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ヨム・ホソク烈士の死亡後、「基準協約」から「直接雇用」合意まで

[サムスン労働者遺体奪取報告書(2)]団体協約を紙くず扱いしたサムスン

ユン・ジヨン、キム・ハンジュ記者 2018.05.02 16:52

ヨム・ホソク烈士の骨壷奪取から3日後の5月23日。 サムスン電子サービス使用者側は突然労組との交渉を始めることにする。 一か月ほど非公開の労使交渉が続いた。 そして6月28日、労使は賃金団体協約(基本協約)を締結した。 76年ぶりにサムスンに堂々たる民主労組ができたという評価が続いた。 だが労組認定と直接雇用争奪のための彼らの戦いは続いた。 ヨム・ホソク烈士4周年を前にして最近、検察がサムスン労組破壊文書の捜査に着手した。 烈士の名前がまた人々の記憶から呼び出され始めた。 そして4月17日。 サムスン電子サービス労使は直接雇用と労組認定に電撃合意した。 ワーカーズがヨム・ホソク烈士遺体奪取以後の団体協約から最近の労使合意までの過程を確かめた。

[出処:キム・ハンジュ記者]

2014年の基本協約締結から4年

最近、2014年のサムスン電子サービス労使交渉にサムスングループが介入した情況があらわれた。 検察とマスコミの報道によれば、5月の烈士死亡後、 サムスン電子がサムスン電子サービス支会側に「ブラインド交渉」を提案したと知らされた。 サムスンは元請の使用者性の問題が大きくなることを敬遠したため、労組に秘密交渉を要求し、 労組は烈士問題の解決のためにこれを受け入れたということだ。 また、検察がサムスン電子を押収捜索する過程で確保した「マスタープラン」には、 「韓国経営者総連合会(経済人総連)に交渉を委任して時間を最大限遅らせる」という内容が入っていたと知らされた。 実際に当時の交渉で使用者委員として、経済人総連のナム・ヨンウ労使対策本部長が出た。 その上、未来戦略室が交渉に介入した情況も検察の捜査でわかった。 ヨム・ホソク烈士以後に開かれた「ブラインド交渉」がサムスン労組破壊シナリオの一環だったのだ。

経済人総連と金属労組(サムスン電子サービス支会所属労組)は 非公開交渉の末に2014年6月28日、賃金団体協約(基準協約)を締結した。 ヨム・ホソク烈士が「支会の勝利を望む」という遺言と共に遺体で発見されてから 43日目の日だった。

基準協約の最初の項目は、ヨム・ホソク烈士関連の合意だった。 元請(サムスン電子サービス)が哀悼と再発防止を表明する報道資料を発表し、 烈士の遺体奪取関連の責任者を罰するということだった。 ≪ワーカーズ≫はサムスン電子サービス側に責任者処罰に関してどんな措置が取られたのかを尋ねたが、答は聞けなかった。 支会は烈士が生きている時、「アカ」、「従北」と暴言を吐いた梁山センターのチーム長が消えたことから見て、 彼が契約解約されたものと把握している。

サムスン電子サービス労働者たちは基準協約により、初めて「基本給120万ウォン(基準件数60件)」を得た。 以前は基本給なしで製品の修理件数によって手数料を受け取る100% 「1件当たり手数料」の賃金体系であった。 オフシーズンには1か月の収入が100万ウォンしかないこともあった。 2013年にチェ・ジョンボム烈士は 「これまでサムスンサービスで働いてとてもつらかった。 腹がへって生きていられず、隣で見るのも大変だった」というメッセージとともに自ら命を絶った。 それでも基本給は当時の最低賃金の110%水準の120万ウォンに終わった。 また使用者側は合意条項を悪意的に解釈して、既に支払った各種の手当てを基本給に算入した。 昨年9月にはある組合員が手当て不払い代表訴訟を提起して勝訴した。 現在、支会は訴訟を全国に拡大する計画だ。 未払い賃金の総額は最低25億ウォンになるものと見通している。

使用者側は団体協約を無力化するために仕事を減らすこともあった。 サムスン電子サービスのコールセンターに製品修理の問い合わせが入ってくると、 本社が内容を受け付けた後、各センターの労働者に業務を配置する形だ。 基準件数60件以上を処理すれば労働者に成果給を支払わなければならないので、 本社はコールセンターでの相談の段階で顧客が直接修理するようにした。 ある労働者は「コールセンターが故障を問い合わせた顧客に、自分で解決できるとし、 関連の動画を渡すこともあった」とし 「実際にそのために仕事が約30%程度減った。 周辺にも賃金が下がる同僚が多かった」と明らかにした。

