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[香港雨傘運動]バリケードで成長する階級闘争

黒対黄:香港の雨傘運動と階級敵対(3)現在

米国のある過激派と匿名の友人(Ultra-com) 2014.10.24 15:27

[チャムセサン編集者 注]本文の筆者は「米国のある過激派と匿名の友人」がUltra-com.orgに最初に掲載した文を〈リブコム(libcom)〉のブログ「ナオ(Nao、閙)」が再掲載したものであることを明らかにします。Ultra-com.orgは2011年以来、世界のオキュパイ、ストライキと反乱に参加している自称「ウルトラ(過激派)」が、この危機の過程で形成された他の「ウルトラ」との出会い、地域での討論、調査と協力のために作ったウェブサイトだと紹介しています。筆者陣はこの文を伝えるにあたり「直接調査で作成された情報と写真を提供した香港のすべての友人に感謝する」と記録しました。

一方、この文を再掲載した〈リブコム〉は世界的反資本主義社会運動を紹介するオンラインメディアで、この文を香港の「雨傘運動」についての直接調査に基づき、背景と限界、そしてマルクス主義的展望を分析した文だと伝えました。「ナオ」は〈リブコム〉で中国での階級闘争を伝えており「没収、搾取と排除に抵抗する小農、労働者と失業者の反乱のためのプロレタリア問題児を擁護する」と紹介します。

1編:[香港雨傘運動]未来ない世代の登場
2編:[香港雨傘運動]ポスト天安門、反中国感情と階級運動の屈曲
3編:[香港雨傘運動]バリケードで成長する階級闘争

PART 2 現在 雨傘を持て[iv]

この港湾ストライキは「雨傘運動」を理解するための重要な先駆けだ。 現在のオキュパイは疑いなくこれと同じジレンマに直面している。 ストライキ労働者のように、彼らは市民社会に訴えるか、あるいは経済的な妨害を強めるかという質問の間で膠着状態に陥っている。 運動内部の分裂がこれを示している。 若い抗議者の多くは「愛と平和のオキュパイ・セントラル」の幹部に反対している。 陳健民教授は梁振英行政長官が辞任すれば封鎖を終わらせようと言い、強い批判を受けた。 だが彼らのような若い人々は、いかなる財産上の損失もあってはならず、警察が攻撃しても反撃するなと言って、民主主義、普通選挙権と非暴力に関する大衆的な言葉をオウムのように繰り返している。

▲非暴力を行使して民主主義のためにだけ戦おうと提案する張り紙[出処:Ultra-com.org]

「秩序」に対する奴隷根性は、抗議者たちをデッドゾーンに閉じ込めようとする。 多くの人は私有財産の侵害を不当だと考えるので、このデッドゾーンの中では運動に力を付与する経済的妨害をエスカレートさせることができない。 結局こうした方式の抗議は、政府にとって楽な形で自然に消滅するか、行政官の辞任といった小さな譲歩を勝ち取って満足せざるを得ない。 この難題を知りつつも、多くの人は一様に暴力集団[v]がこの島を軍事占領するための口実を作り、北京に命令を出させるために状況をエスカレートさせようとしている(という噂)を心配している。

ここで興味深い矛盾が発生する。 デモに潜在する民族主義は、「香港人」である警察は味方であり、潜在的な未来の参加者だと見なしているのに対し、軍事介入は、警察と同じ戦術を使ったとしても、一般的に拒否する。 これは結局、北京による香港の政治家のコントロール以上に、軍隊そのものが北京の直接の命令下にある本土の人によって構成されているということが問題だということだ。 しかし抗議者たちにとって、これはいかなる種類の論理的な矛盾もない。 多くの人々は警察と戦ったり逮捕に抵抗するのは逆効果だという立場を固持しているが、軍隊に抵抗するために暴力戦術を使うことは全く正当だと主張している。

▲モンコクのあるバリケード

▲モンコクでデモ隊が放置された公共交通バスにメッセージを貼り付けている。このバスには1978-1981年の「民主の壁運動」の「西単民主墙」を連想させる「民主墙(民主の壁)」の文字が見える。

▲モンコクのあるバリケードには警察の進入を防ぐために2台の車両が停められている。3日に追加された車両の1台は簡単に撤去できないように車輪が取り外された。当時、占拠者は救急車と消防車が通るたびにバリケードを開いていた。だが2日、アドミラルティで警察は救急車のためにバリケードを開いた時、占拠空間に進入してゴム弾と催涙ガスを投入したため、その後デモ隊はこの車両の車輪を外した。

