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LNJ Logo 2025春闘によせて(東海林智)「労働者にはストが必要だ」
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●2025春闘によせて

「労働者にはストが必要だ」

ジャーナリスト 東海林智

 彼女は地面を何度も蹴り、自らを鼓舞するようにして、震える声で叫んだ。
 「私たちがなぜストライキに立ち上がったのか。何の力にもならない、仲間を増やしてからやればよいとも言われた。私たちは1年ごとの契約更新があり、不満があってもそれが怖くて声を上げられなかった。でも、声を上げたい」

 2013年3月18日。ストライキに立ち上がった地下鉄の売店で働く労働者の組合「全国一般東京東部労組メトロコマース支部」の後呂良子委員長(当時)の発言だ。寒風の中、支援の労組が掲げる組合旗やプラカードに囲まれ、わずか6人の非正規の仲間が、声を上げた。その感動的な場面は今でも鮮やかに思い浮かべることができる。

 今から12年前の出来事を持ち出したのは、今月、医療労働者の京都医労連の中央委員会で講演したのがきっかけだ。25年春闘をどう闘うかの中でストライキ戦術に触れた。講演後、「ストライキの経験がない若い組合員にストライキとは何かを実感してもらうアイデアはあるか」と聞かれた。その時に、真っ先に頭に浮かんだのが、このストライキだった。幸い、彼女たちの行動は、ドキュメンタリー映画として「メトロレディーブルース―東京メトロ売店・非正規女性のたたかい」(26分、松原明、佐々木有美監督・ビデオプレス)にまとめられている。「どんなに理屈を語るより、このDVDを見てもらうのが一番効果的だろう」と答えた。

 彼女たちは、正社員と同じ売店の仕事をしながら、賃金に大きな差があり、退職金もない状況にがまんならず労組を結成。ストライキは、待遇面で差別しておきながら定年だけは65歳で正社員と一緒だという会社に、65歳を過ぎても健康で意欲のある者には雇用の延長を制度化することを求めたものだった。ストで一部制度化を勝ち取り、彼女たちはその後、差別是正の裁判闘争も闘う。

 13年ごろは、まさに「ストなき時代」で、正社員労組でさえストが消えかかっていた時代だ。そんな中で後呂さんの言葉と行動は耳目を集めた。

 「働いても働いても生活は良くならない。けれど、じっと手を見ているだけではだめなんだ。ストをすることで、『おとなしく会社にお願いすれば何とかなる』という(私たちの)幻想を打ち砕いてくれた。労働者にはストが必要だ」

ストを忌避する言い訳

 23.24年と春闘では高い賃上げが続いたとはいえ、まだ実質賃金はマイナスで推移し、物価上昇に追いついていない。全労連や全労協では、スト戦術は具体的に提起され、連合も「労働基本権にこだわる闘争」との表現にとどめていたストの記述を「必要な戦術設定の準備を進める」と一歩前に進めた形だ。

 そんな状況の中、今でも組合幹部の一部には「スト は手段であって目的ではない」という趣旨の発言を繰り返す人がいる。そう言いたい気持ちは分からなくはないが、そんな当たり前のことを仰々しく言って欲しくはない。今問われているのは、ストライキ権を真剣に考えようという提起で、無目的にストをうちまくれなんて誰も言っていない。スト権を忌避する言い訳はもうやめるべきだ。

 労働者にとってストライキ権とはどんな意味があり、どんな思いを込めるのか、紹介した作品はそのことを鮮明に描いている。機会があったらぜひごらんになっていただきたい。DVDはビデオプレス(03・3530・8588)などで発売している。

ビデオプレスHP


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