放送界の変化を率いる「錐」のような女性労働者
[メディアタック] 「女だから」、「改編するから」そして「齢を取ったから」、女はつらいよ
クォン・スンテク(言論改革市民連帯) 2021.03.12 08:58
「ここに希望がありますか?
先輩たちはニュースナインのアンカーになって普通1年で局長になりました。
しかし私はもう7年目です。相変らず職級は部長です。なぜ? 女だから。」
JTBC「ミスティー」の、コ・ヘランが放送局をやめるにあたって吐きだした言葉だ。
しかしこのドラマは考えるべきことがある。
コ・ヘランはそれでも正規職だったという事実だ。
放送局内で、女性だという理由で昇進から外れた。
それ自体も問題だ。
2018年1月、英国の公営放送BBCで中国編集長として働いたキャリー・グレーシーが
男性の同僚より低い賃金だと差別問題を提起して辞表を出したエピソードは有名だ。
だが「それでも」という言葉を吐きだすほかはない理由は、
私たちが非正規職であふれる韓国社会を生きているためでないだろうか。
昨年12月、韓国労働社会研究所は
「放送局非正規職とフリーランサー実態-公共部門放送局フリーランサー人員活用」の報告書で
「公共部門放送局のフリーランサー10人に7人は女性(71.2%)で、
20代と30代の女性が75%内外を占める」とし
「放送局のフリーランサーのほとんどは作家、アナウンサー、リポーター、キャスターなどで、
特定の職業群で女性だけがフリーランサーとして活用される職務が16もあり、
性別賃金職務分離が確認される」と明らかにした。
放送局の正規職賃金を100とすれば、フリーランサーの労働者は24.7で、約1/3にもならない賃金を受けていた。
放送作家の平均報酬は186万ウォンだったが「女性」しかいない所の作家は平均165万ウォンを受けていた。
「齢を取った女を使うな」
88年にも問題になったこの言葉が相変らず通用する放送関係者
大田MBCのユ・ジウン アナウンサーは、
採用の過程で性差別で不利益を受けた代表的事例だ。
大田MBCは1990年代の中後半からアナウンサー職正規職に男性だけを採用した。
同じ時期、女性アナウンサー職は契約職あるいはフリーランサーだけで埋めた。
同一業務を遂行したのにだ。
結局、正規職と非正規職を分けた理由は「性別」しかなかった。女だから。
大田MBCの主要人物は
「女のほうが優れていても、こいつ(男性)を選んだ」と話した。
女性アナウンサーだけを非正規職として選んだ理由について
「齢を取った女を使うなとタックルが多く入ってくる」、
「視聴者のある人は『男は齢を取っても重厚な味があるが、
女はいつも可愛くなければならないからだめだ』という観点を持っている」と明らかにした。
88年にも問題になった話だが、同時に今日の現実をそのまま見せる言葉でもある。
場所が違うだけで、放送業界も女性が排除されてきた構造とシステム、
そして誤った放送文化が存在している。
その中で奮闘する人たちがいる。
「次の一歩が絶壁かもしれないという恐怖の中でも、
どうしても一歩を踏み出した錐のような人間(ウェブトーン ソンゴッ(錐))」、
それがまさにユ・ジウン アナウンサーだった。
担当していた番組から降板させられるなどの不利益を甘受しながらも、戦いを止めなかった。
幸い国家人権委員会が女性アナウンサーが提起した差別陳情について
「同一の業務を遂行する労働者なのに賃金、年次休暇、福利厚生などで陳情人を不利に待遇したのは性別を理由にした差別行為」とし
正規職転換を勧告して状況は変わった。
ユ・ジウン アナウンサーは大田MBC正規職として働いている。
実際、独自で働いていればくやしいことはなかったはずなのに…
放送局のフリーランサーの多くを占める作家の状況も大きく違わない。
低賃金が固定した職群の問題もあるが、さらに深刻なのはいつでも解雇されるという点だ。
昨年6月、MBC報道局内で10年働いた作家3人が一瞬にして雇用を失う事件が起きた。
MBC側は「番組改編および人的刷新」を解雇事由として説明した。
