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労組幹部の「サムスン嘆願書」は「個人的逸脱」だったのか?

[ワーカーズ・イシュー]『サムスンの特殊性』と『交渉戦術』

ユン・ジヨン記者 2018.06.27 14:11

労組破壊犯罪で拘束されたサムスン電子サービス専務に嘆願書を書いて免職(解雇)になった金属労組幹部のチョ某氏が再審でも免職措置された。 金属労組中央執行委員会は6月6日、全員一致でチョ氏に議員免職処分を決定した。 チョ氏が嘆願書を提出した事実には異論も争う余地もないということだった。 チョ氏はその日、中央執行委員に最後の弁を作成して配布した。 彼は「どんな決定が出ても手続きに従い誠実に臨む」と明らかにした。 チョ氏は手続きにより、6月15日中央委員会に再審を請求した。 18日に開かれた金属労組中央委員会でチョ氏に対する懲戒を「停職3ケ月」に下げる修正案が上がってきた。 会議に参加した中央委員54人のうち50人が反対し、修正案は否決された。 免職(解雇)が決定した1審原案に対する採決が行われた。 54人中47人が賛成、7人が反対票を投じた。 この日の決定でチョ氏の免職処分が確定した。

本当に「組織的背景」のない「個人的逸脱」だったのか

5月14日、チョ氏がサムスン労組破壊幹部の拘束令状審査の過程で不拘束嘆願書を提出した事実が知らされた。 金属労組は4日後に「サムソン資本のための嘆願書は民主労組に対する背信です」という題名の声明書を発表した。 労組はここで「現在までは組織的な背景なく、個人がサムスン資本のために嘆願書を提出したと把握している」と明らかにした。 この事件を批判的に見る労働界内部の視点はほとんど同じだった。 「個人的な逸脱について公式に立場を出すのは恰好が変だ」ということだった。

だが彼がこれまでサムスン電子サービスの交渉過程に緊密に介入してきた過程を調べれば、 単に「個人的な逸脱」で片付けるには無理があるように見える。 特に4月17日のサムスン電子サービス労使直接雇用合意の過程でチョ氏が直接的な役割を果たした疑いもあった。 当時、チョ氏は「ワーカーズ」との通話で 「支部には交渉権がないので何も話すことはない。 今の状況はよくわからない」とし、 「交渉権者でもなく、離れている人に何を聞くのか」と一切の回答を拒否した。 だが実際にチョ氏は労使直接雇用合意の前に、 サムスン電子サービスのチェ・ピョンソク専務と会って嘆願書を約束した。 サムスン電子サービスの労使合意は秘密裏に議論され、電撃的に発表された合意だった。

チョ氏がサムスン電子サービスの元請と交渉ラインを作ったのは2014年頃と言われる。 ヨム・ホソク烈士闘争の後、労使が「ブラインド」交渉を始めてからだ。 チョ氏はブラインド交渉を主導してきた人物だ。 人物も、場所も、内容も、すべて非公開だったブラインド交渉は、当時多くの議論を呼んだ。 当時、チョ氏は公開されていない人物と1対1で非公開で単独面談交渉をした。 チョ氏をはじめとする関係者はこれをサムスンの「特殊性」のためだと主張した。 労組もブラインド交渉で導き出された交渉の結果に印鑑を押して、これを黙認した。

金属労組はブラインド交渉の問題を知らないわけではなかった。 翌年9月、金属労組中央執行委員会に「サムスン電子サービス闘争、交渉、組織運営評価」案が提出された。 金属労組はここで「サムスンとの非公開交渉は、公開交渉、集団交渉、交渉会議録など、 既存の金属労組の交渉慣行を完全に破壊した」と評価した。 合意以後に団体協約の内容をめぐり労使が衝突したが、 労組は内容を確認する方法がなかった。 労働側が持っていたのはただ 「労働側の実務幹事が実務交渉チームに口頭で報告した交渉状況を記録した実務交渉チームの会議結果だけ」だったためだ。 交渉が1対1の単独面談方式で行われ、実務交渉チームが「交渉単位」の役割ではなく 「最初に交渉を報告を受ける」単位になったという評価もある。 非公開交渉の情報が情勢判断、闘争方向設定の唯一の根拠になり、 労組交渉総括責任者は交渉総括だけでなく、闘争状況まで総括するようになった。 また、金属労組は主体になるべき支会が交渉の当時、周辺的な役割に留まったため、 合意事項をめぐって現場では混乱も発生したと評価した。 当時、金属労組は 「労組内部で非公開交渉ではなく他の交渉構造を作れないのかについての公開的な議論と討論がなかった」ともした。

