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投稿者:吉原 真次

戦後80年所感を読んで/植民地主義の肯定

 10月10日、石破茂首相(当時)は戦後80年所感を発表した。所感は戦後50年の村山談話、60年の小泉談話そして70年の安倍談話の歴史認識を引き継ぎ、安倍談話が論じなかった戦争を避けることができなかった理由として大日本帝国憲法、政府、議会、メディア、情報収集・分析の問題点を上げ、今日への教訓として政治家は無責任なポピュリズムに屈しない矜持と責任感を持つこと、メディアと議会は政府への歯止めの役割を果たすこと、そして歴史に学ぶ姿勢を持つことが必要だとした。

 所感を読んで私が最初に感じたのは植民地主義の肯定だ。戦争の歴史を語っているにもかかわらず、所感には日本が起こした戦争で推計1000万人もの人々が殺された「中国」、そして「アジア」という言葉は一切出てこないし、日本が大陸に進出した経緯も見えてこない。これはアジア・太平洋戦争が生み出した推計1900万人もの中国とアジアの戦争犠牲者を無視し大日本帝国の植民地主義を肯定するものだ。

 次に感じたのは歴史への無知。所感では様々な問題点を上げているが、戦争を避けられなかった真の理由は大日本帝国が侵略と戦争にしか活路を見いだせなかったからだ。

 明治維新からの国民への収奪による富国強兵、侵略と植民地支配による収奪が行き詰った結果、貧困と貧富の差が拡大して食事を採れない欠食児童、娘の身売りなどの深刻な社会問題が生まれたが、心ある少数の政治家を除く政治家はそれらの問題に真剣に取り組まず、問題がさらに悪化して戦争へとつながってゆく。

 最後に感じたのは国政をあずかる一人の政治家としての自覚のなさ。所感は歴史の教訓を踏まえた上で何に取り組むべきかを主張していない。1985年、西ドイツのワイゼッカー大統領は戦争の罪として�〃沙�的な罪、�∪�治的な罪、�F仔租�な罪、�し措�上的な罪の四つを上げ、�,虜瓩論鑒箸�処罰された時点で終わるがそれ以外の罪は罪の有無、老若いずれを問わず国民全員が過去を引き受けなければならないと述べた。西ドイツ、統一ドイツはそれに従ってナチスドイツの侵略を受けた国と協力し歴史教科書を作るなど、戦争を再び起こさない為の政策を採り続けてきた。

 一方の日本はドイツとは真逆。歴史教科書で「侵略」を「進出」と言い換えて侵略の事実を隠ぺいし、安倍は戦後70年談話でもはや謝罪をする必要はないと公言した。これは戦闘が終わった時点で戦争が終わり、戦犯が処罰されたことで戦争の罪が全て消滅したとする日本だけに都合の良い見解で、戦後80年を経た今もPTSDの日本軍兵士の家族の問題が解決されていないことを見れば、戦争の被害と影響が今も続いており、戦争を起こした国はそれを認め、問題が完全に解決されるまで正しい政策を採らなければならない。

 付け加えれば独立回復直後の1952年5月1日、日本政府は戦犯の国内法上の解釈を変更し戦犯拘禁中の死者を全て公務死、戦犯拘禁中の戦犯逮捕者を抑留又は逮捕された者とした。�,虜瓩気┐眛�本は償っていないことをアジア諸国は知っている。

 アジア・太平洋戦争での日本人の死者は約310万人、しかしアジア諸国ではその6倍以上もの死者が生みだされ、日本が引き起こした戦争によりアジア諸国には数々の深刻な問題が残された。荒廃した国土の再建の為に莫大な費用と時間が必要となり発展の機会が奪われたという事実を認めなければならない。認めたくない歴史的事実を直視せず、自分の都合の良いように歴史を改ざんすることは、アジア・太平洋戦争の犠牲者を生き返らせて再び戦わせるのと同じで犠牲者に対する冒とくに他ならない。                   余談となるが、私には今の日本がアジア・太平洋戦争前の日本と二重写しに見えてくる。自国通貨を切り下げてエネルギーや輸入食糧価格の高騰には目をつぶり、経済成長を目指す戦後の政策は破綻し、貧困と貧富の差が深刻になっているのに政府は従来の政策を一切変更しようとせず、それどころか高市政権は破綻したアベノミクスを悪い形で受け継ごうとしている。高市ではなくバカイチと呼ぶ以外にない。

 1998年から2024年の間に国内企業の経常利益は5、4倍に膨らみ、株価も上がり株主配当は9倍となったが人件費は12%しか増えていない。それどころか株価を上げるに為に黒字にもかかわらず1万人の人員削減を行うパナソニックのような大企業が続々と現れている。51年間も暫定という形でガソリンに対する二重課税を国民に強いながら、莫大な企業の内部留保に対する課税を二重課税だとして拒否する。コロナ禍による学校閉鎖で給食が食べられずに子供がやせ細っていく深刻な事例が報告されているのに、これまで貧困者に対する食糧支援は講じられてこなかった。

 政治腐敗も深刻で、少数与党に転落した原因となった旧統一教会とのつながりや裏金問題は解決されずじまい。自浄能力という生命維持装置をなくした高市政権は安倍政権と同様に政権維持の為に噓と公文書の改ざんを続けるに違いない。今、政府は外国人排斥を煽り国民の不満をそらそうとしているが、これは中国の抗日闘争を暴虐と非難した戦前の日本政府と同じやり方だ。                    (12月2日)


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