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LNJ Logo 木下昌明の映画批評〜「おいしいコーヒーの真実」
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News Item 0513kinosita
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●映画「おいしいコーヒーの真実」
「ほろ苦い」ではすまない労苦
違いが分かるコーヒーの現実

 「一杯のコーヒーから」という昔から親しまれた歌がある。コーヒーによって男女の心 が通い合うほのぼの気分を歌ったものだ。コーヒーには人の心をなごませ、人と人を結 びつける何かがあるようだ。しかし、歌は産地の人々にまで思いを致してはいなかった 。

 ニックとマークのフランシス兄弟のドキュメンタリー「おいしいコーヒーの真実」( 英)は、そのコーヒーの発祥地であるエチオピアの現実に光を当てる。映画は、コーヒ ーの国際コンテストで一人の鑑定員が「最高のコーヒーに出合ったよ。エチオピアのハ ラー豆だ。すばらしい」とうなるシーンから始まる。そして画面はエチオピアの山岳地 に転じ、コーヒー豆生産に携わる人々の姿を描いていく。

 コーヒーは、世界市場で石油に次いで多く取引される商品であり、年間の売上高は8 00億ドル、1日の消費量は20億杯にもなる。それをクラフト・フーズ、ネスレ、 P&G、サラ・リーといった四つの多国籍企業が支配しているという。一方で農民は、 単一栽培の換金作物ゆえ、常に市場の価格変動に左右され、極貧の生活を強いられてい る。

 映画では、農協連合会のタデッセ・メスケラ代表が水先案内人となって、産地の実態 を説き明かす。メスケラ代表は「理不尽な市場」に対抗し、フェアトレード(公正な取 引)を行うバイヤーを求めてロンドンやニューヨークへ飛ぶ。外国の物資援助を受けな いで農民が経済的に自立できるよう精力的に活動しているのだ。カメラは彼に寄りそっ て、「おいしいコーヒー」という“商品”の仕組みに迫る。

 こんなシーンがある。スターバックス1号店の女性店長が「拡大と浸透」を図る同社 会長を礼賛する場面に続けて、そのスタバで使う豆の生産地の映像を重ねてみせる。そ こでは飢えた幼児がはかりに吊るされて体重を量られている。

 それにしても、ハラー豆のコーヒーってどんな味がするのだろうか。(木下昌明)

*映画「おいしいコーヒーの真実」は5月31日から東京・渋谷アップリンクXでロードシ ョー公開

「サンデー毎日」2008年5月18日号所収


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