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●レイバーネットTV「小出裕章さんに聞く〜「原発回帰」ホントにいいの?」を観て

科学者というよりむしろ哲学者

黒鉄 好

放送アーカイブ(100分)

 小出さんの講演会には何度か参加しています。話を聞くたびに思うのですが、すぐに数値の話に持って行きたがる御用学者と違って、小出さんのお話は「人間として我々はどのように生きるべきか」を説いていて、科学者というよりはむしろ哲学者のようです。

「いつ死んでもかまわない」という小出さんの死生観には強い共感を覚えます。3.11を福島で迎えたとき、私自身も「ああ、これで自分は死ぬんだ」と思ったからです。私もスピーチや講演を依頼されたときは「原発の電気を使うくらいなら死んだ方がマシだ」と発言し続けてきました。3.11以降の12年間、「今日が自分の人生最後の日になっても恥ずかしくないように生きよう」と思い、それを実行してきました。カネのために原発を動かし続けようとする人たちに小出さんや私のような覚悟があるようにはとても思えません。

 ウクライナ戦争で未曾有のエネルギー危機に直面しながらも、ドイツは4月15日限りで原発を卒業します。メルケル政権に脱原発に踏み出すよう助言した「脱原発倫理委員会」の筆頭委員は社会学者ウルリッヒ・ベックでした(「危険社会〜新しい近代への道」というベックの著書が日本語訳されています)。ドイツでは原発が「安いか高いか」や「エネルギーとして有効かどうか」ではなく、倫理や道徳の面から原発の是非が話し合われました。議論の結果、ドイツが選び取った結論は「倫理、道徳に反する原発は廃止すべき」でした。

 原発は倫理、道徳に反している−−この点での国民的合意を形成できたからこそドイツは脱原発を実現できたと私は考えています。未曾有の事故を起こした原発を反省もなく再び「最大限活用」するなどと寝言を言っている日本と、原発を倫理、道徳に反する電源と認定し、苦しいエネルギー事情の中でも脱原発に踏み出したドイツ。この違いはどこにあるのか。

 ドイツにあって日本にないもの−−それは「哲学」だと思います。人としてどうありたいか。日本はどんな国を目指すべきか。国際社会でどんなポジションを占めたいか。そんな大局的な議論を日本人がしている姿を、私はもう何十年の単位で見ていません。目先の課題も大切ですが、日本が滅亡の淵から脱したいなら、哲学を持つべきです。小出さんひとりにその役割を負わせるのでなく、私たちひとりひとりが「人間として我々はどのように生きるべきか」を自問自答し、他人にも回答を迫るべきです。その上で、原発をどうすべきか問うならば、答えはしかるべきところに落ち着くと私は信じます。

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