レイバーネットTV 第164号(2021年11月17日放送)<特集:日本の農業がなくなっていいのか!〜コメ大暴落と「貧民連合」> 日本の食糧庫がなくなる!「ゆでガエル」でいいのか 報告 笠原眞弓 日本の戦争中から今までを振り返っても、農村はいつも人材の提供場であった。戦中は兵 士として駆り出し、戦後は食糧増産要員として復員兵を開拓に送り出したうえ、出稼ぎと 集団就職で、都会の人手不足を補った。そして低成長時代に農産物は外国から買うからと、 農家をないがしろにしている。そしい今、米価の下落に途方に暮れる農村である。 都会の私たちも農村にさして関心を寄せていなかったが、山形の菅野芳秀さん、新潟の天 明伸浩さんから農村の現状を伺うにつけ、真剣に考えなければならない課題だと思った。 今後「なぜ国は農村の窮状を放っておくのか」というテーマでも話し合いたいと思った。 視聴サイト:https://www.youtube.com/watch?v=sKr3p-eHX_Y(特集は30分から) 進行:北健一・北穂さゆり ◆今月の1枚(レイバーネット写真部): 写真はTomotarouさん。コロナ疲れの風景 トップにちょっといいニュースが紹介された。 ��145号「この「働き方」おかしくない?〜名ばかり「事業主」の現実」で紹介した八木 橋修(全国一般三多摩労組日本テクノ分会)さんが、日本テクノ社から救済命令を勝ち取 った。 ��163号で取り上げた甘利明さんが小選挙区で落ちた。とはいっても、比例復活はしたが。 ◆サブコーナー: 「ミサイル基地はいらない!石垣島取材レポート」 ゲスト:湯本雅典さん(映像ジャーナリスト・作品に教員問題、福島、選挙がある。こ こ数年は沖縄、特に石垣島の自衛隊基地問題に焦点を当て、最近3作目『島がミサイル基 地になるのか 若きハルサーたちの唄』を完成) この10月21日に石垣島に行き、2年前に基地建設工事が始まっているのに、進行は遅れ 気味という。 ●石垣島の自衛隊基地ができた経緯と阻止運動 2015年に若宮防衛副大臣が石垣島に来て、島の真ん中に基地を作ると市長に申し入れた 。そのことは、島の人も新聞で初めて知るという状態だったと国の横暴ぶりと、市長が次 第に国にからめとられていく様を語る。決定的なのは2018年の市長選挙後で、勝利したと たんに、ハッキリと受け入れを表明する。選挙戦の中で、国からの何らかの借りを作った のかと、私は勘ぐってしまった。 その後の市民の反対運動に一切耳を貸さず、いまだに裁判で闘っている。 基地は高校の実験林に隣接し、沖縄では珍しく水が豊かな島で、そのため池のすぐわきを 重機が掘り返している様子が、映し出された。 湯本さんは、地方自治とは何なのかと思うという。 ●分断を克服したい 「住民投票を求める会」の若者がその目的を語る。小さい島で意見の違う人との分断が生 じている。分断を解決する手段としての対話、そのための住民投票だという。その会の中 には、賛成派も反対派もいて、対話を重ねているという。そこに湯本さんの琴線に触れる ものがあったと。 ●本土で出来ること では、本土の人たちができることはあるのか? 「野党共闘で保守を落とす」 現地に行くことも大事。だが東京でやれることもある。例えば先の若宮防衛副大臣は東京 5区。今回の総選挙で野党共闘に敗れて落選している。これは大きなことだ。 ●全国の基地での反対運動 琉球弧の日米合同練習ばかりでなく日本全土に及んでいて、横田や木更津での基地反対運 動は、とても重要なこと。今後の総選挙でも、そこにピントを合わせていくこともできる。 最後に、湯本さんの新しい映画『島がミサイル基地になるのか 若きハルサーたちの唄』 の予告編が上映された(ハルサーとは、農民の意味)。 ◆ジョニーと乱鬼龍のホットスポット ジョニーHさんの歌は、コミカルなお米の歌。 今日の名句は 農の明日地球の明日と重ねあい 乱鬼龍 ◆特集:日本の農業がなくなっていいのか!〜コメ大暴落と「貧民連合」 ゲスト 大野和興(農業ジャーナリスト) 菅野芳秀(山形 農民)Zoom参加 天明伸浩(新潟 農民)Zoom参加 コーナー司会 笠原眞弓 今回は、菅野芳秀さんから、お米の値段が採算ラインの半値近くになり、農家がいなくな るのは時間の問題だ。そのことを都会の人と一緒に考えたいとの提案があり、企画された。 ●米価の値崩れが半端ない現実 大野和興さんが図を示しながら2010年からの10年間の米価の変化を丁寧に解説する。 2014年に1俵(60キロ)1万円を切り、その後徐々に持ち直して2019年には11687円となる が、21年は9000円と一気に落ち込む。