本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:[企画連載]すべての労働に捧げます(2)
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1552656997670St...
Status: published
View


労働者は死なず傷つかずに働かなければならない

[企画連載]すべての労働に捧げます(2)

イ・ミスク(全国不安定労働撤廃連帯常任活動家) 2019.03.06 10:52

〈すべての労働に捧げます〉連載を始めるにあたって

非正規職が増えるにつれ、労働者の権利はますます剥奪された。 ところで労働者たちが正規職になれば幸福になるのだろうか? 今は正規職労働者も雇用不安に苦しみ、未来の希望を失っている。 少しでもさらに稼ぐためには長時間労働も拒まず、 差別と階層化に馴染み、非正規職を蔑視したりもする。 時には非正規職を雇用の安全弁にしようとする。 非正規職という雇用形態が労働者の権利を傷つけているが、 非正規職運動の目標は単に雇用形態を正規職に変えるだけではなく、 「すべての労働者の権利を保障」することでなければならない。 非正規職ない世の中作りネットワークと全国不安定労働撤廃連帯は、 労働者にとってどんな権利が保障されなければならないのか、 非正規職の目で見て共に討論しながら「非正規職社会憲章」18条項を作った。 その内容は「すべての労働に捧げます(五月の春出版社)」という単行本で発行された。 そのうち4つの条項について読者と共に話したい。

非正規職ない世の中のための社会憲章第8条

すべての労働者は死なず、 傷つかずに仕事をする権利がある。

20年前、私はペンを作る工場で働いていた。 ペンにインクを注入して箱に入れて包装するまで8種類の工程を経るが、 一週間ごとに工程を交代して作業した。 そのうちみんなが一番嫌う仕事が洗浄作業だった。 組み立ての過程で汚れたペンを洗浄剤できれいにする仕事だった。 シンナー、トルエン、メチルアルコール、ベンゼン、キシレンなどを混合した洗浄剤でいっぱいの5坪ほどの作業空間には きちんと開きもしない小さな窓一つと作動しているのかどうかも分からない ダクト一つが設置されていた。 垢だらけの防塵マスクは古い引出しの中に放置されていたし、 綿手袋二つと薄い衛生ビニール手袋が支給された保護具のすべてだった。

20年経った今でも洗浄室に満ちた鼻を刺すような酸っぱい化学物質の臭いを記憶する。 初めてその工程に投入されてから3日間は酔っ払いのように目が座らなかったが、 3日過ぎれば何ともなくなった。 綿手袋をを二重にはめて仕事をしても一時間もたたずに手袋はすっかり洗浄剤にぬれてしまったが、 長い間私を困らせていた右手中指の魚の目が、何回か洗浄作業をしてすっかりなくなって喜んだ記憶がある。 そのうちに何人かの姉さんが連続で流産したという噂が飛んだ。 何人かが会社にダクト施設を追加で設置するか、まともな保護具を要求したが、 それは受け入れられず、互いにその仕事を避けて表情を見ていた。

2000年序盤、工場に構造調整の嵐が吹いた。 いくつかの部署が分社されて人員が整理され、 作業者が足りないところには嘱託職が入ってきた。 自然に嘱託職に洗浄室業務が押し付けられた。 私たちにとって、洗浄室の作業環境改善や保護具支払いはもう関心の対象ではなくなり、 私たちが要求することでもないと考えた。 どうせ非正規職は長く働くわけでもなく、どうなろうとわれわれは有害物質から私たちの『安全』を守ったのだから。

労働者たちが直接作った「非正規職ない世の中のための社会憲章第8条」は、 労働者たちに「死なずに、傷つかずに仕事をする権利」があることをいっている。 有害で危険な業務は安全装置をしなければならず、 安全装置の「代わりに」非正規職を投入してはならず、 危険だと思う時はいつでも作業を中止できなければならないと宣言している。 20年前、われわれはまともな作業環境の改善や保護具の代わに嘱託職がその場を埋めた時、 それに反対して戦わなければならなかった。 非正規職を危険に追いやって守られる安全は本当の安全ではないことを、 そのように放置されて目をとじた安全でない職場は結局、 私たちすべてを危険に追いやるという事実を知るべきであった。

