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●南北首脳会談の報道 : 「当事者認識の欠如」の凄まじさ

   高井弘之
 昨日(4月27日)は、南北首脳会談のさまざまな場面の映像に、何度も涙しました。しかし、場面がスタジオに戻ると、そこでの、相変わらずの解説やコメントに辟易しました。怒りが湧いた内容はいくつもありますが、いまの朝鮮半島の 動きに対する日本の「当事者性」に関することに絞って、少し記してみたいと 思います。 【「南北分断―対立」と日本】 そもそも南北分断の歴史的原因と責任は、日本の植民地支配にあります。 日本が朝鮮を植民地支配し、戦争を仕掛け敗北したから、連合国の米ソは、 そのとき日本の領土であった朝鮮(半島)を分割―分断する形でやって きました。日本軍の武装解除と戦後占領のためです。 逆にいえば、日本が朝鮮を植民地支配していなかったなら―そこが日本の 領土でなかったなら、朝鮮は分断占領されることはなかったのです。  したがって、この間の「南北分断―対立」の克服に向けた動きに対し、 日本はそれを実現させることに助力する歴史的責務があります。しかし、 日本政府がそれと真逆の動きをしていることはご存知のとおりです。 報道においても、日本のこの「立場―当事者性」について語られることは 全くありませんでした。 【「北朝鮮は本当に非核化するか」という言説】  報道は、朝鮮民主主義人民共和国 (以下、朝鮮) は本当に「非核化」を実行するかということにのみ焦点を置いています。そして必ず、「北朝鮮はこれ まで常に裏切って来た」と断言し、そこに視聴者の関心を向けさせます。  「朝鮮の核開発中止」に関する「合意」はこれまで二度ありましたが (94年の『朝米基本合意書(枠組み合意)』と2005年の『六者協議共同声明』) 、ともに、 「アメリカが朝鮮を核侵略しないこと」とのセットの形で行われました。 それが、「対等な国家間」なら相互の不可侵条約になるところを上記のような 形で「合意」が成立するのは、互いに攻撃の可能性があるのではなく、 アメリカの側にのみその可能性があり、朝鮮の側はその「脅し」を受けている という関係にあるからです。 つまり、朝鮮の核開発は、アメリカに侵略されないための「抑止力」として なされて来たことなので、「朝鮮の非核化」の実現には、アメリカが朝鮮を 侵略しないという確実な保証が存在する状況が必要です。 具体的には、朝鮮戦争の休戦協定を平和条約に変えることや米朝国交正常化の 実現などです。これらは、朝鮮は常に求め続けて来たことなので、それに応じ なければならない―それを行わなければならないのはアメリカの方です。 したがって、「北朝鮮の非核化」を論じるなら、その前提―必須条件である ところのそれらを、アメリカが本当に行うつもりがあるかどうかにも、 報道は焦点をあてなければなりません。  また、今回の「板門店宣言」やこれまでの「六者協議」などで論議のテーブル に載せられて来た前提―問題は、実際は、「北朝鮮の非核化」ではなく、 「朝鮮半島の非核化」です。つまり、朝鮮だけの問題ではなく、韓国に 軍を置く、核大国アメリカの問題でもあります。 そしてこの問題は、米軍を自国内に置き、その「核の傘」のもとにある (―そして核兵器禁止条約に反対する)「日本の非核化」をどうするか という問題でもあります。 つまり、「朝鮮半島の平和と非核化」に対応し、つながる形で、自らの 足元の問題―「朝鮮への脅威」を与え続けた(―朝鮮の核開発の原因とも なった)「日米軍事同盟(日米安保)」の廃止へ向けた道程にも、 焦点をあてなければなりません。それは、当然、沖縄の米軍基地化の廃止 への道程でもあります。 これらのことによってはじめて、「朝鮮半島の平和」を「東アジアの平和」 へとつなげていくことができます。 (これまで二度の上記「合意」は、ともにアメリカが「合意」を履行しな かったことによって破綻し、その結果、朝鮮の核開発が進められることに なりましたが、その具体的経緯については、長くなるので、ここでは省きます。) ◆【「見返りを求める北朝鮮」という言説】  上記の文脈で必ず出て来るのは、「日本の経済支援」ということです。 しかし、そのようなものが日朝の間で論議になるとしたら、それは、 「平譲宣言」にもあるように、日本の植民地支配による被害への 「賠償問題」としてですが、そのようには全く報じられません。 そしてこのことは、日本が朝鮮植民地支配の清算を、朝鮮国家 (「北朝鮮」)との間でいまだ全く行っていないことに関係することがら なので、日本のその責務の「不履行」が当然、焦点化されなければなりま せんが、信じられないことに、この重大なこともまた、決して報じられる ことはありません。 以上、この間の報道の「当事者認識の欠如」の凄まじさについて、 思うところを書いてみました。 ※なお、上記「朝鮮半島―東アジア」の状況と日米の関係等についての より詳しい説明やその歴史的背景などについては、 拙著『礼賛される「日本150年」とは、実は、何か―日本ナショナリズム の解体と、新たな列島社会の形成に向けて―』や、 『日本問題としての「北朝鮮問題」―朝鮮国家に対する「日本言説」を検証 する―』などを読んでいただければ嬉しく思います。 ご希望していただける方はご連絡ください。 *「9条の会ML」からの転載です。

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