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労働運動は国境を越えた信頼に支えられて

レイバーネットTV190号(9/27)報告〈話し合いを求めることは罪なのか?−尾澤孝司事件「9.11判決」を考える〉

9月11日、新橋駅前で尾澤邦子さん、キムウニョンさんらと再会し、思わずハイタッチ! 尾澤孝司さんの一審判決の日だった。判決後に「放射能汚染水放流中止日韓市民徒歩行進」に参加していた。韓国サンケン解雇撤回闘争から数えて7年も経ち、いま彼女らは、2回の韓国サンケンの裁判闘争を共に闘った尾澤孝司さんの裁判を支えている。何しろ労使問題にせず、あくまでも警備法廷で裁判をしようとしていた意図は何なのか、見守っていきたい。(報告:笠原眞弓)

視聴アドレス:https://www.youtube.com/watch?v=SgdD6SOvyMw

企画・司会:尾澤邦子
ゲスト:上野真裕弁護士
    尾澤孝司 

◆韓国サンケン闘争と尾澤事件のあらまし

 ※韓国サンケンは、埼玉県新座市にあるサンケン電気の100%出資会社
・第1次サンケン闘争: 2016年の労働組合員全員解雇の通告に対し、日本への遠征闘争を行う。日本の「韓国サンケン労組を支援する会」と地元有志による「韓国サンケン労組と連帯する埼玉市民の会」がバックアップ
・2017年6月に解決し、職場に戻る
・第2次サンケン闘争:2020年7月に本社は突然韓国の会社の廃業をHPで発表
・日本では、引き続き「韓国サンケン労組を支援する会」と「韓国サンケン労組と連帯する埼玉市民の会」が韓国サンケンの労働者と連帯して抗議活動を行う
・2021年5月6日に韓国の慶南地方労働委員会から「和解勧告」が出される
・事件のあった5月10日の「埼玉市民の会」定例行動日に尾澤さんは「和解勧告」を携えて本社の責任ある人との面会を求め、門に向かう
・警備員に阻止され、押し合いになって敷地の外へ押し出される
・会社の通報により駆けつけた新座署に「暴行」容疑で逮捕され、警備員に対する「威力業務妨害」が付いて起訴され12月27日までの7か月半、異例の長期間勾留される
・裁判がはじまったのは昨年の2022年の11月。判決が出たのは2023年9月11日

◆判決文に書かれていたこと(解説は上野真裕弁護士)

判決主文「被告人を罰金40万円に処する。未決勾留日数のうち、その1日を5000円に換算して、その罰金額に満つるまでの分を、その刑に算入する。訴訟費用は被告人の負担とする」(朗読=後呂さん)

上野真裕弁護士も、この判決の罰金刑は意外だが、求刑にあった懲役を課すのはバランスが悪いと、このようになったのではないかと考察する。
判決理由には、尾澤孝司さん(以下孝司さん)が警備員にプラカード等で押して植え込みに倒れ掛かったことが暴行と認定されたのだが。
尾澤邦子さん(以下邦子さん)は、相手も同様に押していたので、納得できないと。

◆「威力業務妨害の成否」は成り立つのか

「威力」と「妨害」が生じたかが判断されたのだが、「威力」は、警備員と孝司さんの間で押し合いがあったことを「威力」とし、「妨害」は3人の警備員が対応したことが、業務妨害になるという理由が述べられたと上野さん。

◆この行為は「労働問題」対「労組からの委託がない」の対立

形式的に威力業務妨害に当たるとしても、その行為自体は「本社側に話し合いを求めて立ち入ったのであって、紛争解決の労使交渉の一つだから違法性はない」がこちらの主張。ところが、韓国サンケンの労組から本社との交渉を個別的に委任されていないから「労働問題ではない」との裁判所の解釈だった。

◆孝司さんは語る

判決には、2つの認識違いがある。
1つ、なぜ本社の門に近づいたかは無視され、いきなり警備員ともめたことになっていた。
2つ、韓国サンケンの労組委員のキムウニョンさんが裁判所に呼ばれて来日し、日本の市民と韓国の労組間の信頼関係の下、闘争をしてきたことを証言したが全く顧みられなかったこと。
また、判決当日韓国サンケンの労組員他、今闘争中の日系韓国企業労組などが来てくれたことも、自分にとって力になるし、労働者の国際連帯を実感させるようだった。

◆何を恐れる裁判所

邦子さんは、裁判の様子を呆れながら報告。
まず何度も大法廷でと要請したにもかかわらず無視され、44人傍聴席の中法廷で行われた。しかも警備員が出廷するときは大きなついたてを立て(スケッチを表示)、裁判長席から見えなくなる傍聴席を減らしたという。判決当日は、法廷の廊下に警察官が。訊くと、裁判所に応援を頼まれたと。邦子さんは、三権分立は一体どうなっているのかと、呆れる。

◆もちろん控訴です

無罪を主張していたが、1審は受け入れられなかったので、控訴したと上野弁護士。判決は残念な結果だったが、検察の言い分がすべて認められたわけではなく、懲役刑が選択されなかったことも事実。裁判所も検察側の主張を全面取り入れるのは妥当ではないと考えたのだと思う。ではなぜ無罪に踏み切れなかったのか。なぜ孝司さんがサンケン本社内に入ろうとしたかの妥当性については触れず、サンケンとの労使紛争なのに納得がいかないので控訴審で争いますと、きっぱりと宣言。

