姉の労組加入通知直後に妹が解雇――2日前に契約更新も解雇理由は「生産の減少」――http://imadegawa.exblog.jp/15806225/■会社側「まったくの偶然」姉の労組加入を会社に通告した直後に、その妹が解雇を通告されたなどとして、愛知県の個人加盟制労働組合・名古屋ふれあいユニオン(「コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク」加盟)が愛知県労働委員会に不当労働行為救済申立を行なっている。労組からの申立を受けているのは愛知県小牧市に本社を置く人材派遣会社・「株式会社ワイズ」である。姉妹は同社の請負業務に従事するという名目でTOTOなどで有名な森村グループのセラミックス製品製造会社・日本特殊陶業の子会社工場で就業したが、作業員の配置決定や指揮命令を請負先の社員が行なっており、その実態は派遣と変わらないという偽装請負の状態であったと主張している。ワイズを通じて請負先の日本特殊陶業子会社・「セラミックセンサ」で就業している労働者の大半は日系ブラジル人であるが、姉妹はペルー人である。姉のHさんは2010年11月10日に労災に被災して右肩を負傷。その労災補償が打ち切られるのではないかとの危機感から2011年3月2日に名古屋ふれあいユニオンに加入し、同日午後5時に労組がワイズにHさんの組合加入を通知したところ、その1時間52分後である同日午後6時52分にHさんの妹・Tさんにワイズの担当者から電話があり、解雇通告を受けたのだという。ワイズ側から書面で示された解雇理由は「減産により生産調整になり、 異動先を探しましたが 本人に合う異動先が見つからなかった為」というものであったが、そもそもTさんは解雇を言い渡された3月2日のわずか2日前である2月28日に、ワイズの担当者から社印の入った「平成23年3月1日から平成23年4月30日まで」という「雇用契約書」をわたされ、これにサインをして契約更新をしたばかりであった。これに対してワイズ側は名古屋ふれあいユニオンとの団体交渉の中で、「解雇理由を減産による生産調整としたのは ある種の配慮。 本当の理由はTさんが 前日の勤務中に同僚とトラブルを起こしたことが 原因だ」と主張。「担当者は午前11時15分にも Tさんに電話をしているが、 Tさんが出なかったので 解雇通告が午後6時52分となっただけで、 姉であるHさんの組合加入通告の直後に 解雇通告が行なわれたのは全くの偶然」と説明している。■姉妹、セラミックセンサの事前面接を証言偽装請負の疑いについても、両者の主張は真っ向から対立している。まず姉妹は、セラミックセンサでの就労にあたり、「請負先」であるはずのセラミックセンサの係長により事前面接が行なわれたと主張している。姉のHさんは2009年10月後半、ワイズの事務所におもむき、まず規定の書式に基づいてこれまでの履歴などの個人情報を会社側に提出したという。その数日後、Hさんはワイズから電話で呼び出され、再び事務所におもむくと、担当者から「セラミックセンサで面接しなきゃいけない。 会社に行くから (筆者注:セラミックセンサに)電話します」と言われ、その後 担当者にセラミックセンサの事務所に連れて行かれたというのである。事務所でHさんはセラミックセンサの係長1名の面接を受けたという。係長はHさんがワイズで書き込んだ個人情報の紙を見ながら、今までの仕事の履歴や日本語ができるかどうかについて質問。Hさんが日本語ができるかという質問に対して「少し」と答えたところ、セラミックセンサの係長は「仕事してもいいです」と答え、Hさんに(2009年)11月1日から出勤するように伝えたというのである。妹のTさんも同様の経験を証言する。Tさんは姉のHさんの紹介で2009年12月16日にワイズの事務所におもむき、Hさんと同様、定められた書式にこれまでの履歴などの個人情報を書き込んだという。同年12月18日にTさんはワイズの事務所に呼び出され、担当者とともにセラミックセンサにおもむいたのだというのである。そこでTさんは、セラミックセンサの係長2名と面接。係長はTさんがワイズで書き込んだ個人情報の紙を見ながら、今までの仕事や結婚しているかどうかなどをTさんに尋ねたという。