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衆院選結果・重大なメディアの責任

2021年11月01日 | メディアと日本の政治・社会

    

 31日投開票の衆院選は、自民党が単独で過半数(233)を超えて安定多数(244)以上を維持し、自・公で絶対安定多数(261)を確保する結果となりました。いつ自民と連立してもおかしくない日本維新が大きく議席を増やしたことも軽視できません。

 検証しなければならないポイントはいくつかありますが、全体的特徴としてまず指摘しなければならないのは、メディアが果たした重大な否定的役割です。

 今回の選挙に対する自民党の戦略は、コロナ対策や東京五輪強行などで支持率を大きく落とした菅義偉首相を降ろし、岸田文雄首相で目先を変える擬似政権交代を演出することでした。そして選挙で苦戦が予想される議員を新入閣大臣にし、地金が表れないうちに、予定を前倒しして早々に選挙を行うことでした。

 結果は、その思惑通りになったと言わねばなりません。

 大臣ポストの効果が典型的に表れたのが、沖縄4区です。
 接戦が予想された同区で、自民党の西銘恒三郎氏が当選しました。西銘氏は岸田内閣で初入閣し、「沖縄北方担当相」に就任しました(写真右)。

 西銘氏はこの肩書をフルに使いました。選挙区内の与那国町では選挙期間中の10月28日、役場の前で「大臣就任激励会」を開くという、選挙違反まがいのことまで行われました。西銘氏は自身のツイッターで、「与那国島で大臣就任激励会に出席」と書き込みました(10月29日の朝日新聞デジタル)。

 広島3区も同様です。河井克行元法相の買収事件で自民党にとって逆風のはずの同区で、自民党が推薦した公明・斉藤哲夫氏が圧勝。斉藤氏は岸田内閣で国交相に就任。豪雨災害の爪痕が残る広島で、斉藤氏は「私が(防災の―引用者)国の責任者だ」(10月27日付中国新聞)と強調し、国交相の肩書を書いた名刺をばらまきました(写真中)。

 大臣就任を利用したこうした選挙活動は、大臣ポストの党利党略的利用にほかなりません。

 しかしこうした自民党戦略は、強力な援軍なくしては奏功しなかったでしょう。その援軍がメディアでした。

 メディアは総裁選から岸田内閣成立まで、自民党の報道に終始しました。総理・総裁の交代であたかも自民党の政策・路線が変わるかのような幻想を与え、自民党の擬似政権交代戦術に加担しました。また、衆院解散で「1週間内閣」になることが分かっていながら、「新大臣」をクローズアップする報道に終始しました。それは沖縄県紙も例外ではありませんでした。

 こうした報道が、選挙区での具体的な効果以外にも、全国的に有権者の関心を自民党へ向け、逆風を和らげる役割を果たしたことは間違いありません。

 それは「不偏不党」どころか、自民党を大きく利する偏向報道と言わねばなりません。国家権力に迎合する日本のメディアの劣化を象徴的に示すものです。

 今回の選挙は、そうしたメディアの報道が重大な政治的結果を招くことを示したものです。メディアは猛省しなければなりません。

 


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