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存在自体が不法な「未登録移住児童」、幽霊のような人生

不法滞留者の身分も相続...移住児童権利保障基本法、通過するか

ユン・ジヨン記者 2015.05.13 12:48

存在自体が不法な未登録移住児童、生まれた時から社会的な権利剥奪

チャンミのお母さんロソリン氏はマイクを持つとすぐ涙を流した。 チャンミと違い、ロソリン氏はまだ韓国語が下手だ。 長い間泣いている間にたどたどしい韓国語が混じる。 「5月27日、私たちはフィリピンに行かなければなりません。 もし方法があれば助けてください。 とても感謝します。 お願いします」。 12歳になる娘のチャンミが反対側でお母さんが泣ている姿を見守っている。 快活だった小学生の少女はいつのまにか、存在そのものが不法な未登録移住児童になっていた。

法務部によれば、2013年2月に19歳未満の未登録移住児童の規模は約6千人だ。 統計で把握されない数を入れれば1万〜2万人ほどと推測される。 存在が消された未登録移住児童らは、教育、医療などの社会的な権利を剥奪されたまま暮らしていかなければならない。 移住労働希望センターは2月から二か月間、韓国で子供を育てる未登録移住労働者30人に深層インタビューを行った。 ほぼすべての家庭で、「出産」から考えられないような戦争のような状況だった。

5月12日午後、国家人権委員会の8階で開かれた 「深層面接を通して見る未登録移住児童実態研究懇談会」で、 移住労働希望センターのアン・ウンジュ国際協力チーム長は 「未登録女性移住労働者が韓国で妊娠、出産を経験するのは途方もない不安とストレスの要因だった」とし 「妊娠期間中続く心理的負担と子供の未来に対する不安定のため、 多くの女性が未熟児を出産したり自然分娩ではなく手術で子供を出産するケースがとても多かった」と説明した。 実際に29人の子供のうち4人は未熟児として生まれた。 出産を経験した女性29人のうち20人は帝王切開手術を受けなければならなかった。

保険の恩恵がなく、手術費だけでも千万ウォン以上を支払わなければならない。 ある未登録労働者は未熟児を出産して、1900万ウォンもの手術費用を請求された。 帝王切開の手術費はたいてい軽く1千万ウォンを超える。 自然分娩も150〜200万ウォンの医療費を払わなければならなかった。 韓国国籍者と較べ、帝王切開の手術費は最大15倍、自然分娩医療費は平均10倍の費用をさらに多く払わなければならない。

タイシェルターのハン・サンフン相談室長は昨年5月、ひやりとする経験をした。 タイ社員のある僧侶からかかってきた一通の電話が発端になった。 妊娠したタイの未登録移住女性の出産日が近付いているが、支援を受けるところがないという要旨の連絡だった。 子供のお父さんは妊娠の知らせを知って逃げ、妊娠後、働けなくなった女性は、 社員の助けを受けなければならなかった。 ハン・サンフン室長は病院を探し始め、首都圏の近くではソウル医療院だけで安い費用で出産できるという情報を知った。 彼は「出産日の頃にソウル医療院を訪問することにして、 その時までは町の病院に通うことにした。 ところが出産予定日の3週間前の夜明けに電話がかかってきた。 羊水が出て、はやくきてほしいという連絡だった」と説明した。 救急車を呼び、普段通っていた病院に産婦を運んだ。 産婦の難しい事情を病院に話すと「私たちの病院は貧しい人々助ける病院ではない」という答が戻ってきた。

ハン室長は切迫した気持ちで産婦を自分の車に乗せて水原の聖ビンセント病院に向かった。 宗教を前に出した病院なので、あるいは助けを受けられるのではないだろうかという漠然とした期待のためだった。 そこで帝王切開手術で子供を出産した。 未熟児で生まれた赤ん坊は泣くこともできないまま、不規則な呼吸をしていた。 帝王切開の手術費と子供の治療費まで、800万ウォン越える金が請求された。 産婦が持っている全財産は100万ウォンほどだった。 病院の社会福祉課と移住民医療支援活動家の助けと地方自治体支援金を受け、 なんとか60万ウォン程度で医療費を解決した。 子供は生まれたが、お母さんは子供を育てる余力がなかった。 結局、170万ウォンを払って、他人の手で子供をタイに送りかえさなければならなかった。