ポピュリスト的な視点は、すべての衝突の原因を外部的な人種や国籍、または単に移民の身分といった問題におしつけ、民衆の内部的な敵対についての認識を遮る。 こうしたポピュリズムが優勢になると、一部の抗議者の暴動、財産の破壊そして「無礼」といったことさえも、「外部の人たち」、この場合は中国本土の人によるものとして片付けられ、少なくとも彼らが一般的な存在になるまで主張し続けるだろう。 だがストライキは既存の社会内部の階級的敵対を表面化するものであるため、そのようなポピュリストの論理を打ち破る性質を持っている。

現在のこの運動を前進させる道は極めて限られており、多くの経路は敗北につながる。 抗議者たちの戦術的停滞は、抗議者たちが行動しないことが一般参加者から見れば彼らが正当ではないかのように映るため、政府はただ彼らがいなくなるのを待つようにさせかねない。 すでに新しい参加者は運動に力がなく、ただ漂流しているようだと不平を言っている。 この反乱はうまくいっても一回だけの失敗した「社会運動」になりかねない。 市民社会の前に広がる不毛の光景は、貧しい人ではなく将来のNGO指導者や政治家しかいない。 最悪の場合には、香港の民衆は何の統制力もなく、インフレ、不平等と窮乏は少しも改善されることなく続く体制への参加だけが認められる一般投票権で終わるかもしれない[vi]

しかしこのような状況で、敗北は右翼の復活につながる危険がある。 極右がこの抗議行動を動かす力を得れば、この運動は全体的に民族主義に向かって進むことになるだろう。 この運動初期から「究極の普通」になり、活動力のない「レフティスト・プリックス[vii]」を攻撃するビラと言説を配って歩く熱血公民のようなレイシスト政治集団を多くの人々が認めようが認めまいが、現在の「反乱の時代」において右翼は人々を引き付ける。 彼らは最近、モンコクのバリケード(アナキストが作ったバリケード)を守っていた黄色いシャツのメンバーを「青リボン(親中国デモ隊)」が破壊しようとしてから目につき始めた。 この状況はウクライナの惨めな経験と似ている。 極右は西欧の方を向く資本家同盟の突撃隊のような行動をした。

▲「青リボン」が2日に解散を試みたことでモンコクのバリケードに集まる熱血公民会員の小グループ。バリケードの防衛は右派の役割というわけではないが、光州への露出度を高めようとしているらしい。彼らのシャツには英語で、「プロレタリア」と書かれていた。極右または「第3者主義(third positionist)」グループ[マルクス主義や資本主義反対を強調する革命的民族主義者。ネオファシズム、民族アナーキズム、民族ボルシェビズムなど]は左派の用語を簒奪して使う。

▲レフティスト・プリックスを信じるな
解散(するようにする要請)を警戒しろ
われわれがしているのはパーティーではなく市民不服従であることを忘れるな!!!
私たちが望むものは真の普通選挙だ!!!
カラオケ禁止
記念写真禁止
まだ勝利していない
指導者禁止
小グループ討論(リベラルのよるグループ討論のこと)禁止

「民主主義」の問題ではない

だが敗北は決して避けられないわけではない。 最近の香港のどこにでもいるような若者たちは、彼らの未来が奪われていることを認識しつつあり、なぜ彼らがこの位置に置かれているのか、そしてどうすれば反撃できるのかを知ろうとしている。 巨大な隣の本土への統合が進むにつれ、中国は小さな都市国家の香港にとってまさに「未来」だ[viii]。 これは青年世代にとって、中国もまた不吉な未来を予感させるものの一つであることを意味している。

運動が止まっていることに不満を持つ若い抗議者は多いが、彼らを押し進めるには孤立感と無力感がある。 特に、夜になると怒った献身的な若い人たちがたくさん出てくるが、彼らをつなぎ、活動をまとめていく方法はなさそうだ。 さらに重要なことは、これらの抗議者たちは彼らの怒りを「民主主義」と「普通選挙権」の言語に翻訳する傾向があるが、境界を越えて珠江デルタの工場労働者たちとの連帯を見つけることには失敗しているということだ。

だが汎民主派の専門用語がこの運動の共通言語であるという事実にもかかわらず、この運動自体は、多くの人々にとってリベラルな「民主主義」とはほとんど関係がないのは明らかだ。 実際に、ほとんどの討論で抗議者たちが実際に望んでいることは、早く他の領域に突入したいということだ。 もし彼らの目標について質問すれば、多くの人々はオウムのように同じことを言うだろう―社会的階層や世代を問わず信じられない程に一貫している。 だが彼らが「なぜ」それを望むのかと強く問えば、多くの抗議者たちはすぐ、単なる政治的な問題ではなく、経済的な問題へとジャンプするのだ。