しかし実質的な改編はなされなかった。
番組進行者とコーナー名が変わっただけで、
作家が担当していた業務はそのままだった。
作家はこれまでの放送に対する情熱と努力が不正当だったと思い、静かに退くことができなかった。
ソウル地方労働委員会(地労委)に不当解雇救済申請を提起して本格的な戦いを始めた。
だが戦いの原形そのものが彼らに有利ではなかった。
MBC使用者側は「(作家たちは)独自に委託業務(原稿作成)の遂行ができるフリーランサー」と主張した。
そして地労委はその主張をそのまま受け入れて却下を議決した。
作家たちは労働者ではないので、不当解雇かどうかを確かめる要件も備わっていないという意味だ。
今回の地労委の決定を見て怒りがほとばしった。
CJB清州放送を相手に勤労者地位確認訴訟を行い死亡した故イ・ジェハク フリーランサーPDを思い出したからだ。
14年間働いて初めて本人をはじめ同僚非正規職労働者の賃金などの処遇改善を要求したという理由で解雇されたイ・ジェハクPD。
彼が自ら命を絶った時期は、あいにく清州裁判所がCJB清州放送の主張を認めた直後だったという事実をわれわれは覚えている。
ではどうだろうか。
果たして放送作家は独自に業務を随行できるのだろうか?
放送を少しでも知っている人なら「そうだ」とは答えられないと確信する。
MBCのニューストゥデイで国際ニュースを担当したA作家の状況もそうだった。
多様な国際ニュースのうち、アイテムを選んで次長(記者)に報告すれば、
次長がアイテムを選んで順序も指定した。
その過程でアイテムが追加されることもあった。
それでも地労委はイ氏が「独自に業務を遂行した」と判定した。
では、10年間、MBC報道局の記者の監督と指揮の下で働く必要がなかったということなのか。
MBC報道局作家の解雇事態のように、
放送局が作家をはじめとする非正規職労働者を簡単に解雇するときの言葉がある。「改編」。
2018年、SBSの「ニュースドリー」の作家らも「改編」を理由に
「明日から出てこなくてもいい」という言葉を聞いた。
昨年12月、KBSの「ジャーナリズム トークショーJ」非正規職解雇事態も改編が主な根拠だった。
放送局はそっくり「より良い放送のために改編は仕方ない」と言う。
だが一日で雇用を失うことになる非正規職労働者にとっては生存の問題だ。
それでも放送関係者として働き続けようと思えば、口を閉じて静かにやめなければならない…。
MBC報道局の作家解雇事態を見て思い出した事件がある。
2012年7月、MBCの作家6人が一度に解雇された事件。
「MB落下傘」と呼ばれた金在哲(キム・ジェチョル)社長の時だった。
彼に対抗して全国言論労働組合MBC本部が長期ストライキをしていた。
MBC使用者側は作家が労組のストライキを擁護したという理由で解雇した。
当時、作家たちは「非正規職」という不安定な位置でも公正放送のために戦う正規職労働者たちと意を共にした。
そして2020年6月、MBCでまた作家解雇事態が起きた。
現在、MBCは公正放送のために闘争した主役が経営権を握っている。
この風景をどう見るべきだろうか。
MBC解雇作家が鬱憤の中で金在哲(キム・ジェチョル)社長に言った言葉は
「作家は噛んで甘い汁がなくなれば捨てる『ガム』なのか?」だった。
ではその時の作家たちは同僚であり、今は噛み終わったガムだということか。
原文(チャムセサン)
翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可( 仮訳 )に従います。
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Created on 2021-03-16 08:28:03 / Last modified on 2021-03-16 08:28:06 Copyright:
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