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大統領の1号業務「雇用委員会」の近況

[ワーカーズ]イシュー(4)

キム・ハンジュ、パク・タソル、ユン・ジヨン記者 2017.12.28 10:01

就任後、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の最初の業務指示は「大統領直属雇用委員会」の構成だった。 候補時代の1号公約だった「雇用創出」に総力を傾けるという意志だった。 「大統領直属」という言葉の通り、大統領が直接委員長になった。 会議も直接主催するといった。 長官級が委員長になった「労使政委員会」よりも地位が高かった。 雇用委員会は、労使民政の社会的大妥協により雇用を創出するという目標で旗を上げた。

青瓦台大統領執務室には「雇用状況版」が設置された。 単に雇用の増減の有無を確認する目的ではなかった。 雇用状況と雇用創出、経済指標だけでなく、 雇用の質まで常時モニターを怠らないという意図であった。 それほど悪くない非正規職雇用の量産ではなく、質が良い雇用の創出。 そして質が悪い非正規職雇用の正規職転換。 7か月前に発足した雇用委員会は、求職者と労働者の両方に、少しの間だけでも希望を持たせた。

[出処:青瓦台]

民主労総にとって「雇用委員会」とは?

民主労総は内部の賛否論争の末に雇用委員会への参加を決定した。 雇用委員会への参加を通して、不平等と二極化解消のための労働積弊清算を実現し、 低賃金-非正規職雇用をなくし、さらに多く、良い雇用を作るために役割をつくすという参加の弁を明らかにした。 付加条件も付けた。 雇用委員会の1次会議前までに労政交渉定例化についての明確な立場と実行計画が出されなければ「参加を再論する」ということだった。 現在まで4回の雇用委員会会議が進められたが、 労政交渉についての政府の明確な立場は出ていない。

「もしやと思ったが、やはりです」。 雇用委員会に参加している民主労総のチェ・ジョンジン委員長職務代行の言葉だ。 普通は二時間ほどの会議をするが、争点についての賛否討論や議論が全くできない構造だという。 チェ・ジョンジン職務代行は 「問題提起は主に政府がして、話したい人はわずか2〜3分の意見表明ができるだけで、争点の討論はできない」とし 「悪く言えばとても残念で、(労働界の参加が)外見を備えるだけだという考えを消せない」と吐露した。

事実、雇用委員会は去る6月の「雇用100日プラン」から10月に発表した「雇用政策5年ロードマップ」等、大型の雇用計画を発表してきた。 就任後100日で急いで推進する「雇用100日プラン」の13大課題の中には 「週法定勤労時間68時間を52時間に短縮する」という計画が含まれている。 国会に係留中の勤労基準法改正案の早期国会通過を推進するが、 うまく行かなければ雇用労働部の行政解釈の廃棄を推進するということだ。

だが約6か月後の11月23日。 国会環境労働委員会所属の民主党議員などは、 労働時間延長などを骨子とする勤労基準法改悪案かっぱらい採決を試みた。 主要内容は労働部の不法行政解釈による週68時間の勤労時間を2021年までに合法化するというものだった。 この他にも該当法案には休日労働手当てを削減し、 労働時間特例業種制度を存続させる内容が含まれている。 労働界は、環境労働委与野3党幹事の合意案が事実上、青瓦台の指示だと察している。

実際に文在寅大統領は、 12月11日開かれた首席補佐官会議で「できるだけ早い内に段階的施行を始められるように国会が決着をつけてほしい」と強調した。 翌日にはチャン・ハソン青瓦台政策室長が 「(重複割り増しの問題は)環境労働委与野3党の幹事が合意した通りに施行しよう」と要求した。 その日、与党は党政青の朝食会談で年内立法という糸口をつかんだ。 労働界では青瓦台が勤労基準法改悪に力を与えているという批判が出てきた。

内部的な意見の差を押して「雇用委員会参加」という政府の抱き込み戦略に応じた民主労総だった。 だがハン・サンギュン委員長の拘束期間が長くなり、勤労基準法改悪まで重なり、 労政関係にも亀裂が深まり始めた。 結局、民主労総のイ・ヨンジュ事務総長は12月18日、勤労基準法改悪中断と民主労総のハン・サンギュン委員長釈放、政治手配解除を要求して民主党本部事務所代表室ハンストに突入した。 今後、政府の賃金体系改編方向をめぐり労政間緊張関係は続きそうだ。 チェ・ジョンジク職務代行は「現在、政府が『正規職譲歩論』を露骨に話している。 これから年功序列型の給与体系廃止と職務給制度導入などの争点がますます表面化するだろう」とし 「また雇用委員会が非正規職の正規職化対象職務を等級化し、 もうひとつの非正規職を量産することについても相当な憂慮がある」と明らかにした。

