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協同組合の発展に本当に必要なこと

[ソーシャルパワー]独占利益の社会化がなければ協同組合もない

チョン・ホヨン(国際フォーラム) 2015.06.21 01:32

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韓国における非正規職、低賃金・不安定労働、二極化、青年失業、半額登録金、潰れていく自営業者、老人問題の解決法はあるのか? これについての解決法を提示した人々がいる。 これらの人たちは、彼らの解決法以外、従来のほとんどすべての努力は古いという。 そして2014年、彼らは政府与党まで説得して彼らの解決法を法制化させた。 この法案が通過した時は、与党も野党もみんな一緒にたった一票の反対票もなかった。

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しかし、彼らの解決法によってできた組織の現在の状況は、韓国の自営業者が没落していく状況とあまり違わない。 私が今話した「彼らの解決法」は「協同組合」であり、与野全員一致で通過した法案は、 2014年12月末の協同組合基本法改正案だ。 社会的経済を主張する「進歩的な政治経済学者」が主導する「社会的経済」の大きな軸である協同組合論が、 与党と政府の心もつかんで法制化され、協同組合を支援する政府の予算まで割り当てられた。 さらに、劉承ミン(ユ・スンミン)セヌリ党議員は 「大韓民国共同体の崩壊を防ぐために、韓国経済の体制を改革しなければならない」とし、 「進歩的な社会経済学者」と一体であることを見せる発言をして「社会的企業育成法」を発議した。 しかし実際に協同組合が実現した成果はどうだろうか?

▲協同組合設立現況[出処:http://www.socialenterprise.or.kr/cooperative/coop_present.do接続日付. 2015年6月19日]

2015年6月19日の統計を見れば、2012年12月1日の協同組合基本法施行以後、これまで2年6か月に設立された全ての協同組合は約7300組合で、 1か月に240組合程度が作られたわけだ。 企画財政部は年末には8500組合、来年には1万組合を突破すると展望した。

2015年6月8日付の世界日報、「空回りする協同組合、半分は廃業状態」で、 韓国協同組合創業経営支援センターのキム・ソンオ理事長は 「これまで一部の地域の実態を調査して、多くの協同組合の創業経営教育とコンサルティングをしながらわかったのだが、 協同組合の50%程度は電話連絡がつかない」と話した。 その上、電話を受ける協同組合の中でも事業をしていない所が多く、 約10%の協同組合だけが財貨や用役の購買・生産・販売・提供などで黒字であれ赤字であれを記録していると彼は伝えた。 キム理事長は「忠南地域は全協同組合のうち、運営される協同組合の割合の『作動率』が15〜20%であるのに反し、 ソウルなどの広域市では7〜8%と低く、全国平均は10%程度」と付け加えた。 しかしこれまで解散したところは一般協同組合79組合、社会的協同組合2組合で、せいぜい81組合だ。 ほとんどは解散手続きも取らずに放置されているという衝撃的な報道だった。

しかしこれに対して直ちに反応したのは「社会的経済」を主張した経済学者ではなかった。 企画財政部が当日、直ちに反論報道資料を出した。 企画財政部は「正常に運営している協同組合が10%しかないという報道内容は、 協同組合創業経営支援センター理事長の主張でしかない」と明らかにした。 また、「2013年の第一次協同組合実態調査の結果によれば、 協同組合基本法の施行後、約6か月経った時点だったのにもかかわらず、 調査時点に事業を運営している所は54.4%で、半分以上だった」と説明した。 企財部は、現在協同組合の正確な運営現況を把握して、現場のボトルネック要因を点検するための第二回実態調査を進めていると明らかにした。 このように、企財部は2013年の調査結果で、2015年現在の協同組合関連の業務を遂行しているキム・ソンオ理事長の主張を個人主張だと反論したのだ。 2013年の調査結果をキム・ソンオ理事長の2015年現在の時点の発言に反論する根拠にするには非常に不足だ。

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私たちがここで見るべきことは、なぜ社会的経済論を主張する「進歩的な経済学者ら」や「労働活動家ら」より先に、 政府部処が驚いて「協同組合」はそんなに没落していないと、論理的に無理な反論をしたのかという点だ。 2012年の大統領選挙当時、朴槿恵(パク・クネ)候補が李明博(イ・ミョンバク)前大統領と線を引いたのは、 「規律ある資本主義論」だった。 今はセヌリ党の院内代表になっている劉承ミン(ユ・スンミン)が当時、 その流れを主導していた。 「規律ある資本主義論」は、与野を問わずに受け入れられている路線だ。 政権の正統性を確保するために、財閥ばかりに肩入れしないことを見せるために不可欠のものとして登場してきた。

「規律ある資本主義論」の最も主要な理論家は、ジョセフ・スティグリッツだ。 ジョセフ・スティグリッツは、世界化は積極的に賛成するが、それはもっと人間的でなければならないと主張してきた。 彼の韓国語翻訳書の題名は「人間の顔をした世界化」だ。 彼が属する「ネオ・ワシントンコンセンサス」の論理を主導する経済学者らが望んでいるのは、 結局「人間の顔をした新自由主義」だ。 ネオ・ワシントンコンセンサスを政策として採択した政権はない。 いつも採択されているかのようにコスプレをしながら、新自由主義の核心政策を整理したワシントンコンセンソスの寿命を延長し続けている。

