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プラットホーム労働は「家事労働者」を解放したのだろうか

[ワーカーズ・イシュー(2)]世界女性の日特集(2)

ユン・ジヨン記者 2019.03.07 17:17

[順序]

(1) 4次産業革命だろうが何だろうが「家事労働」は相変らず地獄だ

(2) プラットホーム労働は「家事労働者」を解放したのだろうか

昨年、政府が最初に発表した無給家事労働の価値評価額は360兆7千億ウォン。 そのうち女性の割合は272兆5千億ウォンで、75%を越えるという。 ところで変だ。 家事労働の価値を時給に換算すれば、女性は9864ウォン、男性は1万3564ウォンだという。 男は家事労働をする時、特別なことでもするということか? 政府の回答はこうだった。 市場部門で類似の活動に従事する個人の時間当りの賃金を適用したという。 言い換えれば、過小評価された女性の家事労働価値は、 女性家事労働者の低賃金構造に起因するということだ。

単に低賃金問題だけだろうか。 女性の家事労働がしばしば「シャドウ・ワーク」と呼ばれるように、 市場で取り引きされる家事労働もまた相変らずシャドウの外に出ることがない。 では大げさにやってきた4次産業革命時代にはどうか。 家事労働は共有経済、あるいはプラットホーム産業の「ブルーオーシャン」と言われもした。 私的空間、あるいは個別家庭で取り引きされた非公式労働が産業に再編されたということだ。 果たしてプラットホーム産業の発展は、家事労働の陰を取り払ったのだろうか。 家事労働はもはや「シャドウ・ワーク」扱いをされなくても良いのだろうか。 2019年現在。 家事労働市場の姿を調べた。

「家事労働市場」に資本が入ると

遠い以前、家事労働者は「下女」あるいは「お手伝いさん」という名前で個人の家庭に従属して「擬似家族」として扱われた。 「食べさせてやり、眠らせてやる」ことに大きな有り難みを感じなければならなかった時期の話だ。 その後、都市化、産業化の過程で職業紹介所を中心として家事労働市場が形成された。 彼女らは一定の報酬を受けて入居、あるいは時間制労働を遂行していった。 彼女たちの呼称も「家政婦」あるいは「派出婦」、「家事手伝い」などと変化した。 そして2010年になると、家事労働はまた新しい産業と市場に再編された。 共有経済を基盤とするプラットホーム労働が到来した。

ホームクリーニングO2O(Online to Offline)企業が拡大し始めたのは2015年前後だ。 過去に職業紹介所という小規模零細企業が地域、町内を中心として、 家事労働力を需要者に供給したとすれば、 O2O企業はスマートフォンのアプリを基盤として需要者と供給者をマッチングする。 企業がモバイルプラットホームを媒介として広範囲な市場を確保できるようになった形だ。 現在、家事サービスO2O企業は、多ければ20社程度といわれる。 これらの大多数はスタートアップ企業で、 初期の市場競争で相当な需要者、供給者を確保した後、 国内外の投資社から数十億を誘致して規模を大きくしている。

プラットホーム基盤事業を率いる大型ポータルも「家事労働市場」をもの欲しげに見た。 カカオは2016年下半期にカカオクリーンホームというホームクリーニングサービスを市場に発表する計画だった。 だが市民社会が大型ポータルの無差別的な市場進入を批判し、「正規職雇用」を要求したため、 カカオはその年にホームクリーニング市場からの撤収を決定した。 それでもすべての投資を放棄したのではなかった。 同年、カカオで該当事業を準備していた職員が独立して「清掃研究所」というスタートアップ企業を設立した。 そしてカカオの投資専門子会社のケイキューブベンチャーズは、 この企業に10億ウォンを投資した。 外国の巨大投資会社も国内ホームクリーニング市場に手を伸ばしている。 2015年に設立されたホームクリーニングO2O企業の「微笑」は米国最大のベンチャー投資社である Yコンビネータから31億ウォンの投資を受けた。 YコンビネータはAirBNBのような大型共有経済業者を育てたシリコンバレーの代表的アクセラレータとして知られている。

ホームクリーニングO2O企業は首都圏を中心に市場占有率を拡大している。 まだ人員紹介所の比重が強いが、技術を独占するO2O企業の市場蚕食の速度は無視できる水準ではない。 韓国家事労働者協会のチェ・ヨンミ代表は 「家事労働市場でプラットホーム労働の市場占有率が10%を越えたと把握している」とし 「プラットホーム労働をする家事労働者が毎年約1.5倍増加していて、 特に首都圏を中心に急速に拡大する傾向」と説明した。 既存の職業紹介所中心の市場が、プラットホーム基盤サービス市場へと渡るのは 時間の問題だということだ。 実際に「微笑」は設立3年ほどで注文が100万件を越え、「代理主婦」に登録された家事労働者は8千人を突破した。

