〔週刊 本の発見〕『チャヴ 弱者を敵視する社会』 | |||||||
Menu
おしらせ
・レイバー映画祭(報告) ・レイバーネットTV(10/9) ・あるくラジオ(10/10) ・川柳班(10/31) ・ブッククラブ(10/12) ・シネクラブ(9/1) ・ねりまの会(10/12) ・フィールドワーク(足尾報告) ・三多摩レイバー映画祭 ・夏期合宿(8/24) ・レイバーネット動画 ●「太田昌国のコラム」第94回(2024/9/10) ●〔週刊 本の発見〕第363回(2024/10/3) ●「根津公子の都教委傍聴記」(2024/9/19) ●川柳「笑い茸」NO.157(2024/9/26) ●フランス発・グローバルニュース第13回(2024/9/20) ●「飛幡祐規 パリの窓から」第95回(2024/9/10) ●「美術館めぐり」第3回(2024/9/23) ★カンパのお願い ■メディア系サイト 原子力資料情報室・たんぽぽ舎・岩上チャンネル(IWJ)・福島事故緊急会議・OurPlanet-TV・経産省前テントひろば・フクロウFoEチャンネル・田中龍作ジャーナル・UPLAN動画・NO HATE TV・なにぬねノンちゃんねる・市民メディア放送局・ニュース打破配信プロジェクト・デモクラシータイムス・The Interschool Journal・湯本雅典HP・アリの一言・デモリサTV・ボトムアップCH・共同テーブル・反貧困ネットワーク・JAL青空チャンネル・川島進ch・独立言論フォーラム・ポリタスTV・choose life project・一月万冊・ArcTimes・ちきゅう座・総がかり行動・市民連合・NPA-TV
|
毎木曜掲載・第23回(2017/9/21) 可能性としての労働者階級●『チャヴ 弱者を敵視する社会』(オーウェン・ジョーンズ 依田卓巳訳 海と月社 2400円)/評者=志真秀弘2007年のイギリスで、ほぼ同時に起きた中産階級家庭と貧困家庭の幼女失踪事件に対するメディアの報道がいかに違っていたか、その背景にあるジャーナリストたちの階級的偏見を明るみに出すことから本書は始まる。1979年サッチャー政権の労働者階級に対する総攻撃、それが労働者階級の力をいかに奪っていったか。さらに2007年、労働者階級はもはやいない、「われわれはみな中流階級だ」(ブレア)と公言する「ニューレイバー」が政権につく。こうした政治過程が底辺層を「チャヴ」呼ばわりして、労働者階級を敵視するイギリス社会を作ったことを著者は政策とその結果を歴史的に示しながら実証する。 著者は第2章「『上から』の階級闘争」の章で、中産階級出身の保守党政治家たちは、「特権階級の連合」を自認し、決して階級闘争を見失わないと強調している。第3章では、保守党のあるベテラン議員が、著者に対して「(平等社会など)実にくだらない」と言下に言い放ったというエピソードを紹介している。A5版390ページの浩瀚な本書を貫くのは、ここにある著者ジョーンズの冷静な怒りだ。具体的な事実を積み重ねて、現代イギリスの労働者階級の状態をかれは明らかにしていく。(写真右=著者のオーウェン・ジョーンズ) そしてかれは1970年代の階級政治への回帰ではだめだと主張する。労働者階級は「根本的に様変わりしている」。 1997年にニューレイバーが政権をとった時、製造業はイギリス経済の5分の1を占めていた。ところが2007年ブレアが政権を退いた時には、半減し12パーセントだった。工場労働者の数は70年代末には700万人近かったのに2010年には250万人あまりになった。これに対し、スーパーに代表される小売店で働く労働者は300万弱、そしてコールセンターで働くオペレーターは今100万人。(1940年代の最盛期の炭鉱労働者の数がやはり100万人だった。)だがスーパーもコールセンターも派遣、パートなどの非正規労働者が圧倒的に多い。そこに新しい組合運動は働きかけようと著者は提案している。同時に中流階級を自認する正規雇用・年収28000ポンド(400万円)クラスの人たちと労働者階級をしっかりとつなぐことの重要性も訴えている。 さらに職場は労働者階級を定義づけ、生活を作る場とし重要だがそこだけに目を向けていてはならないと指摘する。転職、それも1年以内のそれが急増している今、「コミュニティーにも基盤を確保する必要がある」。 イギリスの総労働組合員数は1979年の1300万人から、今は700万人に減っている。しかしこの提言を待つまでもなく、新しい組合運動の可能性はある。そしてすでに動き出している。 本書のイギリスでの発行は2011年(著者はその時26歳)。反響は大きく、本書に収録された2012年版、2016年版それぞれの読者へのメッセージを読めばわかる。 さらにブレイディみかこのブログ「UK地べた外電」(第8回 ポストEU離脱騒動の英国は、ストの時代)が本書の著者ジョーンズの最新の行動を伝えている。イギリスでマクドナルドが開店して初めてのストが打たれ世界に報じられた。それほどは知られていないが、ロンドン大学の名門カレッジLSEの清掃職員(ほぼ全員移民女性)が、正規職員との同一待遇を求め、今年3月以後ストを繰り返し、勝利した。著者ジョーンズはLSEで予定されていた5月の講演を「ドタキャン」したうえで、この運動への連帯のメッセージを送ったという。 *「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美ほかです。 Created by staff01. Last modified on 2017-09-21 09:41:08 Copyright: Default |