本文の先頭へ
韓国:密陽、対話と共感が消えた時代の自画像
Home 検索

密陽、対話と共感が消えた時代の自画像

[寄稿]「外部勢力」は密陽のおばあさんと共に泣こう

ソ・チャンホ(人権運動連帯) 2013.10.07 11:11

「みなさん、この苦しさが分かります? 一生を一緒に暮らしてきた隣人が分かれ、挨拶もしない。道で会っても賛成側、反対側と互いに見ないふりをして通り過ぎる。その苦痛が分かります? 私はそれが一番苦しい」

「こうして暮らすのは本当にうんざりだ。くやしい。いっそはやく終わればいい。待っている『状況』(侵奪)があろうがなかろうが、くやしいのは同じだ。そしてこんな恐ろしいことがもう何年も続いている! 今度は本当に最後にしたい!!」

-密陽、765kV送電塔建設反対現場でおばあさんの言葉

「密陽のおばあさん、夜はよく眠れましたか?」という挨拶がいかに恥ずかしく 無気力な言葉か、そして本当に無責任な言葉であることを痛感する時だ。文を 書いているこの時間にも、ほとんどが70歳を越える老駆の密陽おばあさんたちは 送電塔予定地6か所に穴を作って鎖を持ったまま、冷たい土の中で孤独に守って いる。そして密陽のおばあさんたちは死と断食、そして病んだ老駆を率いて若い 戦闘警察と危なっかしく全身で抵抗している。

[出処:チャムセサン資料写真]

対話と共感が消えた0.6%

密陽おばあさんの政府と韓電に対する怒りは、むちゃくちゃな田舎の利益主義 ではない。0.6%。韓電が密陽765kV送電塔事業をおばあさんたちと住民に初めて 知らせた2005年8月の環境影響評価説明会の時に参加したおばあさんたちと住民 の割合だ。政府と韓電は、2000年に今回の送電塔事業を準備を始め、住民には 5年後に知らせた。それも数人の里長と、何のための説明会かも知らずに里長に ついて行ったたった0.6%だけがその話を聞いた。

こうして政府と韓電は事業計画の段階から立地選定、住民協議の全ての過程で 形式的な手続きを取っただけで、協議はしなかった。その後、対立を仲裁する ために、対立調停委員会、制度改善推進委員会などの協議体が構成されたが、 まさに政府と韓電は議論に誠実に参加するのではなく、協議期間にも密陽市長 を告発するなどで工事を再開し強行することに力を入れた。

密陽おばあさんたちの理由ある怒りと闘争

これまで政府と韓電は、おばあさんたちと住民たちが提示した代案には耳を傾 けず、おばあさんと住民たちに本気で対応しなかった。その上、表では対話を するふりをして、むしろ賛成・反対のおばあさんと住民たちを反目させる行為 もはばからなかった。秋夕の前に鄭[火+共]原(チョン・ホンウォン)国務総理 の訪問が、秋夕以後に工事を強行する布石だという予想は、結果として正しい かった。だから密陽のおばあさんの怒りと闘争はとても正当で、対話と共感が 消えた政府と韓電に対する抵抗であり、叫びだ。

人権が消えた戦場、密陽

密陽765kV送電塔反対闘争の過程で密陽のおばあさんたちと住民たちは、共通して 公権力と警官から人間扱いされないと感じると証言している。食事と飲料水、 そして寝床ぐらいは用意したいという試みもすべて妨害され、寒さの中、きちんと 食事もできないばかりか、警官の住民への態度が非常に高圧的で、密陽の おばあさんたちと住民たちを人として、国民として全く尊重していないようだ。 警察と公権力の一方的な通行禁止により、高齢のおばあさんたちは道もない山を 三時間以上さ迷い、その過程で道に迷ったり滑落して倒れて怪我をする事故も 発生している。

苦しい中、最後の抵抗として断食をしているおばあさんたちは、最低限の安定 した空間も確保できず、ふとん一枚で夜の冷気の中にいる。その上、警察は彼 らを保護するテントの搬入を認めず、そこから1メートルも隔てない場所で盾を 持つ兵力を立たせている。断食中のおばあさんの生命が危険な状況なのは明白 なのに、公権力から保護や安全措置を受けるどころか、人間としての最低限の 尊重も受けられないまま、そのまま放置されているのだ。

[出処:チャムセサン資料写真]

国家権力の原則、絶対に彼らが定めた限度を越えてはいけない

権力に対する密陽おばあさんの期待は崩れた。国家権力の暴力性、一生を農業 だけで生きてきた密陽のおばあさんたちが、どうして知っているだろうか? 今、 密陽765kV送電塔反対闘争の過程で彼女たちが一生を通じ体で学んだ社会と隣人 への愛情や愛情がこもった批判が拭えない傷や怒りとなって、一日で崩れてい るのだろう。

無学な農民の密陽のおばあさんが悪いのでなければ国家がしっかり解決すると いう信頼が壊れたのだ。希望はともかく、国民としての基本的な権利と、約束 された期待さえ、きちんとこたえられない。まったく妥協も共感もない国家権力、 彼らの原則だけが乱舞する所、密陽!

外部勢力、密陽のおばあさんのすさまじい叫びに共感しよう

抑圧される人に力を貸すための最大の行為は共感だ。しかし密陽を通じ、共感 ではなく侮辱の時代であることを痛感する。生きることが本当にばかばかしい 何ものかになり、嘲弄の対象になった時代を生きている。密陽のおばあさんたちが 低い声で話すこと、ただ栽培して隣人とともに老いていくことが、「国家」から 共感を受けられない「危険な行為」になるのだ。

密陽のおばあさんがただ栽培して隣とともに老いていくことが犯罪になる時代、 原子力ではない代案エネルギーで未来の世代、そして私たちの世代が明るく 健康に、希望を夢見ることが容認されない時代、対話と共感の機会が与えられず 一方的な言語と暴力だけが一般化される時代が、密陽おばあさんたちから告発 されている。こうした状況で「外部勢力」は何をするべきか? 何よりも密陽の おばあさんたちと共感しなければならない。密陽おばあさんたちの低い声が 一人だけの孤独な声ではなく、社会的な響きになるようにしなければならない。 密陽のおばあさんたちの共感と対話の叫びに連帯しよう!その時、共感は 「行動」になる。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2013-10-08 00:56:42 / Last modified on 2013-10-08 00:56:42 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について