生き残っても地獄…セウォル号の生存学生「生きてくれてありがとう」
[インタビュー]チャン・ドンウォン檀園高校生存学生保護者対策委代表「政府、マスコミに大きな責任」
ユン・ジヨン記者 2014.04.24 11:57
4月16日、セウォル号沈没当日。
179人の生存者を最後に、珍島近海の時間は止まった。
セウォル号に搭乗していた325人の檀園高校の生徒のうち75人だけが生き残った。
救助されなかった子供たちは遺体になって戻ったり、まだ冷たい海の中に沈んでいる。
失踪者の家族は時間との死闘を繰り広げた。
一分、一秒が経つたびに悲嘆に暮れた。
だが救助は遅く、政府の対応は筋道を捉えられず、言論は現場を歪曲した。
あらゆる流言飛語と政治家の軽率な行動は、家族の心を傷つけた。
地獄のような時間はすでに9日経っても終わらない。
そんな失踪者の家族を見守る生存者も地獄のような時間を生きている。
生存学生たちは、まだ惨事の瞬間から抜け出せずにいて、保護者たちは申し訳なさに涙を流している。
政府とマスコミへの怒りが増すほど、生き残ったことの申し訳ない思いはさらに大きくなる。
じっとしていられず、彼らも政府とマスコミへの対応を始めた。
彼らは4月22日、対国民要請文を発表して
「報道機関と政府は今、何をしているのか」とし、政府の迅速な救助作業とマスコミの真実報道を要求した。
また檀園高校生存者の保護者対策委も設置した。
生存学生の治癒ときちんとした学校正常化、さらに真相究明の要求も続けるという。
檀園高校犠牲学生と教師の合同葬儀が行われた23日、生存学生が治療を受けている安山高麗大病院で、生存者学父母対策委のチャン・ドンウォン代表と会った。
病院のあちこちにはまだ記者たちが陣を敷いていた。
彼は被害者を考慮しないマスコミの無理な取材競争に不愉快さを示し、政府の無能と卑怯さに怒った。〈編集者注〉
午前9時25分、「お父さん、海にコンテナが落ちて船が傾いた」
地獄のような悪夢の開まり…生存学生は精神的苦痛、失踪家族は阿鼻地獄
4月16日午前、言論は「セウォル号搭乗学生全員救出」という大誤報を出した。
あわてて臨時方便的に出した政府当局の発表をそのまま報道したためだった。
だが短い安堵のため息の後には収拾できない大惨事が待っていた。
チャン・ドンウォン代表の脳裏からも当時の空しい状況が離れない。
▲チャン・ドンウォン檀園高校生存学生学父母対策委代表
「その日の午前六時ぐらいに娘と映像通話をしました。
出勤した後、9時25分頃にまた娘から電話がきました。
海にコンテナが落ちて船が傾いたそうです。
私は特別なことではないと思いました。
まさかそんな大きな船が簡単にひっくり返るとは思いませんでした。
放送で何といったのかと子供に聞いたところ、じっとしていろといったそうです。
それで私も子供に案内放送に従えといいました。
ところが子供から40分頃にまた電話が来ました。
船が傾いて水が入ってきたそうです。
その時、初めて普通ではないと分かりました。
それですぐ非常口と救命チョッキを確認して甲板に上がれといいました。
それから連絡が途切れました。
妻がマスコミで全員救出されたという報道があったといいました。
しかし信じられませんでした。
娘は船に水が入ってきているといったのに、そんなに短い時間に300人以上の子供たちを救出するというのはおかしいでしょう。
それで作業服を着たまま飛び出しました。
すぐ珍島に行きました。」
珍島に行ったチャン・ドンウォン代表は途方に暮れた。
娘の名前が救助者リストに入っていなかったからだ。
文字通り大騷ぎになった。
つぶれそうな胸を押さえて娘を探した。
その時、知らない番号からかかってきた電話から娘の声が聞こえてきた。
漁船が子供を救助し、助けてくれたおじさんの電話を借りて電話をしたという。
チャン代表は胸をなで下ろして、子供を待った。
バスから降りた子供をみて悲しみが込み上げた。
しかししっかり抱いたこともなかった。
「抱く暇もくれずに記者が写真を撮りまくりました。
娘が嫌だと言っても撮り続けました。
子供もあちらに行けといって、私も心理的に良くないから撮るなと頼んでも聞きません」。
時間が過ぎて、安山から保護者たちが珍島にきた。
その時も取材競争が行われた。
腹を立てた父兄は取材陣に水のボトルを投げた。
保護者たちは救助された学生を乗せたバスが入ってくるのをいつまでも待った。
管制センターからも、これからバスが入ってくるはずだと言った。
しかしいくら待ってもバスは一台も帰ってこなかった。
チャン代表は阿鼻地獄の現場を後にして、娘と救助された子供たちを車にのせて高大安山病院に向かった。
「私は医師ではないので今、娘が精神的にどんな状態なのか正確にわかりません。
しかし私が知っている娘は感情表現が上手な子供でした。
しかし感情を表現しません。
しばらく落ち着いていたのに、突然わっと泣き出します。
感情の起伏が激しい状態です。
