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いま観に行くべき芝居2作品「先生のオリザニン」「すなくいむし(砂喰虫)」

                     ジョニーH

6月12日と13日が初日の芝居を2作、観に行った。

午後観たのは東京・日本橋の三越劇場で、加藤剛・頼親子共演の俳優座「先生のオリザニン」。

明治時代、世界に先駆けて、脚気の原因であるオリザニン(ビタミンB1)を発見した農学者・鈴木梅太郎の物語。梅太郎の妻・須磨子役の有馬理恵が実に小気味よく物語の進行案内をすると、観客それぞれが物語のひとりになったかのような気持ちになり吸い込まれていく。

足尾鉱毒事件の調査をする梅太郎の恩師である古在由直助教授と、それを邪魔する軍や政財界、田中正造の名前や宮沢賢治らしき書生も出てくる、創設当時の理化学研究所と戦時中の政財界からの圧力の実態、医学界の農学者への差別、読者が受けそうな噂話を作り上げようとする新聞記者たち。戦争の虚しさ、科学者の本懐、家族愛等々盛りだくさんなテーマが織り込まれ、梅太郎夫妻の物語が進んでいく。

その都度、福島東電原発の放射能汚染問題、戦争放棄と集団的自衛権の問題、STAP細胞をめぐる理研のドタバタ劇、権力者側の記事と噂話しか報道しないマスコミなどと、現在の社会問題と照らし合わせて、思いをはせながら、あっという間に観終わり、そして余韻が残った。

恩師・古在由直が科学者の研究の目的を若き鈴木梅太郎に問いかける場面はグッとくる。「最優先事項とは何かね? 吾々の生活より命より優先されるものは何だろう?」と問われた梅太郎は、そのとき答えられない。

駿河の海を須磨子と一緒に眺めながら、年老いた梅太郎はつぶやく。「野山を焼き尽くし、多くの人を殺す、戦争などしてはいけない」

「そうだ、その通りだ」と心の中でつぶやきながら私は拍手を送った。 今、観に行くべき作品である。

http://www.manabeck.com/oryzanin/

「先生のオリザニン」https://www.youtube.com/watch?v=qgu9BpBZIbc

夜になって観たのは、本郷三丁目の本郷文化フォーラムで、劇団もっきりや2014年公演「すなくいむし(砂喰虫)―そこから見た月は歪んでいてー」。

杉浦久幸が作・演出・主役をこなすミステリアスな物語。砂が見えてしまう人たちは、その砂に恐怖を感じ対策を講じる。ところが、その恐怖を伝えようとすると、砂を見えない人たちがに徹底的口封じをしようとする。本当は砂が見えているのか、本当に砂が見えていないのか。とりあえずは砂など見えていないことにした方が都合が良いしくみを作り、風評被害を引き起こさないようにと、砂が見えると主張する人を異常者扱いする。砂が見える人もその論調に巻き込まれていく。 砂が見えるようになった(見えることに気づいた?)人はどうなっていくのか・・・

この図式、現実世界に最近よく見る。気が付かないことにした方が、今の時点では一見都合が良いと思わされている人たちは、近未来の恐怖を考えることを停止させられているのか? 家族や恋愛の人間関係の複雑さ等も織り交ぜながら、物語は進行していく。

砂喰虫と何なのか?そもそも砂は人にどういう影響を与えるのか。レイ・ブラッドベリの短編小説を彷彿とさせる。 こちらは、防塵マスクを持って、観に行ってほしい。

http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_main_id=43767                              


Created by staff01. Last modified on 2014-06-14 11:40:51 Copyright: Default

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