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LNJ Logo 米国労働運動 : UPS社のチームスターズ労組 二層賃金撤廃、パート賃金引上げに向け、協約批准投票中
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【解説】8月1日から予定されていた物流最大手のUPS社でのストライキは回避された。ストライキを背景にチームスターズ労組は協約改定交渉を果敢に展開し、UPS社から画期的な譲歩を勝ち取った。二層賃金を撤廃させ、パート賃金の大幅な引き上げを実現するなど、組合員間の賃金差別を縮小した。この暫定協約案は現在全組合員による批准投票に掛けられている。投票結果が出るのは8月22日である。現在交渉が行われている自動車ビッグスリーの協約改定でも二層賃金の撤廃が焦点となっており、UPSでの勝利がどう影響するか注目されている。(レイバーネット国際部 山崎精一)*毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。
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UPS社のチームスターズ労組
二層賃金撤廃、パート賃金引上げに向け、協約批准投票中

2023年7月27日 アレクサンドラ・ブラッドベリー

*7月13日、フィラデルフィアでのピケ演習。「公正な協約のために訓練しているだけ」

 ストライキ期限まであと1週間となった7月25日、UPS社とチームスターズ労組は暫定合意を発表した。8月1日にストライキは行われない。

 ストライキの脅しが効果的だったのは明らかだ。UPSがこの協約の履行に必要な金額は、前回の協約より300億ドルも多くなると組合は計算している。

「この協約は、アマゾンとウォルマートとターゲットに、チームスターズ労組がここにいることを示し、変化が起こっているので注意すべきこと、賃上げを始めるべきことを示めしている」と、交渉チームの一員であり組合本部信託管理人であるニューヨーク市のローカル804のヴィニー・ペローン委員長は語った。

 暫定協約の全文はこちらで読むことができる。
https://assets.nationbuilder.com/teamstersforademocraticunion/pages/12952/attachments/original/1690400438/UPS-Teamsters-Tentative-National-Master-Agreement_Blueline-072623_%282%29.pdf?1690400438

 UPS組合員は8月3日から22日にかけて、この協定を批准するかどうかをオンラインで投票する。

二層賃金撤廃

 前回の協約22条4項に定められている運転手の二層賃金が廃止された。これは全国の労働運動に大きな影響を及ぼす勝利である。協約が批准されると、すべての二層賃金運転手は直ちに一層運転手に転換される、つまり正規の貨物運転手となる。

 改革派が率いるようになったもう一つの労働組合である全米自動車労組は、ビッグスリー自動車メーカーとの協約改定交渉を開始したばかりであり、UPSでの二層賃金撤廃は良い前例となる。自動車製造工場では、二層賃金の撤廃は人気の高い要求である。

大幅賃上げ

 UPS協約交渉の最終週で争点となったのは、労働者の大多数を占め、倉庫内での荷積み、荷降ろし、仕分けの大部分を担うパートタイマーの低賃金だった。

 現在、パートタイマーの初任給は時給15.50ドルで、一部の地域では雇用を促進するための「市場レート調整」によって調整されているため、パートタイマーは賃金は地域によりバラバラである。初任給は過去40年間で7.50ドルしか上がっていない。

 今回の暫定合意では、新規採用のパートタイマーの初任給(および全パートタイマーの最低賃金)は21ドルとなる。協約期限末の5年後には23ドルに引き上げられる。

 現在働いている労働者は、さらに大きな賃上げを受けることになる。フルタイム労働者もパートタイム労働者も、5年間で7.50ドルの賃上げを受ける。しかも最初の一年で2.75ドル引上げである。(パートタイマーは2.75ドルか時給21ドルのどちらか高い方)。現在働いているパートタイマーは5年後には25.75ドル以上になり、これから採用されるパートタイマーはそれまでに23ドルになる。 パートタイマーの約3分の1は5年以上働いている。これらの長期勤続者は、5年以上で時給50セント、10年以上で1ドル、15年以上で1.5ドル、長期勤続割り増しが加算される。

 市場レート調整は引き続き会社の裁量に委ねられるが、市場レート調整の適用を受ける組合員も、新協約による昇給を受けることになるが、これまでは適用されなかった。

 組合は、この協約が承認された場合、さまざまなカテゴリーの労働者が協約期間中に得られる昇給を示す賃金例をいくつか示した。

https://assets.nationbuilder.com/teamstersforademocraticunion/pages/12952/attachments/original/1690400444/Wage-Examples_UPS-Teamsters-Tentative-National-Master-Agreement.pdf?1690400444

 この協約によりハートタイマーの中の新しい賃金差別が生まれることになる。2023年8月1日以降に採用されるパートタイマーは、それ以前に採用されたパートタイマーに追いつくことはないためだ。しかし、これは異例のことだ。通常、二層賃金は既存の労働者が自分たちの賃金水準を保ち、新規雇用者は失う、という譲歩を意味する。しかし、今回の場合、新規採用者は賃上げを受け、既存労働者はより大きな賃上げを受けることになる。

 組合はまた、チームスターズ・UPS年金に加入している中部・南部地域のチームスターズ労組員6万人の年金受給額を毎月1,000ドル増額することも勝ち取った。その他の年金は現行水準が維持される。

フルタイムの仕事

 パートタイマーは1シフトにつき3時間半の勤務しか保証されていない。今回の協約では、15,000人分のパートタイム雇用を組み合わせることによって、7,500人分の新しいフルタイム雇用を創出することをUPSに義務付けている。

