は毎日死に、毎日生き返る。 刑罰を受けるプロメテウスのように。

[出処:チャムセサン資料写真]

彼は鉄塔で300日を過ごすとは考えてもいなかった。 長期の籠城を予想していたのなら、初めからそんな鉄塔に上がらなかっただろう。 そんなに苦労しても、それだけ世の中を信じていた労働者だ。 サムスンはそんな彼を300日放置した。 何度も死ぬ思いの峠を越え、如何に多くの人々が共に焦ったのか。 それでもサムスンは瞬きもしない。 まるであまりにも小さくて、 自分が踏みつぶしても死んだことも知らない蟻一匹を踏んだ人間のように、 死のうが死ぬまいが関係ないというかのように。

「企業の隠された真実」というドキュメンタリー映画は、 資本主義企業の隠された真実を暴露する。 その中に「サイコパス企業」についてのものがある。 国家に公的支援を要請する時は、企業の社会的性格を強調しつつ、 経営権と財産権には国家の介入を一切拒否し、 企業が「法的には個人」だと主張する企業は、 手軽に「個人の生命と財産と安全を侵害できない」という憲法を持ちだして 「法人」を私的な個人に変身させる。 もし彼らの主張のとおりに企業を個人と見ることができるのなら、 彼らの行動類型を心理学的テストに代入するとどんな結果が出てくるだろうか? その結果は衝撃的だ。 企業という名の個人は「他人の感情に対する冷淡な無関心」、 「持続的な関係維持の不可能」、「他人の安全に対する不堪」など、 ほとんどすべての質問項目でサイコパスになる。 もしこのようなサイコパスが社会の富と権力を掌握し、 制度と政策に介入して強大な社会的な影響力を与えれば、 そんな社会で暮らすわれわれはいかに危険な状態に置かれているのか? 映画の中の質問は、キム・ヨンヒの苦痛を無視するサムスンに対しても有効だ。

今からでもサムスンは、まるで主人の命令に反した奴隷を厳罰にするように、 自分の統治を拒否した者を治めている。 「あえて」サムスンに反抗したためだ。 キム・ヨンヒの罪は何か? 87年の民主化運動の流れの中で、多くの民主労組が作られた時、 労働者の権利に目を開き、労働組合を作ろうとした罪。 目に土が入っても労組はだめだという会長様の命令を破って サムスンに民主労組を作ろうとした罪。 解雇されても黙らなかった罪。 くやしさを世の中に知らせ、法の判決を求めた罪。 金でも懐柔されず、暴力と脅迫にも屈服しなかった罪。 一人の人間に起きるあらゆる不幸を味わいながら、最後まで諦めずに戦っている罪。 それがサムスン王国が彼を生かそうとしない理由だ。 これからもそんな労働者が出てきてはいけないから。

サムスンは生かせるのに何もしないことで自分の権力がいかに恐ろしいかを教えているのだ。 無慈悲な王が反逆者の死体を城門の外に吊るして国民に服従を教えるように、 この国でサムスンの法を拒否すればどうなるかを私たちに教えているのだ。 企業がいくら労働者を弾圧しても、法も助けず、国家も救いにこないだろうし、 どんな市民も立ち上がらないと展示して見せているのだ。 サムスンが企業ではなく国家であれば、すでに罷免されて弾劾されていただろうし、 政治的・司法的な審判を受けていただろう。 しかし市場の独裁者は法の上に立ち、民主主義をもてあそぶ。

一人のサイコパスが反人間的犯罪を行う時は、悪魔だ、怪物だ、厳罰にしろと怒る人々は、 巨大な企業が一個人にそんな問題を起こす時はそれほど怒らない。 国家暴力には連帯して抵抗する人々も、企業の暴力は私的な問題だと片付ける。 善良な人々は怪物の犠牲になった者を見て、 彼の勝つことができない戦いを悲しみ、同情する。 しかし同情と憐憫は怪物の力を大きくするだけだ。 怪物は自分を恐れる人々を恐れず、自分を恐れない人々を恐れる。

今、サムスンがキム・ヨンヒに対している方式は、 この企業が労働者をどう弾圧してきたのかを生き生きと見せる証拠だ。 また今後も労働者をどのように治めるのかを見せるメッセージでもある。 キム・ヨンヒに謝罪しないのは、無労組経営を撤回するつもりがないという意味であり、 サムスンでは民主労組は夢にも見るなという意味だ。 選挙の季節がやってきたが、ここを訪ねてくる政治家はめずらしい。 サムスンは恐ろしく、労働者はこっけいなのだ。 われわれは誰か? 資本家なのか、労働者なのか? 労組のないサムスンは天国なのか、地獄なのか? 資本家には天国で、労働者には地獄であろう。 その地獄を体験した解雇労働者のキム・ヨンヒは、 その地獄が自分だけの地獄ではないことを知っていたので鉄塔の地獄の道に上がった。 労働者の問いを市民の問いに変えてみよう。 サムスンが支配する国はどんな国なのだろうか?

自分の手で大統領を選び、国会議員を選べば民主主義になるのではない。 企業権力と、財閥独裁を解体しなければ、民衆は永遠に奴隷でしかない。 キム・ヨンヒの300日に対する沈黙はサムスンのもうひとつの犯罪であり、 何もしない国家は職務遺棄だ。 サムスンの積弊からまず清算しなければならない。 その積弊の手足であるサムスンの政権、サムスンの政党、サムスンの国会を審判しなければならない。 それでこそサムスン王国の奴隷ではなく、民主国家の市民として暮らせる。 いまこそ私たちがキム・ヨンヒになって、この土地の多くのキム・ヨンヒと共に戦おう。 王国の支配は終わらなければならない。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-04-13 16:44:25 / Last modified on 2020-04-13 16:44:27 Copyright: Default

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