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現場の攻防から生まれた書〜石川源嗣著『労働組合で社会を変える』を読んで

                             北 健一(ジャーナリスト)

                      *写真=石川源嗣さん

厳しい現場を踏んできた人の手になる労働組合論は、やはりおもしろい。ページを開くと、ぐいぐい引き込まれてしまいました。東京東部労組・石川源嗣さんの『労働組合で社会を変える』(世界書院)のことです。

本書の魅力は、なんといっても、石川さんが仲間たちと歩んできた波乱万丈の経験、現場の攻防やその渦中の労働者の想いの活写にあります。

たとえば産廃運送会社での組合誕生の瞬間。庸車と呼ばれることもある、車持ち込みの請負的関係で働いていた運転手を社員にするという。みんな喜んでいたら、実は1年間の有期雇用でした。更新期限が近づくと、会社は言います。更新してほしければ、労働条件を下げる----。

有期雇用の更新時に「労働条件の不利益変更」を持ち出し、嫌なら更新しないぞと脅かす。労働法の教科書では「変更解約告知の問題」として説かれ、裁判例の立場も分かれる難しい問題ですが、不安を抱えて集まった60人を前に、石川さんは組合結成を訴えかけます。「その時は、120個を超える目玉でみんなの視線が僕に突き刺さってくるんですよ。チリチリするような」

東部労組ならではの「その後」は本書を読んでほしいのですが、石川さんたちの運動を貫く代行主義批判とか、「度胸」「人情」「腕づく」が、「力を忘れた労働運動」への厳しい指摘と併せ、すっと理解できます。

もっとも、石川さんのいわれる「階級観点」や連合評価については、私は違う意見(というよりスタンス?)を持っています。経営者の攻撃に勝つための理論武装の「核心問題が、労働者と資本家の利害は対立している、資本家に幻想を持つな、階級闘争で解決するという階級観点にある」という枠組みでこんにちの労働組合運動を位置づけるのは、無理があると思うからです。労働条件の労使対等決定とディーセント・ワークは、階級闘争モデルに立たなくてもめざせるのではないでしょうか。

他方、本書のメッセージで特に考えさせられ、共感したのが、職場闘争の再評価です。産別や個人加盟を重視する論者の一部には職場を軽視する傾向があり、その方が先進的なようなイメージもあります。しかし石川さんは、東部労組の経験に加え、ドイツ産別労組についての論文など最新の研究成果とも対話しながら、「職場闘争の新しいとらえかえしが必要」と主張します。

「カギはやはり地域合同労組・ユニオンの強化にあると思います。そしてそのユニオンの強化の内実は、ユニオンを構成する最も基礎組織である職場支部(労働組合)の拡大強化に行き着きます」

企業主義を警戒するあまり、企業内の組織化をあきらめるのは本末転倒ではないのか。いろいろ異論もある論点ですが、労働条件が決まる基礎的な場で労働者が手をつなぐことの大切さが腑に落ちます。

巻末に収録したインタビューが伝える、一人の青年が工場に入ってフライス工になり、労働者の信頼をつかんでいくプロセスも感動的です。たとえば、江東区内の工場で若き日の石川さんが最初に組合結成に参加し「丸裸で決起したので、いいようにやられてしま」った悔しい経験は、東部労組による組合(職場支部)結成に活かされているのでしょう。

『労働情報』の前田裕晤代表は、本書の帯に「労働運動関係者には必読書」と書いていますが、たしかにそう思います。この厳しい時代。心に太陽を失わず、労働運動の現場で頑張っている多くの人の手に取られ、社会を変えるための議論に一石を投じることを念じています。

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