●市民連合千葉4区の新春の集い―100年前の新聞の話（講談）と現代の新聞記者の講演（2022/1/30　船橋市市民会館）報告

2021衆院選「小選挙区では野党共闘をしたから勝利した」〜希望感じた東海林さんの講演

笠原眞弓

　2021年秋の衆院選直後に、世の中は「野党共闘には力がない」「野党共闘は大敗北だ」という風が大荒れに吹いた。一方「イヤ待てよ、本当にそうだろうか」「冷静に分析してみよう」という風も、微風ながら起きてきた。実際、このままの比率では、参議院選で負ければ怒涛の如く改憲に進む。何とかしたい。

　そこで、冷静な分析をしようということになり、毎年開催している新年の集いに、甲斐淳二さん（講談師・神田香織一門）の新聞を主題にした講談「三面記事の由来と非戦の源流～明治のジャーナリスト奮闘記」と「毎日新聞」の労働問題記者の東海林智さんに講演をお願いした。講談は、日露戦争前の世相と幸徳秋水、堺利彦らの抵抗の奮闘記で、これは戦争の足音の聞こえ始めた現代に似て、ぐいぐいと引き込まれていった。2題ともすばらしい内容で、あっというまの2時間だった。

　東海林さんは「新潟支局時代に、前回の参議院選挙と地方選挙などを政治部記者としての捉われた目ではなく」とご本人が言うように、一新聞記者として丁寧に取材し、鋭く分析していた。東海林さんのお話をかいつまんでいえば、「秋の選挙で大勝利をしたのは、野党共闘である。だから保守派は危機を感じて、野党共闘の敗北を大音量で流した」のである。それは、自公は利害関係だけでつながっているから、非常に弱いからである。つまり、3年前の参議院選ばかりでなく知事選などの地方選挙、この前の衆院選の分析をすると、共闘したから勝ったことが分かるということだ。

①小選挙区では野党共闘が勝っている

②比例では立憲が負けている
　政党投票の比例では、その政党が日ごろ何をしていたかが問われる。そういう意味で立憲は何もしていない。今後立憲の総括で、共産党との共闘のために負けたと言ったなら、それは連合にいわされていること。他の野党を貶める総括は認められないと地元の人が言っていると言い切った

③比例で民主が勝ったように見えるのは、立憲も国民民主も略称を「民主」にしたため100万ずつ票を分けたから。国民民主は、共闘の仲間には入れない。共闘していないから。

④連合は共産党と同じ空を見ないと言っていたが、連合が労働者のためのものなら、同じ空を仰ごう。場合によっては、連合は市民に見捨てられた方がいいかもしれない。

⑤勝利経験が、今後の勝利に結びつく
　新潟県の共闘は選挙区の定員が2人区から1人区に減った6年前に始まった。ともに闘ううちに、他党の人たちへの信頼が生まれたり、周りの人も一緒に戦わないと、原発が動くなどと思うようになる。

「勝っている限り信頼が生まれ、勝ち続ける。負けると疑心暗鬼となる」

　聞いているうちに、どんどん気分が高揚し、今度の参院選も共闘さえうまくいけば、必ず勝てると思えてきたのだった。選挙も、まず、気を高め、勝利を信じることから始めなければならないと思った。

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＊上記の記事に関して質問がありました。東海林さんの回答をあわせて紹介します。

質問

　私は、東京12区：北区で野党共闘に関わってました。共産党の池内さおり候補です。国民民主も立憲民主党も候補者を立てませんから、独自のかなり強固な野党共闘候補となりました。立憲民主党はかなり応援してくれました。山本太郎さんも応援に来てコラボしました。結果ですが、公明党、維新にも抜かれて三位惨敗です。比例復活も出来ません。これは党内順位のせいですが。だから、野党共闘で勝利という図式が理解出来ません。立憲民主党候補を共産党が応援するという図式でしかみていないのかと思います。共産党候補を立憲民主党が応援するという図式はどうなのでしょうか。野党共闘はそんなに強力だったのでしょうか。（S）

質問に答えて（東海林記者）

　先週の講演は時間が短かったので、はしょったのですが、千葉の他の市民連合では指摘している点があります。それは、「野党共闘をうたうのであれば、小選挙区で共産党や社民、れいわの候補が１つでも勝てる状況を作らなければならない」との指摘です。共闘は決して、立民のためだけでも立民に奉仕するものでもない。そこは一番支援を受ける形である立民が自覚的であるべきだとの意味です。片肺の共闘が長続きしないのは、どう考えても当たり前であり、例えば、この方が言っているような東京１２区や谷川の選挙区など、共産が自信を持って立てた候補のところへはシンボルとして立民が全力を傾注して勝ちに行かねばならないところだったでしょう。立民はそこに無自覚であったかもしれない。いや、そうした意識はあり、現場レベルではそれなりの盛り上がりはあったと思います。しかし、連合東京が１２区で公明候補を支持したように、共闘を恐れるグループからの妨害が入りました。彼らは、公明が共産に負けるようなことがあれば、全部ひっくり返されるとの恐怖から死にものぐるいでした。そこをきちんと見定めて闘わないとならなかったのだと思います（共闘側が）。池内さんが、維新の候補に負けたのはちょっとびっくりしましたが、維新の全体的な勢いと共に、前述した連合東京の動きがあったことは無関係ではないでしょう。共闘側は１２区の闘いを少し甘く見ていた（自分も含め）かも知れません。共産の候補が単独で立った時と共闘で立った時にどのように票が増減したかは、レイバーの方は調べてみたらいかがでしょうか？その上で野党共闘には効果がないというなら、また、お話しましょう。数字的な問題は別として、僕が先日の講演で時間の関係ではしょってしまったのは、共闘を深化させるには、立憲が一つでも良いから共産や社民の勝ちを作るべきであったということです。
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