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サムスン電子職員サービスマンは「罪人」です

[監視統制、崖っぷちの感情労働者](8):不法派遣の悲劇、サムスン電子サービス労働者

チョン・ジェウン記者 2013.11.21 08:45

サムスン電子サービスセンターのサービスマンが悪徳消費者、いわゆる「ブラック・ コンシューマー」の経験談を話しけながら、意外に明るく笑う。サムスン電子 サービス本社顧客満足評価で落第点を受けても、一編のコメディーのような話は 同僚とのおしゃべりで人気のネタだ。業務ストレスで髪の毛が抜けて、 歯が抜けたサービスマンの数少ないストレス解消法だ。

「おばあさんの顧客の家に2回冷蔵庫の修理に行ったが、泥棒にされました。 おばあさんが本社のコールセンターに電話して、冷凍室にある粉トウガラシ、 冷蔵庫の近くにあった飲み物とアメ、おばあさんの下着と洗剤を技師が持って いったと抗議したのです(笑)。おばあさんが何日か後、またコールセンターに 電話して『服は見つけたので、残りは持ってこい』と言いました。笑いながら やりすごしたが証明する方法もなく、泥棒扱いされて機嫌を損ねましたよ」

「趣味がインターネットの花札という顧客の家に修理に行ったのですが、顧客 が花札のアバターの服を買ってくれと言う。翌日にまた電話で、アバターの服 が脱げたといいました(笑)。アバターの服を買って着せ、手袋も買って7〜8回 は訪問したようです。後で『私は顧客の専属サービスマンではない』と言いま した。顧客が一人暮しの老人で、胸が痛みました。しかし顧客の抗議が技師の 評価につながるので、粗末にはできません」

そうして笑いながら、サービスマンたちは自分はアバターよりダメのようだと 頭を下げる。友人たちが『ネクタイを締めた乞食』と呼んでも、一度も飲み代 を出せない自分が気に障って、低賃金・長時間労働で分厚い月給袋を渡せずに 妻に申し訳なく、『顧客の声(VOC)』に不満が入り、会社に追及されても辞表を 投げつけて辞めることもできない悲しい人生に絶望する。業務能力の差でなく、 単に下請企業(協力業者)のAS職員だという理由で、本社の職員と較べれば、 どこかで「サムスンで働く」と言うこともできない。

「サムスン電子下請企業職員」として暮らし、自分の人生に率直に向き合えな い人々、感情労働者サービスマンのキム・ベソン、キム・ヨング、イ・ハクピン、 チョン・ウヒョン氏は、自分を「罪人」だと呼ぶ。

鼻毛が出ていると不満足、爪が長いからと不満足
「顧客と会社にひどくやられると一か月気持ちが揺らぐ」
果てしれない話...「33歳のチェ・ジョンボムはどうだったでしょうか」

掃除機の修理に行って30分間、胸ぐらをつかまれて出ることもできず、「ずる ずると言いなりになった」話、顧客に殴られ鼻血が出た話、顧客に言い返して 悪口と罵声が飛んできた話、酔った顧客の夫婦げんかに巻き込まれワイシャツ のボタンがみんな取れて製品の修理もせずに帰ったら、翌日酔いから醒めた 顧客が「製品も直さずに帰った」と悪口をあびせた話、限りも果てしもない。

夏季シーズンには佗びしさが押し寄せる。一部の顧客は汗にぬれたサービスマ ンに「臭い職員を送って不愉快だった」として「不満足」を与える。サービス マンの鼻毛が出ていたとして不満足、目やにがたまったとして不満足、爪が長 いとして不満足、腕の悪い技師がきたとして不満足、「牛泥棒のような人が修 理しにきて威圧感を受けた」として不満足を与えた事例もあると吐露した。

「あちこち移動して我を忘れて製品の修理をするのに、シャワーを浴びる時間 なんてありません。会社にシャワー室と休憩室があるわけでもないしょう。特 に、製品を修理しに行っても、なぜか違う所が故障していることがあります。 顧客は『あなたが触ったから故障した』と抗議します。全く関係がないのにね。 われわれは修理して故障させたら、嘘をつくことはありません。VOC処理されま すから。顧客と会社にひどく叩かれると一日や二日でなく一か月も気持ちが揺 らぎます。働きたくなくなります。われわれは無条件罪人なんです。VOCが入 れば、顧客を再訪問したり理由書を書きます。再教育を受けたという証拠を残 さなければなりません」

サービスマンが「辺境の地」と呼ぶ5つの地域(忠南、天安ビョンチョン、スシン、 城南面)は、庶民が暮らす町だ。この地域の担当者は、顧客から修理費用を受け 取れないことがたまにあるという。技師らは富村で修理する時と違い、庶民が 暮らす所に行くと気持ちが弱くなるのだ。顧客の修理費をサムスン電子サービス 本社に入金できなければ、技師の月給から控除される。

技師らはまた「先生や教授の顧客宅を訪問するのは予想外に大変だ」と笑う。 製品故障の原因をじっくり説明しなければならないが、一部顧客は「リポート を書き続けろ」と要求する。技師らは顧客が技術的な故障原因を100%で理解で きるように説明するのは「本当に難しい」とし、「私たちは安月給なのに、 本当につらい」と訴えた。