Tさんは「私は前に速い仕事をしていたから この仕事ができる」と回答。その後、2人のうちTさんの履歴書を持ったほうの係長が単純な日本語でTさんに話しかけてきたという。Tさんがそれに対して日本語で返事をすると、二人のセラミックセンサ係長は日本語で「大丈夫ですかな」などと話し合った後、Tさんに「OK!」と答えたというのである。Tさんは2010年1月5日からセラミックセンサで働くことになった。これに対してセラミックセンサは名古屋ふれあいユニオンへの回答書の中で、「当社が、Hさん、Tさんに対し、 貴殿(筆者注:=ユニオン委員長である筆者)の述べるような 事前面接をしたことはありません。/ Hさん、Tさんが請負作業を開始する前に、 事業所見学をし、 その際に引き合わせ・紹介を受けたこと、 及び予定されている請負作業の内容について 一定の説明をしたことはありましたが、 それを超えて採用の可否、及び配置に 影響を与えるような会話のやり取りは ありませんでした。/ 現に、ワイズからも、 『事業者訪問は 自社(ワイズ)判断による適正基準を 満たした社員に対してのみ 当該社員の事業見学(実際の作業を確認すること)を 目的としており、 これらの直後に 当該社員の意思によるものでない限り、 採用または配置先が変更となった事案はない』 との報告を受けております」と反論している。■「混在の朝礼、進行役はセラミックセンサ」また、姉妹らワイズの労働者に対して業務の指示や配置の決定をセラミックセンサ従業員が行なっており、作業現場ではセラミックセンサの従業員がワイズや他の会社の従業員と混在しながら働いていたとの主張に対しても、セラミックセンサは真っ向から否定している。セラミックセンサは名古屋ふれあいユニオンへの回答書の中で、「当社の業務請負が なぜ違法な偽装請負と評価されるのか 理由が不明で」あると反発。「ワイズの請負作業員については、 独立の作業場が割り当てられていたこと、 事業所にワイズの請負作業員専用の タイムスケジュール表が掲示されていたこと、 ワイズが請負管理者各自に対して 携帯電話を貸与して 必要な指示を出していたことなどに鑑みれば、 当社の業務の実態が 偽装請負であると評価される事情はない」と主張している。また、「当社は、 労働局担当者による現場調査を受けておりますが、 当社の事業実態が偽装請負であるとの指導注意を 受けたことはありません」とも断言している。ワイズ側も、作業エリアは区分されており、指揮命令は自社のリーダーが行なっていたと主張。「新しい機械が入ったとか、 装置がついたとかやり方が換わるときは、 当社の通訳やリーダーが立ち会った上で セラミックセンサの従業員から 説明があったことはあるが、 基本的には当社の管理者が 作業の説明や注意事項・連絡事項を伝えていた」と説明している。ところが姉妹が語る職場の実態はずいぶんと違う。まず姉妹は、毎日の朝礼を中心的に進行し、業務連絡などを行なっていたのはセラミックセンサの「リーダー」であったと証言。また、この集会にはワイズだけでなく、別の「派遣会社」から来ているブラジル人従業員も一緒に参加していたというのである。ワイズはこの「派遣会社」から自社の請負行程に労働者の派遣を受けていたのかとのユニオン側の質問を明確に否定している。派遣契約も結んでいない他社の従業員とともに、請負先従業員が進行する朝礼を行なっていたとすれば、これで偽装請負を疑わない方がおかしいというものである。■「配置決定はセラミックセンサのリーダー」セラミックセンサの正社員たちと朝礼が別々であったのは、セラミックセンサの日本人従業員は8時間勤務の3交代制であるのに対し、ワイズや他の会社のブラジル人派遣社員は12時間勤務の2交代制であったので、時間が合わなかったからにすぎないと姉妹は主張している。(2人は夜勤専属であったため、 朝礼の司会をするセラミックセンサのリーダーは 毎週変わり、 また12時間勤務であるため、 勤務中にも8時間勤務のセラミックセンサ従業員が 入れ替わるのにともない、 新たな直のセラミックセンサのリーダーから 「機械かわって」命じられることも よくあったという)。