プラットホーム労働は「家事労働者」を解放したのだろうか

技術力と接近性、価格競争力で優位なホームクリーニングO2O企業は 「家事労働サービス」の専門化と多角化を試みている。 既存の「家政婦」、「家事手伝い」という呼称は「マネジャー」、「クリーナー」といった洗練された呼称で代替された。 また既存の家事労働者が清掃業務と食べ物、ケアなどの家事労働全般の業務を遂行したのに対し、 O2O企業は清掃とケアなどの各領域を分化し、専門化した。 だが労働条件の変化は許されなかった。 共有経済、プラットホーム市場に抱き込まれた人員は、 相変らず「労働者」の名を持つことができない。 労働者性を認められないので、勤労基準法などの労働法も適用されない。

プラットホーム基盤サービス企業の供給者運営方式は、職業紹介所とは明らかに違う。 職業安定法によれば、既存の有料職業紹介所は労働者を直接管理・監督したり勤労条件などに介入することができない。 職業紹介所は需要者と供給者をマッチングして手数料を受け取る、ただそれだけの役割を果たす。 しかし専門性を強調してブランド価値を広報するホームクリーニングO2O企業は、 それなりの「サービス マニュアル」で労働者を管理して統制する。 会社のロゴが付いたエプロンを着用させ、 サービスの礼節と応対法の教育をするのも「ブランド価値」向上のためだ。

実際に労働者たちはアプリを通じて出勤する瞬間から業務開始、 そして業務終了まで会社にすべてを報告しなければならない。 遅刻が予想される場合は必ず会社に報告しなければならず、 業務が取り消されたという知らせも会社から伝えられる。 業務範囲も企業の統制下にある。 労働者たちは基本サービス(洗濯、トイレ・厨房・居間・部屋清掃、ゴミ捨てなど)を中心に、 さまざまな業務オプションが追加される会社のマニュアルによって業務を遂行する。 その上、評価の結果と等級により業務に差別が置かれたり制裁を受けたりもする。 実際にほとんどのホームクリーニング企業は顧客から該当家事労働者のサービス評価の結果を集めている。 これは後で、報酬や業務制限のペナルティとして作用したりもする。

ここまでくると、家事労働者とプラットホーム企業の間の勤労関係、 つまり使用従属関係の問題に帰結するほかはない。 会社が指定した場所と時間に働き、勤務時間の変更や勤務状況を報告しなければならないなど、 事実上使用者から相当な指揮・監督を受けているためだ。 そればかりか、家事労働者は第三者を雇用して業務を代行させるなど 独立して事業を営むことができない。 実際にプラットホーム企業は指定された家事労働者ではない他人が 代わりに業務を遂行することを禁じている。 専門性と共に安全性をブランド価値として打ち出しているためだ。 他人が代わりに業務を遂行する場合、住居侵入罪が成立することもあるという脅しも忘れない。 「内国人」の「女性」だけを採用する慣行も、「安全なサービス」という認識を確保するためだ。 また労働者は会社から時間による一定の報酬を支払われるだけで、 労務提供による利益の創出と損失の危険負担がない。 2009年12月、雇用労働部は上のような理由で療養保護士の労働者性を認めている。

4次産業革命も救えない労働条件

家庭から職業紹介所を経て共有経済企業まで。 市場が変わっても、技術が高度化されても、 家事労働者の労働条件は絶対不変の法則のように立ち止まっている。 労働者性を認められない彼らはすべての法的保護装置から排除される。 職業紹介所が家事労働の唯一の斡旋機関だった2014年を基準として 家事領域労働者の四大保険加入率はせいぜい6.2%だ。 そしてプラットホーム市場が開かれた現在も、家事労働者は相変らず四大保険の死角地帯にある。 賃金水準も足踏みだ。 2014年の家事労働者の時給は約1万1359ウォン。 現在のプラットホーム家事労働者の賃金も1万1000〜1万2000ウォンで、同等の水準だ。

休憩時間と食事時間が認められない家事労働者らはさらに増加している。 ホームクリーニング企業の場合、サービス時間に労働者の休憩や食事時間が入らないからだ。 サービス時間には私的な通話などの携帯電話使用も自制しろと指示される。 しかし2015年、国家人権委員会が発表した 「非公式部門家事労働者人権状況実態調査」の結果によれば、 営利職業紹介所に所属する家事労働者の64.6%が休憩時間や食事時間が保障されていると答えた。