2001年から2016年までに労災事故で死んだ労働者は3万3902人だ。 防ぐ盾がない戦場そのものだ。 そのうち下請非正規職労働者の労災死亡率は飛び切り高い。 実際に中大型の労災を調べると死亡者の90%が下請企業の所属だ。 2月20日、現代製鉄唐津工場で外注業者労働者がベルトコンベアに挟まれて死亡した。 「死の工場」と呼ばれるこの工場では、この12年間で35人の労働者が事故で亡くなった。 そのうち下請の非正規職労働者は29人だ。 故キム・ヨンギュンさんが働いていた忠南の泰安火力発電所も同じだ。 5つの発電社で2012年から5年間に発生した事故346件のうち337件が下請で発生し、 2008年から9年間に労災で死亡した40人のうち37人が下請所属労働者だった。 造船所も、建設現場も同じだ。

[出処:チャムセサン資料写真]

下請労働者の労災発生率が高いのは、ほとんどの危険な作業が下請作業で行われているという意味でもある。 問題は、これらの労働者の死の本当の責任者が処罰されていないことだ。 元請の大企業は自分たちが負担するべき安全などの責任を下請企業に押し付ける方式で責任から抜け出る。 2008年に利川冷凍倉庫で工事中に火事が起きた。 40人の建設労働者が死亡したが、該当企業への処罰は2千万ウォンの罰金がすべてだった。 2011年に仁川空港鉄道でも5人の下請労働者が線路作業中、列車にひかれて死亡したが、 元請企業は何の処罰も受けなかった。 2017年5月1日にはサムスン重工業巨済造船所でゴリアテクレーンとタワークレーンが衝突し、休憩室に倒れる事故が発生した。 事故で下請企業に所属する労働者6人が命を失い、25人が負傷した。 途方もない重大災害が発生したが、当時処罰されたのはゴリアテクレーン信号手1人が過失致死傷容疑で拘束されたことがすべてだった。 サムスン重工業社長は立件さえされず、 事故発生から1年ほどでサムスン重工業造船所長など14人が不拘束起訴された。 労働者の死の本当の責任者が誰かと聞けば、 誰が一番多くの利益を持っていくかを調べなければならない。責任はそこにある。

それでも下請企業の責任が免除されるわけではない。 2016年、仁川の南洞工団にある携帯電話部品業者で働いていた労働者5人がメタノールに中毒して失明した。 事故がおきた事業場はすべてサムスン電子とLG電子の携帯電話を生産する3-4次下請企業だった。 下請企業は零細性を理由として労災を予防できる余力がなかったといい、 コスト削減のために不法派遣労働者を使うほかはないといった。 当然だ。 元請大企業と共生構造が定着しない以上、納品の締め切りに合わせ、 単価引き下げの圧力に耐え抜くためには労働者をさらに劣悪な環境に追いやるほかはない。 しかし企業の零細性が労働者を病気にし、 死に追い立てる危険な環境を放置する免罪符が与えられるのではない。 企業は「安全に関する措置と法をすべて守れば支払能力がない企業はつぶれる」と数年間、続けている。 1970年代に米国で労働者の健康と安全を保障する法律が制定され、 資本家は「永久的な大量失業を招く」と強迫したが、そんなことは起きなかった。 安全教育をする費用がないのなら、保護装備を備える条件がないのなら、 最低賃金にもならない賃金を支払って、 労災処理さえも敬遠する企業なら、つぶれるのが当然だ。 労働者の安全などは関心もない企業であれば。

死なず、傷つかずに働く権利は当然の権利だ。 その当然の権利は企業のさらに多くの利益創出のために捨てられる犠牲を甘受される。 その犠牲が労働者の命であってもだ。 利益創出が労働者の生命と安全より重要だという認識、 その認識が変わらない以上、われわれは死に続け、傷つき続け、病気にかかり続けるのかもしれない。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-03-15 22:36:37 / Last modified on 2019-03-15 22:38:30 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について