基準協約の後にも労組弾圧は絶えなかった。 協力業者の偽装廃業と組合員の標的監査が続いた。 基準協約に「相互に廃業が発生しないように努力する」という条項があったが、 使用者側は労組活動が活発だった晋州・馬山・蔚山センターを各々2014年10月、 2015年1月と4月に廃業した。 最近の検察の調査では、サムスン電子サービスが協力業者評価の項目に 労組瓦解の成果を主な指標としていた情況が把握された。

2018年4月17日、直接雇用に電撃合意

4月17日。 サムスン電子サービス支会とサムスン電子サービス(株)が直接雇用に電撃合意したというニュースが伝えられた。 この知らせはこの日の午前、ある日刊紙の単独報道で外部に伝えられた。 午後1時にサムスン電子サービス(株)のチェ・ウス代表理事とサムスン電子サービス支会のナ・ドゥシク支会長が直接雇用合意書を作成した。 合意した項目は合計5項目で、 △会社は協力業者職員を直接雇用する、 △会社は労組および利害当事者と早い期間内に直接雇用細部内容に関する協議を開始する、 △会社は労組を認めて合法的な労組活動を保障するなどだ。

ナ・ドゥシク支会長は立場書を発表して 「サムスングループのサムスン電子サービス直接雇用を歓迎する」とし 「サムスン電子サービスの労働者たちは今日始めてサムスングループが80年間続けてきた鉄甕城のような無労組経営を廃棄させた」と明らかにした。

労働界もいっせいに歓迎と祝いの立場を明らかにした。 民主労総は「今日の合意をサムスンの反憲法、反労働80年無労組経営方針の放棄宣言と見なして積極的に歓迎する」と明らかにし、 金属労組は「サムスン財閥の無労組神話、金属労組が壊した」とあふれる感情を見せた。

サムスン電子サービスの労働者たちは労組結成から5年間、 労組認定と直接雇用などを要求して、サムスンとの困難な闘争を行った。 無労組経営方針を固守したサムスンは、元請使用者性も、労組も認めないまま弾圧を続け、 その過程でチェ・ジョンボム、ヨム・ホソク二人の労働者が命を失った。 ヨム・ホソク烈士の生母は「ワーカーズ」との通話で 「ホソクのために8千人もの人が正職員になった。 ホソクも労組も願いがすべて叶った」とし 「今は本当に息子の魂を探して梁山のソッパル山(烈士埋葬地)に行きたい」と明らかにした。

韓国社会で最も堅固で執拗に無労組経営を固守してきたサムスンが 間接雇用労働者の直接雇用と労組活動保障を約束したのは明らかに大きな事件だった。 そして、これは検察の労組瓦解文書の捜査がサムスンにどれほど大きな負担として作用したかを傍証することでもあった。 特にサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が監獄から釈放されて2か月しか立たない時点なので、 サムスンとしても早い「局面転換用」のカードが切実だったものと見られる。

5日目の電撃合意、手続き上の問題出るか

電撃的に発表された合意は、その過程でも電撃的な側面が強かった。 サムスン側の議論の提案から合意発表までにかかった期間はわずか5日だ。 労組によれば、去る4月13日、サムスン電子サービス(株)の実務者が サムスン電子サービス支会側に直接雇用議題を議論しようと提案してきた。 そのため当日の夜、支会は緊急統合執行委会議を開き、 使用者側が提案した議論に参加することを決定し、 翌日使用者側と会って提案の説明を聴いた。 合わせて支会はサムスン側の提案と支会の検討意見を整理して金属労組に報告することに決定した。

金属労組委員長と担当副委員長が支会から会社側の提案と進行状況の報告を受けたのは16日の午前だ。 またその日、支会は統合運営委会議で状況を報告し、今後の計画を議論した。 そして翌17日午前、マスコミの報道を通じて労使が直接雇用に合意した事実が知らされた。 金属労組未組織非正規室をはじめ、中央幹部さえ言論報道があるまで合意の事実を知らなかった。

その過程で手続的な問題について提起された。 今回の合意案に含まれた「直接雇用」転換は、組合員の勤労条件維持、改善に関する事項なので団体交渉の対象になる。 そして労使交渉に関する団体交渉権限および団体協約締結権限は金属労組委員長にある。 産別労組の下部組織である支会や支部は、産別労組の委任を受けなければ交渉ができない。 労組法施行令第14条によれば、交渉を委任する場合には交渉事項と権限範囲を決めて委任しなければならず、 委任された者の姓名と委任の内容を相手に通知しなければならない。 通常、金属労組は支部や支会に交渉を委任する場合は委任状を作成している。 これと同時に合意書には締結権者である産別労組委員長の捺印がなければならない。