いつでも爆発する可能性があると思います。
私の家も共稼ぎです。
今もし退院して、学校に送れと言われても送れません。
妻の心配も並大抵ではありません。
子供を外にだしたら大変なことになるといいます。
スーパーに行くと2人集まっただけでも檀園高校の話をします。
町内あちこちに横断幕が張られ、テレビをつければ人々の嗚咽の声が聞こえます。
町中の雰囲気がそうです。
酒場にはお客さんもいないそうです。
大人たちもこうなのに、直接被害を体験した子供たちが耐えられますか。」
檀園高校は半月工団と近い。
そのため工団地域の労働者たちの子供も多い。
公団中心の生活圏だが、生活水準の格差はかなり大きい。
新都市アパートに住む子供がいる反面、テラスハウス密集地域で暮らす子供たちも多い。
「半月工団で働く労働者も多く、弁護士や市会議員、自営業者もいます。
生活水準の格差がなくはありません。
生存学生の保護者の中にも苦しい人は多いです。
私もだが、ほとんどが共稼ぎをしたり、一日働いてその日を暮らす状態なので、子供を一人で置いておくしかありません。
生活が苦しいから、こんなことが起きても子供を保護するのは物理的に困難です。
それで親の生活パターンがほとんど切れてしまいました。」
「子供たちは船内に、失踪家族は島の中に、生存者は病院に閉じ込められた」
事故発生以後、生存学生の保護者と失踪者の家族はみんな政府の不十分な初動対応と、不十分な災難管理システムを非難した。
いくら助けてくれと叫んでも、政府は右往左往するばかりで、マスコミは被害者より政府から出てくるいい加減な情報に熱を上げた。
被害者家族の胸の中には政府とマスコミに対する根深い不信が一杯になった。
「大韓民国で事故は一回や二回ですか?
いつも大事故がおきるたびに、初動対応が問題になりました。
今回も同じでした。
初動対応がきちんとしていれば、これほどの死傷者は出てこなかったでしょう。
政府は毎日、経済大国だ、IT強国だ、こう話します。
そんなに優秀な国で、なぜ海底ロボットは一足遅く投入され、なぜ一人も救助できないというのですか。
これほど多くの青少年が一度に行方不明になった事例は世界で初めてでしょう。
誰が見てもあきれることです。」
チャン・ドンウォン代表は、失踪者の家族と交換した何通かの携帯電話メッセージを取り出して見せた。
ある失踪学生のお父さんの切実な気持がそのまま含まれた携帯メッセージだった。
政府は救助はせず調査だけする。
気が狂いそうだ、助けてくれという内容だった。
失踪した子供は、娘と親しい友人だった。
家にもよく遊びにきた。
親の間の交流もあった。
手に怪我をして、修学旅行に行くかどうか迷って結局セウォル号に乗った子だった。
「おじさんが病気見舞いに行けず、ごめんね」
その学生はチャン・ドンウォン代表が最後に残したメッセージを確認しないまま、遺体になって戻った。
「死体を収容した遺族がこう言います。
遺体がとてもきれいだと。
遺体を探した遺族が高大安山病院にきて、会ったことがあります。
全てとても遺体が清潔だといいます。
初動救助さえきちんとしていれば、生きていたはずだと言います。
政府の不信と怒りが深くならざるをえません。
あまりのことに、失踪者の家族が青瓦台へとデモ行進をしました。
ところが警察がそれを防ぎました。
失踪者の家族まで島の中に閉じ込めたのです。
生存者は病院に閉じ込められ、子供たちは船に閉じ込められ、家族は島の中に閉じ込められました。
あまりにもひど過ぎませんか。
家族がデモ行進をしたのは、政府への哀願であり、哀訴でした。
そして被害者の声を無視するマスコミに、たった一行でも被害者の声を伝えるためでした。
そこからソウルまでとても遠いのに、どれだけ苦しくて歩いて行くと言うのでしょう。
政府の官僚の中で、誰か1人でも被害者の要求を耳を澄ませて聞いていれば、そんなことは起きなかったでしょう。」
「社会構造的な問題で起きた大事故、もうマスコミは信じない」
事故が発生した後、マスコミはセウォル号の船長に対する非難に集中した。
彼の一挙手一投足が報道され、刺激的な記事と放送が乱舞した。
一番最初にセウォル号から抜け出した船長と乗務員は「悪魔」になった。
しかし生存学生の保護者が発表した対国民要請文に、船長の言及はなかった。
彼らが指定した責任の主体は政府であり、反省すべきはマスコミだった。
「船長への責任は当然問わなければなりません。
明らかに責任を取らなければならず、処罰されなければなりません。
しかしすべての問題の原因を船長のせいにするのは納得できません。
船長の行動だけでなく、すべての構造的な問題がからんで起きた大事故です。
船長も1年非正規職で、ほとんどが非正規職で低賃金・長時間の労働をしているのに、政府が彼らにどれほどの責任感を付与できますか。
構造的な問題によって事件が起きたのです。
政府が責任を取るべきです。