人々は天井知らずの賃貸料と非人間的な水準の不平等、食費と交通費のインフレ、そして社会の底辺の膨大な人々を簡単に無視する政府を嘆く。 自由発言台に立つ人は誰もが「なぜ香港に金持ちは一握りで、貧しい人はこれほど多いのか? 私たちに民主主義がないからだ!」と―単なる間違いだとしても―主張する。 多くの人々は、リベラル民主主義が実際にギリシャや米国のような所でいかに機能したのかについて、底抜けに貧しい知識により、自分たちの指導者を「選出」できるようになれば、その指導者がインフレや貧困、金融投機といった広範囲な問題を解決してくれると主張する。 そして民主主義は、一般投票制度をいかに実行するかを考える議論ではなく、すべての社会的な病を癒やす万病薬の一種として扱われている。

▲中年のある男性(香港出身だが、数十年間海外で暮らし、親戚を訪問するために戻った)は、銅鑼湾のバリケードの前で写真撮影をした。彼の左には「民主」と書かれている(彼の後ろには「レフティスト・プリックス」を警告する別のポスターがある)。彼はデモ隊が交通と社会秩序を妨害することは同意しないが、警察がデモ隊に多くの催涙ガスを使っていると考える。そして彼は今、1989年スタイルの流血事態が起きるのではないかと心配している。

しかしこの運動のポピュリストと民主主義に関する幻想は、ともに不安定になりかねない。 占拠運動がさらに包括的な人々に広がり、新しい参加者が彼ら自身の要求をバリケードに持ち込んでいる。 学連(HKFS)の幹部をはじめとする、本来リベラルな学生の一部は、ますますそのために不満を感じ、普通選挙権の要求に集中することを促す案内文を出している。 インタビューに応じてくれた人たちは、この運動が「混乱」し、選挙改革のための闘争ではなく、学生を攻撃する警察に抵抗する多くの新しい抗議者により「拡散」してしまうのではないかと憂慮した。 だが新しい要求は、選挙についてのありふれた要求の領域を越えて広がり、実際にこの運動に再点火する可能性がある。 一般的に、この運動を発議した人々から遠く離れた階級が合流することは、「拡散」ではなく、むしろこの運動を押し進める力を増幅する一種の位相の変化を知らせる信号だ。

▲「一点」に留まり、選挙改革以外の要求をしないように訴える張り紙

一つ特に注目すべき可能性は、労働者たちの参加が増加していることだ。 比較的小さい香港職工会連盟(HKCTU)は10月1日(中国の「国慶日」)のゼネストを呼びかけ、少なくとも一部の労働者がこの呼びかけに応じた[ix]。 以前の港湾ストライキに参加した何人かの港湾労働者も、デモに参加して港湾ストライキは「不可能」だろうとしつつも、抗議活動への支持を表明した。 だが道路のオキュパイ運動が成長していることにより、モンコックのような住宅が多い地域では、他の労働者が参加する可能性がますます高まっている。

オキュパイをゼネストに拡大すれば、ポピュリストの仮説に疑問を提起するだけでなく、運動の排他的な政治的な要求をも本質的に不安定にする効果をあげるだろう。 例えば、港湾労働者が2回目のストライキを発議すれば、労働者の日常と若い世代の未来を略奪することについての李嘉誠など香港の資本家の責任は否定できなくなるだろう。 この対立を本土の中国人に転嫁することは単に不可能になる。 香港内部の二つの階級の敵対はますます否定できなくなり、デモは無抵抗の道を断ち切って危険であると同時に希望の未来に向かうだろう。

台風

チムシャツイは現在占拠されているが、右翼勢力が強いといううわさがある。 バリケードはショッピングモールの外に作られ、群衆は傘の下に集まってぼんやりしたクルーズ船の形の下でこの運動の未来を議論している。 右翼はクルーズ船は今や本土の資本家で満杯になったと誇張しているが、左翼はそう言うことができないようだ。 下手くそなギターにあわせて広東語でラブソングを歌っていたあの少女はもういなくなり、どこかで観光客案内の看板と交通表示板でバリケードを作っているかもしれない。 だがその歌は今、人々の希望という形で空のバスと雨にぬれた政府庁舎にまとわりつき、都市全体へと拡大している。

