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サンダース出馬で「社会主義」が禁句でなくなる〜米大統領選レポート

     サンフランシスコ・和美

アメリカでの大統領選挙戦の報告です。こちらでは現在、大統領選の民主党と共和党の予備選挙が2月より始まって6月半ばまで続き、その後はそれぞれの党の代表が11月の大統領選まで選挙運動をしますので、ここ約1年程は毎日そのニュースでいっぱいです。特に今年は前代未聞の選挙で毎日がサーカスの様です。今年の選挙はアメリカの社会の不満層が右はもっと右に、左はもっと左に(左と言ってもいわゆるリベラル派)に動いている現れのようです。

まず共和党ですが、どうやらニューヨークの資産家トランプが指名を受けそうです。共和党はかなりの州が勝者が全delegates(代議員)を勝ち取る仕組みになっていて、これは元々は党の指導者が、主流を行く代表を選びやすくする為に決めた仕組みのようで、予備選の始めの方に南部の保守的な州をさせて、保守派がまず流れを固めてから後半を有利にしようという計算です。

delegates(代議員)の数の一番大きなカリフォルニアなどは最後の6月ですから、ここにくるまでにはいつも既にほとんど決まっています。ところが今回は当てが外れたようで、予想ではトランプが大体どの州も40%かそれ以上の支持を得ているため大差でdelegatesの数をとりそうです。指導層はこれをなんとか阻止しようと、毎日、特にトップ3人(トランプも入れて)の候補者が、子供のガキ大将がお互いを罵倒し合うようになじり合っています。

マルコ・ルビオは「トランプは世界一流の詐欺師だ」といい、「トランプの手は小さいが手の小さいやつは信じる事が出来ない」、また「彼は顔に日焼け色のスプレーをして、日焼けしているように見せている」などなど。

それに対してトランプは「ニューヨークの5番街で誰かをピストルで撃っても皆俺に投票してくれる」と言ったり、ボトルの水を床にまき散らしながら、「小さいマルコは討論の前、のどがひからびていて、付き添いに水、水とどなっていた」と子供のように相手をけなし合っています。

共和党の指導者などは、もしトランプが代表に選ばれたら彼をサポートしない、中には民主党のクリントンに投票すると公に言っている人もいます。このような状態では、多分この秋を待たずにひょっとして1854年以来続いた共和党は分裂するかもしれません。

一方、民主党の方ですがクリントンとサンダーズが競っています。サンダーズは前は無所属で自分は社会主義者だと言っていました。彼はこの大統領選に立つため、直前に民主党に入党し、"democratic socialist”だと言っています。アメリカでは共和党と民主党以外の第3党が選挙に出るのは、最近ではほとんど不可能に近い状況です。彼が立候補した時、最初は党指導部はアメリカでは社会主義者は絶対に支持を得られないとたかをくくっていましたが、最近は彼がかなりの支持を受け出したので少し慌て出したようです。

アメリカではほんの最近まで、普段の会話に社会主義とか共産主義という言葉は禁句でした。ところが若い人達や労働者の間で学校を借金で卒業してもろくな仕事が得られない、また賃金が低すぎてフルタイムで仕事をしていても生活出来ない、それどころかフルタイムすら手に入らないという状況の中で、彼の提案している方針は大変魅力的ですから、「彼は社会主義者だけどいいのか?」という質問に「それがどうした?」と答えが返ってきます。

資本主義の現状が、アメリカ人の考えを内から変える土台があったのですが、サンダーズの出馬により、少なくとも今までの社会主義という禁句を普通に受け入れられるようにしたのです。しかし現在、アメリカの両議会ではどちらとも共和党が支配していますから、サンダーズのfree education(大学迄、ただの教育)、 single payer health care(国が運営する国民全員の健康保険)、 $15 minimum wage(federal)(国の最低賃金−州や市の最低賃金はそれと同等かそれ以上) などが議会を通るのは今の所、ほとんどないと思いますが、若者、労働者にとっては提案してくれるだけでもこの候補者に希望がみえるのでしょう。彼自身、「どのようにして実際これらを実現するのか」という質問に対して、"political revolution” を起こすのだ、という漠然とした答えしか返ってきません。

今日のスーパーチューズデー(11の州での予備選挙+3州の共和党のコーカス)でトランプはかなりの州の票を得て、他を大きく離して先頭を走っています。サンダーズもかなり善戦しています。今年の選挙は今までと違っておもしろくなって来ました。


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