これは、コロナによる外食産業の不振により20年度 米の米余りに、今年度の新米が流通し始めたからと分析。 しかも、大問題は米価が生産コストのおよそ半分になっているという。 1995年の米などの自由化に伴って食管法がなくなってから、確実に下がり続けていたが、 今度の事態になった。政府はこのままでいいと思っているのか、何の手も打とうとしない 。ということは、21年度から22年度に掛けて、確実に耕作面積は急減すると予想する。 ●農業機械の更新時が決断の時 しかし手放す農地を受けとる人がいない 菅野芳秀さんは稲作40ha、放牧養鶏の循環型複合経営をしている。一般的な農村の「いい ものは都会へ」ではなく、まず地元が食べその残りを地域外に売るという考えを基本的に 、農薬と化学肥料を使わない農業をしてきた。今は38歳の息子が菅野家の農業ばかりか、 消防団はじめ地域活動も中心になってやっている。周りには彼のような若い農家はいない とか。 鶏の飼料代など経費が上がりだしたが、その分を上乗できる経済力が村の人たちにはない。役立つのは鶏糞(肥料にする)だけで、それでは生活ができない。 ●大規模化の行きつく先は環境汚染と健康被害、村の破壊 今、農業はトラクターや耕運機など、大型機械を使わざるを得ないが、機械は必ず壊れる。 70、80歳の人が、新たな高額の借金をしなければならない仕組みになっている。助成もあ るが、大規模化を勧めている国は、規模拡張を望まない農家には助成しなくなった。残さ れた選択肢は農業をやめること。しかし、農地を受け取って耕作を続ける人がいない。そ の結果、ブランド米の生産地ですら、優良田んぼが放置され、太陽光パネルかセイタカア ワダチソウの荒れ地になっているという。 大規模化すると、手が回らなくなるので、農薬を使うようになり、散布する農家も消費者 も健康被害を受ける。もちろん農民は減るので、村そのものが消えていく方向に向かうこ とになる。 菅野さんは自分たちの食糧庫がそんな状態になっているのに、都市部も「ゆでガエル」状 態で、気がついていないといらだちを隠さない。 ●米どころ新潟でも耕作田を集落で守れない 天明伸浩さんは、27年前に東京から新規就農し新潟の山間地で、稲作、養鶏、養蜂、農産 加工など複合型の農業をしている。というより、集まってくる農地を生かすために、そう せざるを得なくなっているという。 今後の農業の見通しを「これまでは米を作れない人が出ると、農地を守ろうと周りが引き 受けてきたが、今後は引き受ける人がいないので、それも難しい」と。しかも平場では、 個人では30haはざらで、100haと大規模化しているところもあるが、これだけ米価が下が ると今後はそこすら維持が難しいという。 ●農村にいながら出稼ぎができる(リモート)働き方を探る 耕作出来なくなった田んぼを手放さざるを得ない高齢化(老齢化と菅野さんはいう)の中 で、どのようにして農地を守るのか。 天明さんは、新たな仕組みを作って農業をしたい都会の人たちが耕作できるようにするプ ロジェクトを構想中という。 以前は田舎から都会へ出稼ぎに行ったが、今はリモートの仕事も多数ある。それを逆手に とって、移動しないで副業で収入を補うこともできるという。 ●飢餓の問題は、分配の問題「コメと野菜でつながる百姓と市民の会」を立ち上げる 天明さんの米作りのこだわりは、日本列島に住む人が米を食べ続けられるように、だった という。それなのに、昨年3月からのコロナ禍による都市部の貧困者の状況を知り、売れ なくなったコメを役立てたいと菅野さんなどに相談し、周りにも声をかけて昨年5月に上 記の会を始めた。 これまでは農家が米や野菜を都市部のグループに提供し、その送料を都市部の人たちが負 担していたが、今後さらに活動内容を検討して、発展させていくことになった(メンバー 募集中。下記URLから)。 https://www.facebook.com/groups/288740595952326/about 始めた当初は、対象はシングルマザーと思っていたが、外国人だったり、地方から東京に 出てきた人だったりと、行政のはざまに苦しんでいる人たちがこんなにいることに驚いた と天明さんはいう。 ●誰が自民党を支えているか 立憲野党が政権をとれないのはなぜかにも話が及ぶ。「農村票は保守へ」と思っていたら、大野さん、菅野さんは異口同音に、なんと先の民主党政権になったのは、地方の票だと いう。今回も、地方より都市部が保守を支えていたと。 ということは、都市部の人たちのすることは、たくさんあると感じた。 最後にデフレが続く今の日本で大事なことは「米価(物価)が上がれば、賃金(労働価格)が上がる」ということだという。都市と農村が連携して、今の状態から抜け出したい。