業務上の不当な待遇から労働者を保護する装置も思わしくない。 家事労働職種の労働者のうち女性の割合は約98%で圧倒的だ。 その上「家の中」という密閉された空間で働くので性暴力をはじめとする多様な危険に露出する。 ただ「女性」だけを採用するプラットホーム企業が多いが、 性暴力や不当な待遇に対処する教育はなされない。 業務上の災害や性暴力、監視、人格的冒涜に対応するマニュアルはなく、 ただ顧客へのサービスのためのマニュアルだけが一方通行式で注入される。 職業紹介所もあまり違わない。 人権委は実態調査報告書で 「賃金などの労働条件、利用者との紛争調整、人権侵害予防、職務教育訓練などに関して 斡旋機関が持つ影響力は高くない」とし 「家事労働者斡旋機関は最低の社会的安全網を提供できず、 利用者との関係において『公正で合理的な』労働条件基準を設定する役割を果たせていない」と指摘している。

結局、プラットホーム家事労働市場の拡張は、 「多数の職業紹介所」が「少数の独占業者」に再編される過程だ。 同時に少数のプラットホーム業者が法の規制を逃れ、利益を積み上げる過程でもある。 実際に、職業紹介所は職業安定法の規制を受ける。 手数料も策定されている。 だがホームクリーニングO2O企業は「1件当たりの手数料」の構造だ。 A社の場合、顧客のサービス利用料のうち約17%を手数料として、 残りを報酬として支払っている。 家事労働者が週5日、一日一件ずつ、一月間働くと最低15万ウォン以上を手数料として稼ぐ。 市場を独占した少数の企業は低価格競争を行い、その過程で労働者の労働条件はさらに悪化する。 一時、ホームクリーニング分野のウーバーと呼ばれた米国の共有経済企業 ホームジョイも労働条件悪化の議論に苦しみ、結局破産を申請した。 ホームジョイは顧客を拡大するために無理な割引政策を試み、 労働者は最低賃金と超過勤務手当も受け取れずに働かなければならなかった。 結局ホームジョイは労使紛糾と法的な争い、 過度な事業拡張による経営難で2015年サービスを終了した。 ホームジョイに投資した有名ベンチャーキャピタルの一つがYコンビネータだ。

チェ・ヨンミ代表は 「技術を独占する少数資本に利益が流れる構造が最大の問題だ。 競争が激しくなるほど労働条件は悪化して不安になる」とし 「共有経済を所有し統制する主体が誰なのかを考えるべき時」だと強調した。[ワーカーズ52号]

66年間、労働者ではない

「お手伝いさん」から「派出婦」を経て、今の「マネジャー」と呼称されるまで。 家事労働者は一度も労働者として暮らした歴史がない。 1953年に勤労基準法が制定された時も、家事労働者は労働法の適用対象から排除された。 現在も勤労基準法第11条の「適用範囲」の条項には 「家事使用人に対しては適用しない」という但書条項がついている。 そのために家事労働者は最低賃金法も適用されず、 勤労者退職給与保障法、期間制法、その上、 男女雇用平等と仕事と家庭両立支援に関する法律からも排除された。 各種の社会保障法からも家事労働者は無条件に「列外」だ。 労災補償保険法と雇用保険法施行令も家事労働者を適用対象から除外している。

2011年、ILO総会では「家事労働者の人間らしい労働に対する協約」が採択された。 家事労働者も労働法で保護されるようにする規定だ。 当時、韓国政府もILO総会に参加して協約に賛成票を投じた。 だが韓国での家事労働は相変らず幽霊のような存在に留まっている。 ILO総会以後、国会では家事労働者にも労働法と社会保障法などを適用させる勤労基準法改正案が着実に発議された。 18代国会から現在に至るまで、家事労働者も改正案通過を国会に要求し続けてきた。

だが国会環境労働委員会ではいつも法案は困難に陥った。 2017年に政府が発議した特別法も、環境労働委法案審査小委に上程さえできなかった。 国会でさえ家事労働者法案が幽霊扱いされているのだ。 ある市民社会団体の人物は 「昨年は通過できたはずだ。 だが国会環境労働委幹事の韓貞愛(ハン・ジョンエ)議員室で 『野党が反対する』という理由で消極的に対応した」とし 「家事労働者法案がいつも次順位として扱われることが最大の問題」と指摘した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-03-11 22:07:19 / Last modified on 2019-03-12 12:23:07 Copyright: Default

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