従業員の配置は基本的にマグネットの張り付くボードで管理されており、工場内にある機械それぞれにアルファベットや数字による記号がついていたという。そして、それぞれの機械をあらわす記号のところに、セラミックセンサのリーダーが自社従業員やワイズ従業員の名前の書かれた紙を貼り付けてゆきその日の配置を決定していたと姉妹は主張するのである。セラミックセンサ側は、「事業所に ワイズの請負作業員専用のタイムスケジュール表が 掲示されていた」と主張しているが、姉妹はそのスケジュール表は昨年の9月ごろからできたものにすぎないと証言。しかも実際には、そのスケジュール表とは別の、先述したセラミックセンサのリーダーが管理する、同社従業員やワイズ、「他の派遣会社」の従業員が混在するボードをみんなが見て配置についていたのが実態だというのである。(姉妹はこのボードの置かれていた場所を、 現場の配置図をもとに具体的に指摘したが、 ワイズ側はこのボードの存在自体を否定した)。同工程では一つの機械を「挿入」・「性能」・「包装」の3人で担当するのが通常であったということであるが、同じ機械を扱う3人の中でもワイズの従業員とセラミックセンサの従業員、そして「他の派遣会社」の従業員が混在することが珍しくなく、また1日のうちにセラミックセンサのリーダーの指示で機械を変えられることもよくあったというのだ。その一例として、妹Tさんの事実上工場への最後の勤務日となった2011年3月1日(正確には3月1日の午後8時から、 翌日3月2日の午前8時まで)の勤務の中で、Tさんは3回機械を移動させられたと証言している。一度目は午後10時のセラミックセンサ従業員の2直から3直への交代にともなったものであり、その際にはワイズの示した「請負エリア」表ではセラミックセンサの担当となっている区域の機械に移動を命じられたということだ。ワイズ側はこうした姉妹の具体的な指摘に対し、「請負といっても5年前の請負と今の請負は違う。 昔は確かにそうしたことがあったかもしれないが、 そのへんをごっちゃにしているのでは」などと主張したが、姉妹がセラミックセンサで勤務したのはここ1年ほどの話にすぎない。おまけにTさんは2011年3月1日という、わずか1ヶ月前の特定の日の状況について、ワイズとの団体交渉の場で具体的に証言しているにもかかわらず、ワイズ側は「イレギュラーな例を持ち出しているだけではないか」などと言うのみで何ら具体的な反論をすることができなかった。また、ワイズ側が自社の「リーダー」と称する従業員についても、姉妹は「通訳」としか認識しておらず、その人の名字さえ知らないというありさまであったのだ。■スペイン語できぬ者が「聞き取り」で解雇?ワイズ側は妹・Tさんの解雇は姉・Hさんの組合加入の通知の影響を受けたものではないと主張する。解雇理由を「減産による生産調整」としたのは「ある種の配慮」にすぎず、真の理由は前日に起きた同僚とのトラブルであると主張するのだ。ところが会社側の主張を前提にしても、この解雇は相当乱暴である。トラブルを理由に労働者を解雇したというのであれば、そのトラブルについてじっくりと労働者側の言い分を聞かなければならないはずだ。この点についてワイズは、「Oという者が聞いている」と主張している。しかしTさんの言うところでは、このO氏はTさんと少し話をしただけで「聞き取り」と言えるほどのことはほとんど行なっていない。会社側もこれには特に反論せず、トラブルの相手方の主張を聞いて判断したという以上のことは言わないのである。おまけにこのO氏は、Tさんが母語とするスペイン語ができないことは会社側も認めている。Tさんの母語であるスペイン語のできる通訳も同席させないまま行なわれた話を「聞き取り」といい、それで解雇を判断したというのはあまりに乱暴なのではないか。名古屋ふれあいユニオン側は、妹・Tさんへの解雇通告後の収入の補償と職場復帰、そして労災に被災した姉・Hさんの職場復帰プログラムの策定などを要求している。(JanJan blog 4月13日から加筆転載)酒井徹電子メール:sakaitooru1983@excite.co.jpホームページ:『酒井徹の日々改善』http://imadegawa.exblog.jp/