「同僚の中に年上の先輩がいます。顧客がその先輩に電話で抗議して悪口を言 いますが、実際に対面すると年上なので少しは気を付けますが。先輩は時々、 私たちにぽつりと『私がこの年になってもXXと非難されなければならないのか』 と言います。しかし33歳のチェ・ジョンボムはどうだったでしょうか。誰一人、 私たちを保護してくれません」

アフターサービス技術者のチェ・ジョンボム烈士は、協力業者のサムスンTSPの イ・チェグン社長から9月に激しい悪態と暴言を聞いた。VOCに不満事項が入っ たとして人格を冒涜された。顧客は冷蔵庫を修理する時、手を腰にかけたり、 製品を説明する時に片膝をついたとし、チェ氏に悪口を言ったという。

この事件で協力社の社長は4分ほどの電話の通話で「お前」、「このやろう」と いう言葉をチェ氏に浴びせた。不満を申告した顧客にも「顧客を捉えるなら、 犬のように捉えろ」、「ナイフで刺して殺してしまえ」等という放言をした。 人間の尊厳は一瞬で破壊される。

会社評価のたびに「気分が悪い」…「どうしようもない」評価項目
会社の一貫しない評価制度でブラックコンシューマーが優遇される矛盾

「親切」なイメージと態度は、サービスマンにとっては生存権だ。会社は各種 の評価制度でサービスマンに親切を強要する。サムスン電子サービス顧客応対 マニュアル(MOT)は、一種のサービスマン行動綱領だ。外勤エンジニアの場合、 名刺の渡し方、服装、謙虚な姿勢、原因結果の説明、徹底した時間遵守、目の あわせかた、挨拶など、12〜18種類ある。技師らはマニュアルを熟知して、 その通りに働かなければならない。

MOTを基準として顧客に満足度を問うサムスン電子サービスの「ハッピーコール」 で10点(とても満足)ではなく8点(満足)以下が一つでもあれば、労働者たちは 対策書を書く。労働者たちはブラック・コンシュマーからの防御権もないばかりか ハッピーコールを基準に実績を圧迫する会社の統制政策に苦しんでいる。

一例として、サービスマンは顧客の未収金を「親切」に受け取るために自尊心 を殺し、不合理なことにも反論できない。会社はこれを活用して顧客の未収金 をサービスマンに転嫁する。サービスマンは15分の製品説明と15分の修理で、 30分程働いても損失を最小にするために、製品説明15分間の無賃金を甘受する。 1件当たりの手数料で処理される不当な賃金体系に抗議できない。権力に順応す る習性が構造化している。

「親切が身につきました。負担です。本社が顧客満足(CS)教育をする時、声の トーンも『ソ』の高さにしろと言います。普段話す時と顧客に応対する声が まったく変わり、ご主人様に仕える奴隷のように電話します」。

「金も金ですが、一時間の修理して、30分顧客ともめて、会社から対策書を 書けといわれると、全身の力がすっと抜けます」。

サービスマンは評価されるたびに「気分が悪い」と話した。強要された評価は そのものが不愉快だ。また評価項目がとても多く「どうしようもない」という。 すべての評価項目で良い点数を受けるのは至難のわざだ。

「CS、MOT、未決率など、総体的評価のTQI手当てをもらうには、すべての項目 で95〜97点以上を取らなければなりません。完璧に働いてもTQI手当てもらうの は難しいです。不可能な手当てでしょう。事実上、会社がサービスマンに不正、 不良をやれと強要しているのです。もしTQI手当てをもらえば、該当技師は毎月、 毎年、自分を管理するようになります。息がつまって生きていられません。 TQI手当ては月10〜60万ウォン程ですが、60万ウォンをもらうのは至難のわざです」

特に会社は一貫しない評価制度で労働者の息を詰まらせる。一例として、会社 はわずか数年前までロス(LOSS、製品未修理)が発生すれば労働者の月給になる 手数料に入れなかった。だが今年7月、全国金属労組サムスン電子サービス支会 が設立され、会社は最近ロス1件当り7300ウォンに手数料を上げた。

会社は実績を上げるためにロスの件を最大限少なくし、顧客の抗議が深刻にな ればロスで処理しろという。ブラック・コンシュマーが厚遇され、ホワイト・ コンシュマー(善良な顧客を意味する)が損をする矛盾した状況が発生する。

「会社はロス率が高くてはいけないとし、そのたびに顧客から修理費を受け取 れと言います。しかし、ある日はロスで処理しろと言います。サービスマンが はっきりと整理してくれと言っても会社はしません」

本社職員年俸制、下請け職員1件単位の手数料…下請け職員が後処理
二重の「偽装」請負で本社、協力社が不利なら抜ける...責任は誰が?