 以前の協約には抜け穴があり、組合幹部はフルタイムの雇用を獲得したと自慢しても、UPSは実際にはその雇用を作らずに済んでいた。フルタイム雇用を新たに相当数獲得したのは、2002 年以来今回が初めてである。

労働条件

・監視カメラ:  運転席に向いたカメラや音声・映像記録装置は設置されない。外向きカメラは許可されるが、懲戒のための監視に使用することはできない。多くの新車に搭載されているような、車線をはみ出したり追い越したりするとビープ音が鳴る「運転者向きセンサー」は、漫然運転警告音を発する目的でのみ許可される。これらの警告は、30日間の訓練期間中、「コーチング/カウンセリングの機会を特定する」ために使用することができる。期間終了後はセンサーのデータは収集できず、懲罰に使用することもできない。 ・酷暑対策: 5年間の協約期間中に配送車両の約3分の1が新型トラックに切り替えられるが、そのすべてにエアコンが装備される。トラックの更新の際には、全国で最も暑い地域を優先する。

 既存の配送トラックには30日以内にファンを1台、来年6月までに2台目を設置する。また、18ヶ月以内に排気熱シールドと空気導入口を後付けすることになっており、どちらも新車に標準装備される。 労使で小包貨物車熱対策委員会を設置し、床断熱材の追加などトラック内の温度を下げる方法を検討する。

 倉庫内の酷暑対策としては、十分な飲料水、製氷機、18,000台の新しい扇風機、2,500台の新しい水飲み場、新入社員が過酷な状況に慣れるまでの最初の1週間は仕事量を低減することにUPSは同意する。

その他には? UPSはトイレ以外に搾乳専用の場所を提供することに同意する。

 この協定はまた、ハラスメント、過度の強制残業、監督者が行う現場労働に関する苦情申し立てに対して雇用主が支払う罰金を引き上げる。例えば、監督者が組合員の仕事を行った場合の罰金は、その従業員の時間給の3倍から4倍に引き上げられる。これらの高い数字は、UPSが日常的にこの種の罰金を支払い、協約違反を続けている事実を反映している。

・ハラスメント: UPSは、事故や負傷でないのに、監督者が運転手に同乗する場合は24時間前に通知し、理由を述べなければならなくなる。

勤務スケジュール

 暫定合意によると、UPSはいかなる荷物運転手にも、予定された休日に働くことを強制できない。荷物配送運転手の労働日は、月曜日から金曜日、または火曜日から土曜日と規定されている。2019年8月1日以前に採用されたドライバーは、土曜勤務を強制されることはない。それ以降に採用された運転手の週労働日は入札により決まる。二層賃金だった運転手は、月曜〜金曜のルートの空きがない限り、自動的に火曜〜土曜勤務となる。

 しかし、この暫定合意により、UPSは週7日間の配達業務に移行することもできる。まずUPSは、影響を受けるローカルとチームスターズ本部と新しい労働時間について話し合い、意見の相違は仲裁人によって決定される。

 マーティン・ルーサー・キング・デーが休日として追加される。

下請け化

 トラクター・トレーラーでUPS施設から別の施設へ荷物を運ぶフィーダー運転手にとって、仕事の下請け化を制限することが大きな問題だった。暫定協約では、組合員のフィーダー運転手の時間外労働を回避するために下請けを利用することはできず、資格のある組合員のフィーダー運転手がいる場合、またはレイオフ中の場合、下請けを利用することはできない。 同様に、配達運転手は、個人車両ドライバー(繁忙期に自分の車で荷物を配達する、一種のウーバー化のような臨時ドライバー)の排除を望んでいた。これまでの協約では、荷物専用車の運転手に自家用車で配達することを強制することはできないとされている。しかし、UPSは非組合員の個人車両ドライバーを雇用してきており、組合員の運転手が希望する労働時間を奪ってきた。 今回の協約により、個人車両ドライバーの使用は1年のうち11月15日から12月26日までの5週間に制限される。UPSのパートタイマー運転手は、すべての個人車両ドライバー業務に優先的に従事することができ、8時間勤務が保証され、賃金は通常のパート賃金または配送運転手の初任給のいずれか高い方の賃金で働くことができる。個人車両ドライバーは通常の運転手からルートや超過勤務の機会を奪うことはできない。

 UPSは、6ヶ月前に通知し、効果について交渉した上で、ドローンや無人車両を使用することが認められる。

協約の履行が必要

「この協約で勝ち取った内容を実現するには、組合員と組合が闘わねばならない」とペローンは言う。UPSは賃上げを実施するだろうが、合意されたフルタイムの新規雇用の創出、過剰な超過勤務に対する罰則の強化、新しい酷暑対策の実施、搾乳室の設置、その他すべてを本当に履行させるには、組合の戦闘力が必要だ、とペローンは言う。

「すでに、そのための方法を検討し始めている。協約上の利益を水泡に帰させないために、毎月特定の重要課題を取り上げている。私たちは集中し、戦闘的でなければならない」。

「組合員が協約改定キャンペーンで培ったエンパワーメントと戦闘力が、管理職のハラスメントとの闘いを強化する上で鍵になると考えている。ハラスメントに対して苦情申し立てするだけではなく、SNSでも発信していく。こういうことが新聞やソーシャルメディアにたくさん出てきており、UPSはそれを嫌っている。あらゆる面でUPSに圧力をかけ続けなければならないだろう」。


Created by staff01. Last modified on 2023-09-01 16:07:42 Copyright: Default

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