公共部門雇用、大当たりだと思ったのに爆亡格

雇用委員会が打ち出した代表的な政策課題は「公共部門非正規職正規職転換」だった。 委員会は常時・持続的業務と生命・安全分野は非正規職のゼロ化を目標として政策を推進すると明らかにした。 だが公共機関と地方自治体などで進められる「正規職転換審議委員会」は「解雇審議委員会」だという非難に包まれ、漂流している。 雇用委員会の目標によれば、常時持続的業務は明確な例外事由がない限り、正規職に転換しなければならない。 だがガス公社と韓国水力原子力などの公共機関では、常時持続的業務を一時的・間歇的業務と歪め、転換除外にする事例が続いている。 特に韓国水力原子力の場合、転換対象者に直接雇用希望の有無を書面で提出しろと要求し、 転換対象者を縮小しようとする動きも把握された。

正規職転換を決める各機関の「転換審議委員会」は密室で拙速に会議を強行して論議を呼んでいる。 17市道教育庁の場合、審議委員会リストと会議の内容、資料など全てを非公開にしている。 「ワーカーズ」が情報公開請求制度を使って17市道教育庁に転換審議委員会委員リストを要求したが、 現在のところ一か所もリストを公開していない。 その上に構成現況だけを部分公開した済州特別自治道教育庁は 「正規職転換審議委員会リストは個人情報なので公開されると個人の私生活の秘密または自由を侵害する恐れがある」という事由をあげた。 審議委員会の人々のほとんどが使用者側の立場を代弁する人物で構成されており、 拙速審議になるケースも茶飯事だ。 そのため民主労総は教育庁正規職転換審議委員会を中断して原点から再検討しなければ審議委に参加しないと宣言した状況だ。

民主一般連盟のイ・ソニン委員長は 「初めて雇用委員会に入った日、李庸燮(イ・ヨンソプ)副委員長に 『類似同一労働に関連して、この政府はどう思っているのか』と尋ねた。 李副委員長は『類似同一労働は賃金を同じように支払うのが政府の原則』だと明確に話した」とし 「だが政府が何回も指針を発表したが、これを守っている地方自治体は一つもない。 雇用委員会にどんな期待を持っているのかは知らないが、 実際に期待した状況にはなっていない」と強調した。 チェ・ジョンジン委員長職務代行も 「雇用委員会は非正規職の正規職転換といった大層な政策を出したが、 これは予算が伴わなければ当初から不可能」とし 「政府の子会社転換方式や無期契約職は正規職転換とは思わない」と説明した。

公共部門の雇用をめぐる政策後退はこればかりではない。 雇用委員会は去る10月に「雇用政策5年ロードマップ」を通じ、 社会サービス公団設立を進めると明らかにした。 雨後の筍のように生まれた小規模な営利団体中心の社会公共サービスを 「社会サービス公団」で総括運営し、公共社会サービスと良質の雇用創出を拡大するという趣旨であった。 これにより、来年度に「社会サービス管理と振興に関する法律」の制定を進める計画だった。 だがこれはいくらも経たずに「社会サービス振興院」の設立という形態に後退した。 10月に保健福祉部が作成した資料には、公団ではなく「振興院」の形で進めると同時に、 核心サービスとして議論された保育、療養などを大幅に縮小するなどの内容が含まれていた。

それでも雇用状況版は回る

雇用委員会は、傘下に民間雇用専門委員会、公共雇用専門委員会などの専門委員会が設けている。 公共部門雇用をめぐる一連の状況が「公共雇用専門委員会」で議論される形だが、まだ進展状況はない。 公共運輸労組のパク・チュニョン政策室長は 「まだ公共部門の正規職転換などの問題を争点として扱うほどの水準ではない。 顔合わせを除けば12月22日が最初の会議」とし 「この場でも、どんな議題をどんな順序で議論するのかについての話がやりとりされるだろう」と説明した。

公共運輸労組はこの日の会議で △国民の生命、安全雇用拡充、 △良質の教育のための教育部門雇用拡充、 △社会サービスの良い雇用、社会サービス公団に拡大、 △公共部門非正規職の正規職転換、 △公共部門が低賃金労働者の処遇改善を先導、 △労働時間短縮による雇用拡大、 △雇用拡大のための制度改善の7種類の議題を提示している状態だ。 また議題別の議論の順序では、現在政策が後退している社会サービス公団設立問題と、 公共部門非正規職正規職転換を優先して議論することを提案した。

それでも雇用委員会の成果が何もないわけではない。 雇用委員会傘下の建設分科では、去る12月12日、建設産業雇用改善対策を確定した。 ここには建設労働者の賃金未払いを予防するために、発注者が賃金などを直接支払う「電子的代金支払いシステム」の拡大と、適正賃金制導入などの内容が入った。 だがこの政策さえ少なくない議論を残した。 「外国人労働者」取締り強化等を通じて「不法外国労働者退出」を進めるという内容が含まれたからだ。 この日に開かれた雇用委員会で、民主労総は建設現場の不法、便法根絶対策として提示された未登録移住労働者取締り強化政策については全面的な再検討を要請した。[ワーカーズ38号]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-01-04 11:15:39 / Last modified on 2018-01-04 11:15:40 Copyright: Default

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