真相究明をしても尻尾切りでは容認できません。」
言論の態度もまないたに上がった。
あらゆる誤報があふれ、扇情的な文句と刺激的な記事が放送とポータルを塗りたくった。
取材競争に火がつき、被害者と家族への2次加害が起きた。
一部の報道機関が生存学生に「金を払うからインタビューをしよう」と接近したという事実を伝え聞いて、生存学生の親の怒りも大きくなって行った。
その上、一部のマスコミは、高大安山病院で失踪者家族と生存者家族の間に争いが起こったという記事まで報道した。
生存学生と両親が歩いていくと、病院に運ばれてきた失踪者の両親が彼らを見て悪口を言って、争いになったという内容だった。
「情けありません。
当時、失踪者の家族が倒れ、高大安山病院に運ばれてきました。
そして生存学生の友人が見舞いにきて、正門の近くで子供たちが話している状況でした。
血気盛んな年頃ですから、騒いだり笑ったりもして話をしていたのでしょう。
それを見て失踪者の家族が一言いったのです。
失踪者家族の立場としては、あらゆることに腹が立つのでしょう。
それは自然です。
ところがその内容までマスコミは問題にします。
もうマスコミは信じません。
ありもしない事実を報道して、誤報を乱発したではないですか。
そのように取材競争をしながらも、遺族の要求や声はすべて遮断されました。
一人の救助者も出てこない海ばかりを照らしまくって、熱心に救助をしていると報道し続けています。
マスコミが被害者の要求と痛みを報道しなければならないのは当然ではありませんか?
それなのに、それを無視して偽りを包んで送りだす構造です。
保護者たちも、もうマスコミを信じないと言っています。」
「生きてくれてありがとう」この一言にも罪人になる生存学生たち
「生存者治癒プログラム、真相究明、政府謝罪、責任者処罰が必要」
最初に救助された75人の学生を最後に、それ以後、生きて返ってきた子供はない。
生存学生の保護者の心も焼けるようだ。
彼らは「生き残った子供まで罪人になった気持」だという。
とても悲しいことだった。
それで生存学生の保護者も何かをしなければならず、声をあげなければならなかった。
「失踪者の親の1人が私の娘をつかまえて『もし00が君と一緒にいたら生きていたのに』と言って泣きました。
私の娘も『おじさんごめんなさい』と言いました。
自然なことだと思います。
うちの子も友人を忘れてはならず、もっと頑張って生きなければなりません。
友人の荷物も背負って行かなければならないのは、そのとおりです。
残っている子供たちへのプログラムも必要です。
今、教育庁や学校が学校正常化をすると言っていますが、信頼できません。
被害子供たちの心理的な安定と正常な復帰を助けるきちんとしたプログラムが必要ですが、教育庁はたださっさとやろうとだけ言っています。
しかし、いい加減にやれば問題が大きくなりかねません。
十分なプログラムで治療を受ける過程と時間が何よりも必要です。
それでなければ親も安心して子供たちを学校に預けられます。」
4月22日に対国民アピールを発表した10数人の生存学生の保護者たちは、対策委を構成した。
今後、関係機関などとの面談を行い、今後の学校正常化方案や事故対策などを議論して解決するためだ。
真相究明に対する要求も強い。
チャン・ドンウォン代表は「状況が安定すれば、真相究明が行われなければならない」とし
「失踪者家族も真相究明を要求するしかない。
彼らと一緒にしたい」と明らかにした。
「とても惨めな悲劇が起きました。
これらすべては予想された事故だったという点で、さらに悲劇が大きいです。
突然起きた問題ではありません。
原因はこの社会の構造的な問題でした。
この悲劇を忘れてはいけませんが、それでも痛みだけで暮らせません。
誤った社会のために天国に行った子供たちのためにも、生きのこった学生たちのためにも、大人たちがまず反省して、二度とこんなことがおきないように、良い世の中を作らなければなりません。
その面で、現政権の責任は大きいです。
常識的に救助作業を見ただけでも納得できないことだらけです。
政府はまず失踪者をはやく救出し、遺族の立場を明確に受け止めて、問題を解決しなければなりません。
尻尾切りではなく、徹底した真相究明と、政府の公式の謝罪も必要です。
それでこそ事件がきちんと整理されます。
こうした手続きがなければ現政権も責任を避けられないでしょう。」
原文(チャムセサン)
翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可( 仮訳 )に従います。
Created byStaff.
Created on 2014-04-25 03:59:12 / Last modified on 2014-04-28 07:07:03 Copyright:
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