だが今回のサムスン電子サービス労使合意書には金属労組委員長ではなく、 サムスン電子サービス支会長の署名が入っている。 委任状など別途の委任手続きも省略された。 そのため合意発表当日に開かれた金属労組中央執行委員会で問題が提起された。 中執では該当案が暫定合意(意見接近案)だが合意書と明記された点、 合意主体の金属労組が抜けてサムスン電子サービス支会の名義になった点が問題として提起され、 以後、このようなことはないようにするという意見がやりとりされた。

法律事務所セナルのキム・チャゴン弁護士は 「労使間合意は相互書面作成と捺印をしなければ効果がなく、 捺印は交渉権と締結権がある産別労組委員長がしなければならない」とし 「もしこうした原則が壊されれば会社が金属労組ではなく、 個別労組を相手に交渉しようとするなどの便法になりかねず、 金属労組の交渉権と締結権が弱まるかもしれない」と説明した。

これに関連して金属労組のキム・ホギュ委員長は 「意見接近案なのに合意案と誤って記された」とし 「サムスン側から議論の提案がきた後、翌日サムスン電子サービス支会長から電話で口頭報告を受け、 その後もずっと疎通をしてきた」と説明した。 金属労組のミン・ギョンミン未非局長も 「形式と手続きを備えなければならないが、電撃的に進んだので支会が(合意書を)作成する形式で整理になって、 中執でこれに関する問題を確認した」とし 「今後、本交渉が進められる過程では交渉の形式と手続きを明確にすることになる」と明らかにした。

一方、一般的な暫定合意書の場合、組合員総会を通過するまでは捺印しない。 もし組合員総会で否決されれば、会社が署名された合意案を口実として再協議を拒否する可能性があるためだ。 労組指導部の職権調印を牽制する側面もある。 現行法ではこうした総会承認権条項は違法だと見ているが、 民主労総などの労働界では組合民主主義の原則により、この正当性を認めるべきだと主張している。

[出処:キム・ハンジュ記者]

4月17日の合意以後、サムスンを変えて世の中も変えるだろうか

直接雇用合意という最初のボタンをかけたサムスン電子サービス支会は現在、 組織拡大事業に総力を傾けている。 初期に組織拡大に成功しなければ、使用者側主導の複数労組設立や非労組員に対する会社の抱き込み戦略などの逆攻勢があるかもしれないという判断のためだ。 合意以後、全国の支会幹部は年次を出して組織化事業に飛び込んだ。 4月22日基準、約350人の新規組合員が加入し、組合員が千人に拡大した。 現在、支会はサムスン電子サービス協力業者労働者約5500人を1次組織化の集中対象としており、 今後派遣職コールセンターの職員2000人、間接領域労働者2000人など、 1万人を対象に組織化事業を続ける計画だ。

今後の交渉過程では、直接雇用方式をめぐり労使が対立する可能性が高い。 成果給中心の賃金体系改編と直接雇用転換時期および規模、方法など議論議題も山積している。 使用者側が別途の職務、職群を分離して既存の正規職との賃金差別をおく直接雇用方式を持ち出す憂慮もある。 サムスン電子サービス支会のオ・ギヒョン政策委員は 「サムスン電子サービスが報道資料で彼らは子会社方式ではなく直接雇用方式を選んだと明らかにしたので、 子会社問題が出てくる可能性は低いと見るが、 二重賃金体系などの話を持ち出してくる可能性はある」と説明した。

サムスン系列会社の労働組合とサムスン資本を相手とする闘争計画をどう描いていくのかもカギだ。 現在、サムスングループにはサムスン電子サービス支会以外にサムスン支会、サムスン・ウェルストーリー支会、サムスンエスワン労組などが存在する。 これらの労組は相変らず労組不認定と複数労組を悪用した労組弾圧などに苦しんでいる。 サムスン・ウェルストーリー支会は正規職労働者で構成されているが、 使用者側が直接交渉を避けるために経済人総連に交渉権を委任して問題になった。 金属労組のミン・ギョンミン未非局長は 「来る5月4日、サムスン支会、サムスンウェルストーリー、サムスン電子サービス、サムスンエスワンの4つの労組の支会長による共同会議があって、 12日には幹部修練会が準備されている。 この席で共同対応などの議論があるだろう」と説明した。(ワーカーズ42号)

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-05-14 21:43:53 / Last modified on 2018-05-14 21:43:56 Copyright: Default

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