「サムスンの特殊性」と非正常な「交渉戦術」を黙認した結果

批判的な評価があったとしても、 労組は非正常な交渉ラインとサムスンの特殊性を認めてきた。 そしてこうした非正常的な構造は現在まで続き、チョ氏をめぐるさまざまな疑惑と事件を生んだ。 金属労組京畿支部運営委でチョ氏が話したことによれば、 直接雇用発表の何日か前にチェ・ピョンソク専務とチョ氏が会って 「直接雇用発表」と「嘆願書作成」をバーターした。 そしてサムスン電子サービス支会にチェ専務との出会いを報告し 「揺らがずに直接雇用を一貫して進めなさい、そうすれば可能かもしれない」という意見を伝えた。 またチョ氏は「4月の週末ぐらいに支会から『直接雇用についての合意文をもうすぐ発表できそうです』という連絡を受けた」とし 「ただそうしろといってはいけないので、 金属労組委員長と民主労総委員長に緊急に報告しなければならない、 そんな注文をして金属と民主労総に報告をすることになった」と明らかにした。

チョ氏はチェ専務との「ディール」を「交渉戦術」だと主張した。 彼は京畿支部の運営委で 「私は交渉戦術として直接雇用すれば(チェ専務と交渉ラインにあったという事実を裁判所に)証明してあげよう、 そう話したので交渉戦術で対応をした」とし 「全部明らかにすると以後の後続交渉に影響すると個人的に考えた」と述べた。 彼が労組に提出した経緯書でも 「2014年にも過去の民主労組常識と合わない、いわゆる『ブラインド交渉』をした。 非正常だと見る視点も少なくなかったが、新しい壁の前で選択した『変則』だった。 この瞬間にもサムスンの障壁を越えるには、全く違う接近が必要だと考えた」と明らかにした。

また「『サムスンという特殊性』と『民主労組の一般的常識』が衝突しかねない。 『サムスン労使関係の特殊性』を理解できない人は少なくないだろう。 一般的な労使関係の『原則』を強調する人たちは、 私の『サムスンを越えるための交渉戦術』をつまらない弁解だと感じるかもしれない」と抗弁した。 ブラインド交渉で始まった非正常な「交渉戦術」が労組の黙認でさらに不透明で私的になったわけだ。

実際に労働界の一部では嘆願書の提出が「交渉戦術」だったとし、 懲戒を阻止しようとする動きも起こった。 チョ氏が活動してきた金属労組京畿支部は5月21日に真相調査を提案して 「私たちが確認した内容によれば、彼は『直接雇用』を引き出すための交渉戦術として嘆願書を活用した」と主張した。 同月28日には「組合員の皆さんに差し上げる文」で 「どう判断するのかによって、財閥資本と労組破壊犯のために動いた背信行為になることもあり、 反対に直接雇用に進むことで無労組サムスンに民主労組の旗をたてる努力と見ることもできる」と強調した。

だが隠密に席を占めた「交渉戦術」と「交渉ライン」は権限を越える個人的取り引きまで続いた。 ブラインド交渉以後、元請との交渉ラインを持つようになったチョ氏は、 その後支会と元請を連結する唯一の窓口になった。 チョ氏も京畿支部運営委で「サムスン電子サービス支会の立場としては、 元請に意見を伝えるルートが経済人総連と警察と私の3つだった」として 「支会が要請した時、支会の判断を伝えること、 あるいはサムスンから何かの要請がある時に伝えることは時折した」と明らかにした。