不法滞留者の身分も相続される現実
「移住児童権利保障基本法」、国会で通過するか

子供を産んで育てる過程でも、さまざまな悪戦苦闘を経験する。 出生申告からそうだ。 大使館ごとに規定は千差万別だが、出生申告の過程で大金がかかったり、手続きが難しく、 多くの親が子供の出生申告をあきらめて暮らしている。 共稼ぎをしなければならず、子供を保育園に送らなければならないが、 未登録移住児童が通える保育園は殆どない。 インタビュー参加者のうち10人はすでに保育園から拒絶された経験があった。 運が良ければなんとか統合保育園に子供を預けられる。 民間の保育園に子供を預けるにしても、保育費には耐えられない。

一番大変な時は、子供が病気の時だ。 保険が適用されず、子供が風邪にかかるだけでも医療費が軽く何万ウォンにもなる。 住居環境は会社の寄宿舎や一部屋の月貰部屋がほとんどだ。 摘発されて、直ちに追放されれば保証金を返してもらえないので、 保証金のない部屋を探すので、月貰が高い。 小学校に入学したくても、学校が拒否すれば手の打ちようがない。 公益人権法財団共感のソ・ラミ弁護士は 「現行の制度には、義務教育対象に移住児童が明示されていない。 小学校に入学したくても、学校長の裁量によって入学を拒否することができる。 入学の過程でも外国人登録証などを提示しろと要求されることもある。 高等学校卒業後には、ビザ書類を提出できず、大学への進学ができない。 事実上、公教育接近権に多くの限界を持っている」と説明した。

子供の未来を設計する余裕もない。 アン・ウンジュ チーム長は 「子供の将来の計画をたてていると答えた参加者は殆どいなかった。 ただ両親と同じように工場で働かなくてすめば良いという程度の返事を聞くことができた」と明らかにした。 だが残念なことに、不法滞留者という身分は子供にもそのまま相続される。 2000年の初めから、外国人労働者のシェルター「コシアンの家」を運営するキム・ヨンイム院長は、 15年経った現在も未登録移住児童の処遇は変わっていないと口を開いた。

仕事を始めた時に会った9歳のモンゴル男の子は、強制追放された父母を見送り、しばらく一人で韓国に残されていた。 1年間、叔父の家に居そうろうしていたが、耐えられずにモンゴルに行くことになった。 キム院長は「その子供が大きくなって労働ビザを受けて、韓国にきた。 つきあっていたガールフレンドも、留学ビザで一緒にきた。 だが彼らはまた未登録移住労働者になった」と説明した。 引越荷物センターで一生懸命働いて、二人の子供を生んだ。 だが二番目の子供は心臓手術を受けなければならなかった。 手術費だけで千万ウォンが必要だった。 キム院長は「医療費が高くても、高い医療技術をもつ韓国の病院で治療を受けることを望んだ。 結局、夫婦は3歳の最初の子供の養育を放棄して、5月1日に子供を本国に送りかえした」と話した。

子供を育てる未登録移住労働者らが望むのことは一つだ。 子供たちが韓国で安全に育てられるように、滞留ビザを発行してほしいと言うことだ。 韓国政府は1991年に批准した国連児童権利協約により、 「管轄権内のすべての児童の権利を差別なく保障する義務」を持っている。 国家人権委員会も2006年、「両親の滞留資格とは無関係に、 すべての移住労働者の子供に両親と一緒に暮らし、養育される権利と教育を受ける権利を保障し、 養育費と医療費を支援する社会福祉体制を構築しなければならない」と勧告した。

これまで23の市民社会団体が「移住児童権利保障基本法」を国会で通過させるための努力を傾けてきた。 昨年12月、該当法案が国会に発議され、現在は法制司法委員会に上程されている。 該当法案は移住児童の差別禁止、身分保障、教育権、健康および福祉権などを保障することを骨子としている。 ソ・ラミ弁護士は「今回の19代国会だけでなく、前の18代国会の時にも法案を発議した。 だが審議されないままで会期が終わり、法案が自動廃棄された」とし 「今回も法案の生命はいくらも残っていない。 来年は総選挙があるので、今年6月の臨時国会が最後の機会」と声を高めた。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2015-05-14 05:35:47 / Last modified on 2015-05-14 05:35:48 Copyright: Default

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