サービスマンは、サムスン電子サービスの正規職のサービスマンと下請企業の 非正規職サービスマンの差別が深刻だと話す。もし本社職員が不十分な修理を すると、後処理は該当地域の下請企業の職員がする。本社の職員は1件当たりの 手数料賃金体系ではなく年俸制なので、相対的に製品未修理の負担が少ない。

「本社の職員は、顧客が過度な費用を負担する修理を避ける傾向があります。 同じ顧客の家に2〜3回訪問すると、先に本社の職員がきて仕事の処理をせずに 帰ると、私たちが製品交換、修理費用を顧客に請求します。すると顧客は私た ちに『泥棒』と怒り、本社の職員を呼ぶといいます。規定はすべて、サムスン 電子サービス本社が作り、サムスン職員ではないと投げ出して私たちが顧客に 非難されて修理費まで回収しなければなりません」

「例えば夏シーズンに本社の人員がきます。私たちが300万ウォンを受け取ると、 本社職員は600万ウォン〜1千万ウォン程受け取ります。シーズンがすぎて本社 の職員がいなくなると、協力社職員が非難されながら後処理をします」

ほとんどの顧客はサービスマンがサムスン電子の所属だと思っているが、サー ビス体系を知っている一部の顧客は本社と下請企業の差を知っているという。 この顧客は「本社の職員の方が頼もしく見える」という根拠で下請企業職員を 排除する。サービスマンの90%以上が下請企業の職員で、全国7つのセンター でしか本社職員は働いていないと言うと、顧客は驚くのだ。

サムスン電子サービス本社はわずか2〜3年前まで、下請企業サービスマン教育 の時に「顧客信頼」のために「サムスン電子職員」だと言えといったという。 本社管理者が直接きて下請企業の職員を管理した。下請企業の社長も不利に なると業務から抜ける。

「当時、本社のキム○○センター長は天安双竜センターの地下倉庫に私たちを 皆呼んで、30分から1時間ほど説教しました」

「天安センターのイ・ジェグン社長は、顧客との摩擦で技師と電話した時、 『社長』と呼ばずにセンター『所長』と呼べといいました。社長と呼ぶと顧客が 協力社に直接クレームをかけるためでしょう。自分が不利ならば抜けるのです。 誰も責任を取りません」

性格、姿、関係、全てが変わる...何が残ったか
サムスン下請労働者の人生と正面から向き合う

サービスマンたちは、性格、姿、関係など全てが変わったという。サムスン 電子の職員でもないのにサムスン製品を修理している間、まさに自分には何が 残っているのか疑がう。退勤して家に帰ると「親切な技師」は影も形もない。 近い家族にストレスをぶちまけ、後ろを向いて、自虐するようになる。

「よくお母さんに八つ当たりします。家では何もしたくありません。その上、 サムスン電子洗濯機が故障しましたが、直したくありません。冷蔵庫が冷えない というのですが、霜取りもしたくありません。家では私が働く姿を見せたく ありません」

「結婚したばかりの頃、ずいぶん妻とけんかしました。それで今ではあらかじ め『今日はクレームが多くて状態が良くない』と話して妻に了解を求めます。 ストレスが調節できません」

社会的な関係も狭まった。サムスン電子の二重下請け構造とAS業務特性を理解 してくれる人は同僚しかいないからだ。長時間・低賃金で昔の友人と会う時間 も、金もない。酒代さえ苦しく、わざわざ友人を避けたりもするという。

「生活が一定でないでしょう。言論報道では、シーズンの時はサービスマンが 何か月分もの金を稼いで借金を返すといいますが、借金を返せれば幸運です。 返せない方が多いです。40代の友だちは、会社の幹部だったり商売をしています。 われわれはまだ新入社員の月給です。業務の達成感がありません。運転の実力と 口がうまくなるばかりです」

最近、サービスマンらは新しい経験をしている。チェ・ジョンボム烈士と共に 闘争を始め、サムスン電子サービスセンターのサービスマンの現実がマスコミ の報道を通じて全国に伝えらされた。また「娘がお父さんの職業を恥ずかしく 考え」たりもして、妻の友だちが電話で『どうするの?』と心配するのだという。 それこそすっかり裸になって、サービスマンたちは下請労働者としての人生と 正面から向き合うことになった。「サムスンの職員」なら厚遇される世の中を 意識するより、率直な姿でサービスマンの人生を変えることを選択した。平凡 な庶民として静かに暮らすことはできなかったと豪快に笑いながらも、本当の 人生が何かを悟った人々が、崖っぷちで手を差し出している。

「下請け職員というのは恥ずかしいのでサムスン電子の正規職だと話しました。 今回のことで義母が心配そうな声に電話してきました。暖かい言葉に、堂々と 劣悪な労働条件で働く下請け職員だと話しました。振り返ってみれば、自分の 人生に率直でなかったんです。私たち自身が率直にならなければ、誰が私たち のことを考えてくれるでしょうか。国民にも率直に近より、必ずチェ・ジョン ボム烈士を良いところに送り、私たちの人生を変えます」

この企画はニュースミン、ニュースセル、メディア忠清、蔚山ジャーナル、チャムセサン、チャムソリの共同企画です。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2013-11-22 00:51:08 / Last modified on 2013-11-22 00:53:39 Copyright: Default

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