2016年にはサムスン電子サービス支会の元幹部のパク某氏が協力業者代表から6千万ウォンの金品を得る過程にも、チョ氏が介入したという。 パク氏は「チョ氏が私に『代表が慰労金の話をするので会ってみろ』と話したので、 何の名分で慰労金をくれと言うのか、彼と会う名分が必要ではないかというと、 チョ氏が『話しておいた』と話した」とし 「代表が『チョ氏と退社問題に合意した』と言うので『私の退社問題をチョ氏と話すのか』と言うと、 代表がそのまま電話を切った」と主張した。 チョ氏に事実関係を確認するために連絡を取ったが、 彼は回答を拒否して 「とても多くの攻撃と傷を受けました。 誰でも人権は尊重されなければと考えます」というメッセージを送ってきた。

4年前と同じようなもの

現在、チョ氏をはじめとする関係者は2014年のブラインド交渉から最近の嘆願書議論、 金品仲介など一連の事件までも「サムスンの特殊性」で置き換えている。 これに対する批判の声は「事情を知らない」とか、「現実的ではない」とか、 その上「労組を揺さぶる誹謗」だと片付ける。 2014年当時〈メディア忠清〉がブラインド交渉を批判する記事を報道すると、 「サムスン内のタカ派が工作した逆攻勢作情報と見られ、交渉を壊す意図」だという非難があがった。 ブラインド交渉の過程で〈メディア忠清〉が交渉案全文を掲載すると、 チョ氏は「某メディアで交渉案全文が報道され、交渉がゆらいだ」とし 「サムスンサービス組合員のためのメディア」になれと批判した。 特にチョ氏は最近発行された自分の著書で、ブラインド交渉の批判を 「とんでもない論争」と表現した。 彼は「交渉をめぐるとんでもない論争が強調され、 闘争文化を深く評価して討論することができなかった」と明らかにした。 これについての解説はこうだ。

「サムスン電子サービス支会交渉をめぐり、『密室交渉』あるいは『ブラインド交渉』だと攻撃する主張があった。(...) 元請と交渉するべきなのに元請使用者は交渉の場に出てこない。 非公開の直接交渉、元請がブラインドの後に同席して下請労使が交渉をするブラインド交渉、 政治家をはじめとする第三者が仲裁する3者交渉をはじめとして、 元請と下請労組の間に複合的な交渉方式が誕生する。 これを見ることができず、正規職が使用者と交渉するように下請労組が公開でサムスン電子サービスと交渉をすべきだという主張は現実を無視した観念に近い。 サムスン労働人権守備隊、2015参照.」

4年経った現在、各種の疑惑が明るみに出ているが、やはりこれに対する反応は似ている。 5月23日、チャムセサンは2014年のブラインド交渉直後にチョ氏の夫人が運営する心理相談業者とサムスン電子サービス協力業者が数の契約を結び、4年間委託契約を結んでおり、 チョ氏の助言により支会幹部が該当業者を選定したという事実を報道した。 最近ではチョ氏が支会前幹部の慰労金6千万ウォン受領の過程で仲介人の役割を果たしたという疑惑も報道した。 報道の後にサムスン電子サービス支会の関係者や幹部は「悪意的記事」だ、 あるいは「労組を壊す意図」ではないか、 「労組がこわれたら良いのか」と抗議した。 資料の入手経緯や取材源情報を聞いて、該当記事が名誉毀損の余地があると語調を高めることもした。 事件後の労働界の反応も似ている。 相変らず「サムスンの特殊性」と「交渉戦術」に対する批判と評価はあまり出てこない。 密室協議と非公式の交渉ライン、これに始まった労組幹部個人の情報独占と権限外の活動などは 「労組内民主主義」に対する問題に収斂されることができない。 去る18日、金属労組中央委はチョ氏の「免職」を確定し、 同時にチョ氏の「免職」を確定するにとどまった。〈ワーカーズ44号〉

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-07-17 20:28:11 / Last modified on 2018-07-17 20:35:41 Copyright: Default

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