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「職務給」が招くもうひとつの「労働者身分制」

「職務給制度、公正で合理的賃金体系ではない」

キム・ハンジュ記者 2018.01.04 17:23

果たして職務給制度は政府が言うとおり、同一労働・同一賃金を実現する賃金体系なのだろうか? さもなくば、特定の集団労働者の身分を固定するもうひとつの差別制度なのだろうか?

全国不安定労働撤廃連帯は1月3日、イシュー・ペーパーを通して 「職務給は職務によって賃金、昇進体系、雇用構造などを別にする賃金体系で、 職務による差が差別に固定する効果を呼びかねない」と批判した。

撤廃連帯は「本来、公共部門の正規職化は常時持続業務に非正規職を雇用している問題を、政府が政策的に解決するという目標を持っていたが、 まさに正規職化の方法は子会社や無期契約職転換方式に変わり、 こうした流れは職務給制度導入とからんで進んでいる」と分析した。

最近、政府は公共部門の正規職転換政策とともに、職務給への賃金体系改編を進めている。 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は候補の時から成果給制を廃棄して 「産業単位標準職務給中心」に賃金体系を改編すると公約した。 企画財政部は職務給制度の導入に関する委託用役を続けている。 国策研究機関の韓国労働研究院のペ・ギュシク専任研究委員はマスコミを通じ、 職務給制度導入の必要性を積極的に主張している。

労働現場にも「職務給」の導入は活発に行われている。 仁川国際空港労使は昨年12月26日、正規職転換の過程で公社の直接雇用対象者を 「別途職群」で編成することに合意した。 行政安全部も12月27日に庁舎管理本部用役勤労者2435人を無期契約職に転換し、 職務給を適用すると明らかにした。

子会社や無期契約職転換も費用の論理から登場した。 ところで政府や企業は、これさえ長期的賃金の上昇を伴うという理由で、 賃金体系の改編まで共に議論すべきという立場だ。

撤廃連帯はこれについて 「政府は公共部門の常時持続業務に非正規職を使う慣行が誤りだとし、 これによる解決費用を職務給制度で労働者に転嫁している」とし 「これまでの誤りを正す費用は社会全体がいかに分担するのかを議論すべき問題だ。 政府が職務給、子会社などの段階的手続きと時間を我慢しろと言うのはまったくおかしい」と明らかにした。

「能力主義」の中の差別

最近起きた正規職-非正規職労働者間の対立で、 正規職労働者たちは「公正」と「競争」を話す。 公正な手続きのない正規職転換は「無賃乗車」でしかないということだ。 正規の教員が期間制教師、英会話専門講師など、 学校非正規職の正規職転換について教員の資格を語ることも同じ文脈だ。

現在、政府も 「(公共部門の非正規職・正規職転換対象者は)未熟練なので、 年俸ではない職務給制度が適当で、 これによる上向平準化が必要だ」と主張している。

新世界イーマートも2007年に「非正規職保護法」の施行の前に「キャッシャー労働者」5千人を正規職転換しながら職務給を導入した。 彼らは既存の正規職と異なる賃金と昇進体系を適用される。 2015年には「新人事制度」を通じ、共通職(正規職管理社員)、専門職(レジ係および店舗陳列労働者)へと職務を統合-分離した。 「専門職」群に分離した労働者たちは、 毎年最低賃金の引き上げ幅程度に賃金が上げられ、共通職への職務移動は不可能だった。

撤廃連帯は「(職務給制度で)能力主義は自分の能力により選抜され、 位階的な社会体制で配置・分配を受ける原則といえるが、 結局試験のような制度で能力に基づく競争を通じ職務の位置が変わるのだから、 これによる差異も公正だという信頼を社会全体が共有するようにする」とし 「公正性と合理性という包装は、政府の政策パラダイムの問題を隠すばかりでなく、 既存の正規職との差、職務職種間の差を装った労働階級内部の差別だという争点を隠している。 ところでこれはその前提も、過程も、結果も全く公正ではなく、 もうひとつの身分制を作り出してしまう」と指摘した。

職務給が呼ぶ労働者内部の分裂

撤廃連帯は職務給制度が導入されると 労働者の内部分裂の問題が深刻化すると診断した。

97年のIMF外国為替危機以後、資本所得は着実に増えたが、 賃金勤労者の下位90%の所得は1997年の約45%から2010年には約39%と減少した(イ・ビョンヒ、「労働所得分配率測定争点と推移」、2014)。 政府は減った労働所得分配率の中で非正規職問題の解決を試みた。 そして政府は「正規職譲歩論」を打ち出し、 労働者たちは与えられた「パイ」を取るための戦いを始めたのだ。

撤廃連帯は「企業はこれ以上の経済的成長が難しい構造的な矛盾により、 労働に与えられる持分を縮小している状況」と説明した。 続いて「労働所得を減らす最高の方法は、労働者の内部分裂を拡大することであり、 職務給制度はその画策だと見られる。 勤続年数による賃金差から雇用形態、成果、職務職種による不平等問題は、 労働者内部の賃金分配で解決できる問題ではない」とし 「今、争点にすべきは、資本から労働全体の持分を増やすこと」と話した。

撤廃連帯は「賃金決定の基準を労働の代価や市場賃金のような資本の利害の中に求めるのではなく、 すべての労働者に差別のない人生を保障するという観点で設定しなければならない」とし、 代案的賃金体系の原則として、 △安全性、△集団性、△生活保障性を提示した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


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