青瓦台とセヌリ党の対立が言われるが、彼らは一体だ。 公安検事と法務長官出身の新総理は公安政局を主導するだろうし、 セヌリ党の院内代表は「規律ある資本主義論」を口にして互いに補完していくだろう。 「叱るお母さん-こっそりお小遣をくれるお父さん」の姿で青瓦台とセヌリ党は進むだろうし、 新政治民主連合は「止める小じゅうと」の役割で最大限協力をするだろう。

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では「社会的経済論」を主張してきた「進歩的な政治経済学者」らは今、何をしているのだろうか? さて。 昨今の協同組合の没落に対する重要な反論(?)は、急いで政府がしてくれたし、今後もしてくれるだろうから、 研究活動と講演と著述作業を気楽に続ければ良いだろう。 現在のような公安/規律ある資本主義政局でも、進歩的な社会経済論を主張する人々は、 講演を始めるたびにいつもと同じように人間は利己的なのかを問いかけることで始めることができだろう。 「人間はホモ・レシプロクス(homo reciprocus)で、相互的人間の側面があるので、 集団の力で困難を克服して進化することができる」、「人間は本来協同する存在」だとし、 「無限競争から抜け出して協同と信頼で新しい協力体系を構築しなければならない」という内容を話すだろう。

そして、無限競争からは抜け出しても、市場で生き残らなければならない企業家精神も話すだろう。 「イタリアでは労働組合が一番強いが、同時に彼ら労働者たちは企業家精神にも馴染んでいる。 事実、労働者と市場に適応できるような創造性を持ってはいけないだろうか?」と協同組合を通じて創業し、 非正規職、不安定労働から抜け出せると激励するだろう。 イタリアのエミリアロマーニャ地域が協同組合の天国だと称賛し、 そこの成功事例をならべ続けるだろう。 それと共に、そこは特別な文化があると言うのだろう。

しかし今まで進歩的な社会経済学者らが(さぼって)ほとんど話さなかったことがある。 イタリアのエミリアロマーニャ地域の協同組合らは、「企業家精神」だけでなく「社会化の基盤の上」で運営されているということだ。 ボローニャが属するエミリアロマーニャ州政府は、1974年に地域産業発展を促進するための地域開発機構として、ERVETを設立した。 ERVETは官民パートナーシップで運営され、司法(Privat law)によって統制されるが、 ERVETの所有構造を見ると社会化機関だ。 ERVETの80.04%の株式を保有する最大株主はエミリアロマーニャ州政府であり、 残りは地域の金融機関と地域の商工会議所、地域の下位地方自治体、各産業協会が保有している。 ERVETの役割は地方政府法で規定されるが、地域技術移転センターなどの各種リアルサービスセンターらを統括する調停者として、 州政府全体の統合的なプロジェクトを構想して実行し、 また、地域経済の発展のための研究を遂行し、 地域の企業に情報提供や技術支援をする活動を担当している。 これは「町工場に何ができるのか」という実際的なネットワークがここを通して構築されてきたということだ。

エミリアロマーニャが無償教育、無償医療であることは、協同組合が発展していて、そこに特別な文化があるからではない。 平均9人の町工場水準の協同組合がいくらネットワークに集まっても、 教育と医療を無償ですることはできない。 エミリアロマーニャの教育と医療の社会化は、エミリアロマーニャ州政府がERVETという社会化機関を通じ、 協同組合をネットワークに構成する社会化の力量から出たのだ。

協同組合もきちんとやるためには社会化が必要だが、進歩的な社会経済では学者も政府与党も、協同組合のための社会化についての議論はしないだろう。 彼らがエミリアロマーニャを拠論するのは、無償教育、無償医療を提供し、町工場で必要な情報と経路を構成する高い社会化水準のためではない。 彼らが望んでいるのはホモ・レシプロクスの不安定労働者たちが「企業家精神」を持って無限競争から抜け出すことだからだ。

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皮肉にも現在の協同組合に対する議論は、社会的経済基本法の制定に関する保守、財閥陣営の反撃のためだ。 社会的経済基本法は、社会的企業、協同組合などの社会的経済組織を独自の制度的な領域と認定し、 これに対する政府の支援などを規定している。 今年3月、与野が国会処理に合意したが、日程が停滞して議論が拡大している。 保守シンクタンクと財閥経済紙は連日、社会的経済基本法は憲法精神と合わない社会主義的な発想だと騒ぎたて、 政府の支援にもかかわらず、協同組合などはきちんと成長することができずに税金を浪費するだけのゾンビ企業だと攻撃している。

前に明らかにした通り、政府が先に立ってこうした批判を釈明している形だが、 問題の根源はとりあえず協同組合の不良にある。 社会的経済基本法の制定に関する議論でも、憲法価値などの理念問題を除けば、 公共調達への参加と基金の設置運営など、政府の支援方案が重要だ。 初めから協同組合などの社会的経済組織も国家の支援と関係設定がなければ独立した運営が不可能な条件で、 そのためにこれがまるで現在の資本主義の危機の代案であるかのように語られるのも、根拠がない話であった。 独占利益を守り、育てようとする財閥が、これさえも理念論争に飛び火させ、煙に巻こうとするのは、不況の中で国家の資源をさらに独占しようとする試みと見られる。 結局、協同組合の議論さえ「連帯」と「協同」といった価値論争に集中するのではなく、 独占利益の社会化を中心とした経済構造の全体的な再編の中で話される時、 現実的な活路が開かれるだろう。[チャムセサン研究所(準)]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2015-06-22 02:52:16 / Last modified on 2015-06-22 02:52:17 Copyright: Default

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