◆労使問題の解決後、会社は裁判所あてに嘆願書をかいた

韓国側の労組役員キムチニョンさんとのオンライン(通訳:安田幸弘)がつながる

尾澤さんへの判決は、ひどいものだった。資本の側が行った犯罪なのに、支援者を犯人にしていて不当なもの。
尾澤さんの逮捕後、韓国では労組と韓国サンケンとの間で和解が成立した。その時、韓国サンケンの代表理事が裁判所に嘆願書を書いた。そこには、尾澤さんの行動は、韓国サンケンと労組の争議過程で起こったと明示していた(それについては、裁判所は触れていない)。
労使の交渉の一部であったとする明確な書類がなかったと、裁判所が尾澤さんの立場を認めなかったことは、残念だ。
尾澤さんと私たちは長年の闘争を共に闘ってきて、労組問題の先輩でもあり、家族のような、父のようでもある存在だ。
今回はコロナのために会社の前に行くことは出来なかったが、自分たちの声を私たちに代わって会社に伝えてもらっていると話したことがある。
私たちの所属する民主労総は、120万人の組合員を持つ韓国の最大の組織だが、これまで外国人に感謝の盾を贈ったことは一回もなかったが、今回尾澤孝司さん、邦子さんに感謝の盾を贈った。設立30年の歴史の中でとても意義のあることであったと裁判の中でハッキリ証言したが、それを判決に取り入れなかったことは、腹立たしく、不当だと糾弾したい。

◆次々起きる日系韓国企業の労組の闘い

韓国の安山市でワイパーを作っているデンソーが親会社の「韓国ワイパー」の闘争を紹介する。愛知県にある「デンソー」が親会社だ。「韓国では、耐えられないほどの無念に対して、最後まで闘うという決意を表わすのに剃髪がある」と剃髪の分会長が写る。2011年に韓国ワイパーを整理すると280名が解雇対象になる。労使協約書には「会社廃業の時には、労使と合意する」とあるので、株主総会の時期に日本の親会社デンソーに対して12日間の日本遠征闘争をし、8月に労使合意で再雇用支援事業をすることで解決した。
この闘争を支えているのは「同志」であり「万国の労働者よ、団結せよ」で、そのことの大事さをこの闘争を通して知ったという。
現在は大阪に本社のある日東電工が100%出資の韓国オプティカルハイテックという会社が、火事になって1か月後に会社を閉めると社員を解雇した。現在闘争中である。そんな中での孝司さんの裁判である。その点をウニョンさんに聞く。
これまで日系企業に対する様々な闘いがあったが、労働組合が出来て力を持ってくると以前は国内から資本を引き揚げていた。韓国サンケンなどは配置転換などで、十分に吸収できたのにそれをせず、解雇した。サンケンやデンソー、日東工業などは、資本の利益のために労組をつぶして韓国で事業を続けている。これに対して日韓の労働者が共に闘う国際連帯の成果もあった。

◆控訴審への思い

孝司さんは、1審は韓国はじめ多くの人に励まされてきた。これからも日系企業の問題が、各地で起きるかもしれないけれど、ともに闘っていきたいと思う。
邦子さんは埼玉の文化活動グループ「ゆいの会」が作った素敵な韓国サンケン労組員の似顔絵などで、一緒に門前闘争をした気持ちになれたし、文化活動のすばらしさを紹介しました。

◆闘争を支えていた地元の市民の会のしろたまさん、後呂さんの一言

しろたまさん→埼玉の恥ずべき企業、警察、検察、裁判所の三権分立どころか一体の恥知らずを粉砕すべく、これからも共に闘っていきたいと、元気よく決意表明した。

後呂さん→第2次闘争の時、韓国から来られないと知り、それなら私が代わりにと2年間やってきた。これは労働争議なので、無罪を勝ち取りましょう。

◆質問コーナー

・埼玉法廷は警備法廷だったが、東京高裁に行っても警備法廷は引き継がれる可能性が高い。このような微細な事件が、ヤクザやオウムなどと同じ警備法廷で裁かれる可能は?
・答:東京高裁がどのような取り扱いにするかまだ分からないし、質問の答えとずれるが、1審の時に現場の映像を流していてそれが被告、弁護士はモニターで見たが、傍聴席では見られない。それは「裁判の公開」に反するのではないかと思っている。控訴審でも言いなりにならず、我々が声を上げ続ける必要があると思っている。

・孝司さんに質問。韓国サンケンのウニョンさんが「お兄さんであり、お父さんであり、強い信頼を持っているということだったが、孝司さんから見ての彼らはどうでしたか?
・答:ありがたい言葉です。でも逆に韓国の労働運動がなぜ頑張れるのか、なぜ強いのか、直に接して学べてよかった。例えば「あきらめない」ということ。会社の廃業は大概労働側が負けるのに、あきらめないで闘いを続けていくところなどだという。会社も日本まで来て毎日門前闘争を続けるとは思わなかっただろう。そのことで、日本でも支援が広がったし、学ぶべきものが多かった。

・お知らせ:KBSTVが韓国労働者の日本遠征闘争を支援してきた尾澤孝司と邦子に密着取材してきたが、12月に韓国で放送される予定。間に合えば、レイバーフェスタで紹介する。

◆ジョニーと乱の5ミニッツ

ジョニーHの替え歌 裁判長の名前を織り込んで不当裁判を暴く
川柳:たたかいの中に友あり明日があり 乱鬼龍
   法服の汚れもキャリア静粛に 笑い茸


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