台風がやってきて、海は激しく波打っている。 もうこのクルーズ船があとどれほど都市の上にいられるのかは分からない。 クルーズ船の裕福な乗客、中国本土であれ、どこであれ、他の人からは見えないが警察の阻止線と白い壁の後で静かに座っている。 埠頭が占拠されれば、この港はどうなるのだろうか? 秩序という香港のみじめな奴隷根性、この運動の近視眼的な要求とひどいポピュリズムにもかかわらず、少なくとも今後、「香港はもう以前と同じではない」という点だけは明らかだ。 現在の状況を支える可能性はもはやないという事実はむしろ、この運動に潜在性があるということを確信させる。 仮にこの運動が敗北してもだ。

台風は本来、混沌の被造物であり、この島が洪水になれば、状況はさらに悪化するかもしれない。 だがこの混乱にはまたある種の約束がある。 現在の状態の破壊は、以前は全くの運命以上ではないと思われていた、この先のかすかな可能性を断ちきってしまう。 突破口はある。 恐らく人々は雨の中でも、突破口に向けてどう航海していくのかを学び始めている。 そして雨が何年も続いたとしても、人々には雨傘がある。

―ある米国の過激派と数人の匿名の友人

[脚注]

[i] 中国の経済開放の詳しい歴史と20世紀後半の東アジア資本の役割についてはジョバンニ・アリジの次の論文を参照のこと。“China's Market Economy in the Long Run,” in China and the Transformation of Global Capitalism, edited by Ho-fung Hung. John’s Hopkins University Press, 2009. p.22.

[ii] 現在の移民は、毎日6万人が出国した1990年代初期よりはるかに低いレベルである点に注意。

[iii] この情報は、香港のオリジナルのオキュパイ運動参加者によるストライキの初期に数日感労働者と一緒にいた多くの人とのインタビューを通じて得られたものである。

[iv] 最後のいくつかの部分の情報の多くはインタビューおよび政治分派について調べるために、私たちが現場で会った人々への直接調査により構成された。私たちが会った人の一部は初期の学生ストに参加していた。他の人々は警察の鎮圧後に参加した。直接調査で集めた情報の質により、これらのセクションではリンクや引用をつけず、インタビュー引用符号だけをつけて提供されている。

[v] 香港の組織ギャングの多くは現在、香港政府と協力して北京の利害に寄与する「愛国的」人物だ。しかしこれは一般的な真実ではない。北京が支援するギャングに関するうわさは、バリケードを作るためにデモ隊と協力したモンコクのギャングに対する報道に対抗して急増した。

[vi] もちろん今後、香港の民主主義が究極的には改良主義政治の限界を越える方式で階級敵対が蘇生する政治的空間を作るという主張に異議はあるだろう。これは本質的に(私たちが集められる限り)レフト21[香港の左派組織]のような一部のグループの主張だ。しかしこれは率直な立場ではない。基本的に妄想を続けさせ、敵対に対する認識を無制限に延期させる。一般的に「適当な時間」に行動を延期することは、単に完全に行動に反対する一つの方法だ。

[vii] 文言としては「左膠」、「レフト・ペニス」という広東語で(ほとんど見ることのない)小規模な左派グループよりも汎民主派指導部についての言葉だ。膠の文字は「にかわ」の意味だが、広東語で膠と鳩の発音が共通していることから、婉曲的に陰茎を意味するために使われる(「鳩」は陰茎の隠語)。「レフティスト・プリック」という言葉はこの数日で広く使われるようになった。この都市のすべての主な占拠地域で繰り返し聞くことができる。その上、左派も汎民主派に対して良い意味の、ちょっとした悪口としてこれを使っている。この用語を使ったとしても本質的に悪いわけではない。一部の敏感な左派は必然的に怒るが、問題は右翼がこの運動の全体に受け入れられるスローガンを鋳造してばらまいていることだ。このスローガンが(または美学でも戦術など何でも)一般化すれば、これは右翼を事実上の指導的位置につけることになる。

[viii] 1997年の中国政府への英国植民政権の香港返還は、アジア金融危機と同時に起き、中国もまたこの危機が引き起こした香港の経済沈滞に不合理に関連付けた。

[ix] あいまいだが、しかし「1万ストライキ労働者」という主張がどんな現実的な根拠を持つとしても、国慶日はとにかく全国的な休日なので、労働者は働きに行く必要がない。休日だったので、休日に多くの人々は単にオキュパイ運動に参加した。だがこれは「ストライキ」ではない。

[原文]Ultra-com.org
[掲載]2014年10月3日
[韓国語翻訳]チョン・ウニ記者
[韓日・英和翻訳]安田(ゆ)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2014-10-27 03:15:44 / Last modified on 2014-11-21 05:26:19 Copyright: Default

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