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出産と育児をするのが女性労働者?

[ワーカーズ・イシュー(2)]文在寅政府の女性労働政策を調べる

パク・タソル、ユン・ジヨン記者 2018.05.03 19:06

文在寅(ムン・ジェイン)政府は昨年12月26日 「現場の声を入れた女性雇用対策」を発表した。 雇用労働部、女性家族部、保健福祉部などの関連部署7つが総出動して作った今回の対策は、 政府が5年間続けている女性雇用労働政策ロードマップで、 「第6次男女雇用平等および仕事・家庭両立基本計画(2018年〜2022年)」でもある。

△差別のない女性雇用環境の構築、 △出産・育児による経歴断絶予防、 △女性再就職促進という3大政策課題からわかるように、 今回の対策は女性の経歴断絶の原因になっている妊娠と育児による苦情の解消に焦点を合わせた。 妊娠した状態で育児休職ができるように法改正を進め、 一日2時間の勤労時間短縮請求権を妊娠期間中ずっと使えるようにした。 配偶者の出産休暇を2022年まで最長10日(現行3日)に拡大し、 育児休職給も上げる計画も含まれていた。

文大統領は昨年12月26日、新政府になって初めての低出産高齢社会委員会懇談会で 「深刻な人口危機の状況を解決する最後のゴールデンタイムが今」とし 「女性が結婚、出産、育児をしながら仕事と暮らしを守って行けるようにすることが最も重要だ」と強調した。

「文在寅政府の女性労働政策にないもの」

こうしたのような文在寅政府の女性労働政策を労働界はどう見ているのだろうか? さる2月27日、民主労総、韓国女性民友会など5つの団体は 「文在寅政府の女性労働政策にないもの!」という名前の女性労働大討論会を開いた。 この席では文在寅政府の女性労働政策が、出産と育児による苦情解消程度に終わっているという批判が続いた。 本当の「現場の声を入れた女性雇用対策」を要求する声も殺到した。

韓国女性労働者の会のイム・ユノク常任代表は、政府の対策からは性平等の哲学が抜けていると指摘した。 イム代表は「女性は『経歴断絶憂慮を解消する政策の樹立対象』程度に限られており、 募集、採用、業務配置、昇進、退職に至る全過程での性差別是正が核心的に扱われなかった」とし 「主に30人未満で働いて、労働人権の死角地帯に置かれている女性労働者対策も不足」と評価した。 続いて「文在寅政府でも最低賃金が上がれば女性の低賃金問題が解決し、 非正規職の正規職化政策が定着すれば女性非正規職の問題が解決されるという安易な認識がさまようだけで、 性平等を国政哲学において対外的に宣言し、これを実現する対策は相変らず不足」と指摘した。

政府は女性の経歴断絶の要因として妊娠と育児をあげたが、まさに現場の声はそれから多少ずれている。 「ソウル市女性の経歴断絶経路および影響要因分析」 [1] によれば、 女性が選んだ経歴断絶要因の中で一番高い割合を占めたのは「勤労条件(27.5%)」だった。 結婚、妊娠、出産などの生涯イベントと答えた割合は13.7%に終わった。 女性労働政策の主な改善課題が「雇用の質」なのに、 政府の対策は相変らず核心からずれている。

民主労総のキム・スギョン女性局長は 「出産と育児は相変らず女性経歴断絶の主要な要因だが、 最近、非婚を選択する女性が増加している状況でもM曲線が緩和されない理由は、 女性の雇用が最初の進入時期から安定的ではないから」と説明した。

労働市場での性差別構造は統計でもはっきりとあらわれている。 男性と比べて64.1%(2016年基準)水準の賃金を受ける女性労働者の現実は、 10年前と特に違わない。 2006年の場合、女性賃金は男性賃金の61.5%水準だった。 また、女性労働者の41%は各種の差別と雇用不安に苦しむ非正規職の身分だ。 これに反して男性の非正規職の割合は26.4%で女性よりはるかに低い。

イム・ユノク常任代表は「問題になった看護師職種の『燃やし(訳注:深刻なパワハラ)』文化も、 看護業務の専門性に比べてはるかに低い賃金、人員不足による高い労働強度と長時間労働などの構造的な問題で、 『女の方が恐ろしい』という『女敵女(女の敵は女)』ではないのはあまりにも当然だ」とし 「女性が集中する業種なら専門性を認めず低賃金の原因になるということ自体が性差別であり、 これは保育教師、療養保護士の低い処遇の理由でもある」と指摘した。

時間選択制雇用の拡大政策に対する憂慮も出てきた。 時間選択制雇用は李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)政権が経歴断絶女性を就職市場に誘引するとして無分別に増やした雇用だ。 文在寅政府も時間選択制雇用を拡大するという計画を明らかにした。 すでに現場では時間選択制雇用による「職務、賃金、訓練、昇進などの労働条件での差別」と 「組織内の人間関係で分離した集団に存在して周辺化される」問題を経験した。 全国女性労働組合のナ・ジヒョン委員長は 「公共部門の正規職転換の過程で短時間労働者を必要のない労働とさげすんで雇用を剥奪することに見られるように、 必要によって雇用を調整できる極度に柔軟な労働がまさに時間制労働」とし 「出産を前提として女性労働と雇用を設計するフレームから抜け出さなければならない」と批判した。

翰林大社会学科のシン・ギョンア教授も 「時間制雇用を女性が進んで選択するのかどうかは、彼女らが属する社会の制度的文化的脈絡で主観的な認識が形成され、 その結果、個人の選択であるかのように表現されるということだ。 したがって、時間制雇用を自発的に選択した女性が多いという事実は、 その社会の中の女性がケア労働の責任を相変らず重く感じているという事実の確認として解釈されなければならない。 このような点で韓国社会の時間制雇用選好現象についても再解釈が必要だ」と分析した。〈ワーカーズ42号〉

付記
[1] クク・ミエ、ソウル市女性の経歴断絶経路および影響要因分析「職場を止めた理由」(2017、ソウル女性家族財団)

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
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