現代車、『不法派遣の爆弾回し』

正規職転換を避けるため嘱託職にして解雇

▲現代自動車ブランドの
スローガンは「新しい考え、
新しい可能性」だ。

現代自動車蔚山第5工場で嘱託職として働いたキム・ヒョンシク(27)氏は、1月 7日に出勤すると青天の霹靂のような解雇通知を受けた。11日まで働いて辞めろ というのだ。その日は昼間連続2交代制モデル実施初日だった。午前1時30分に 仕事を終えるとバスがなく、家に帰れないのでまさに前日、キム氏はバイクを 一台用意した。中古車を買おうと金を貯めていたが、すぐ車を買うにはお金が 足りなかった。危険だという妻の心配にもかかわらず、バイクを買うしかなかっ た。だが結局、その翌日、解雇通知を受けたのだ。

キム氏は2010年11月に現代車社内下請業者に入社した。ツーサンに燃料タンク を取り付ける仕事だった。仕事はきつかったが、妻と子供を考えて一生懸命働 いた。2012年7月、キム氏は現代車の職員になった。たとえ6か月の『嘱託職』 とはいえ、現代車の代表理事と契約を結んだ厳然たる『直営』だった。すでに 一か月ほど前から現場には『下請企業で働いて2年にならない人は現代車嘱託職 になる』という噂が広がっていた。一方では『嘱託職はすぐにクビになる』と いう噂もあった。だが行かないわけにもいかなかった。キム氏は「嘱託職に行 かないと言えば、契約が満了した時に切られたでしょう」と話した。

嘱託契約書を書いた翌日、会社はキム氏と一緒に嘱託になった人を集めて安全 教育をした。その場で現代車の管理者は「(6か月契約しても)勤怠さえ良ければ 2年間続けられ、正規職を選ぶ時も嘱託が優先」と話した。キム氏は嘱託職とし て最低2年は働けると考えた。がんばれば正規職になれると考えた。しかしその 管理者は6か月後、キム氏を解雇して「業者で働いた期間も『2年』に入れると 人事チームの政策が変わった」と話した。

キム氏は「クビにする時は業者で働いた期間もすべて問い、2年と言っても実際 に一銭の退職金も受け取っていない」とし、くやしがった。嘱託職の仕事は除 き、業者で働いた期間だけでも1年8か月になるが、金氏は一銭の退職金も受け 取れなかった。働いて1年になる数日前、会社がキム氏を呼んで『辞表』を書け といった。そしてすぐその翌日、また契約書を書いて働いた。会社は退職金の ためにこうすると遠慮なく話した。キム氏は今度出る時も『辞表』を書いた。 辞表を書けば失業給付を受けとれないということは、数日後に知った。キム氏 は「いっそ派遣法がなければ良かった」と話す。「そうすれば、非正規職でも クビにならず働けたのではないですか」と話した。

第4工場で嘱託職として働くチェ某氏は、2月27日には会社を出なければならな い。チェ氏は2011年3月1日に社内下請業者に入社した。キム氏と同じように 2012年7月15日に6か月の契約書を書いて嘱託職になった。2013年1月14日に契約 が満了したが、もう契約書を書くことはなかった。チェ氏は契約がさらに6か月 延びたと思った。だが17日、会社はチェ氏を呼んで「2月27日まで働く」という 契約書を書けといった。2月28日になればチェ氏が現代自動車で働き始めてから ちょうど2年になるからだ。その上、契約書作成日を二日前の15日にしろと言わ れた。現代車本館アバンテルームには、チェ氏だけでなく、昨年1月15日、一緒 に嘱託職になった人々が何人もいた。管理者は彼らにチェ氏と同じように現代 車で働き始めて2年になる前日に呼び、契約書にサインしろといった。

昨年7月に派遣法が改正され、派遣対象業務ではない業務で派遣勤労者を使う 『不法派遣』は、使用期間とは無関係に、つまり一日でも『不法派遣』で働け ば使用事業主(元請)は該当労働者を直接雇用しなければならない。現代車は、 不法派遣の可能性がある社内下請業者労働者1600人ほどを嘱託職に転換した。 だが万一の事態に備え、下請企業と嘱託職で働いた期間を合わせて2年を超える 労働者を順番に切っている。

現代自動車正規職労働組合で非正規職担当業務を遂行しているソン・テヒョン 非正規職部長は「労災や欠勤などの理由で常時必要な余裕人員が1500人ほどに なる」と主張した。だがキム氏とチェ氏は労災で休んでいる労働者の代わりに 仕事をしたり、欠勤した労働者の仕事をしているのではない。彼らは最低2年間 同じ場所で同じ仕事をしてきた。

左派労働者の会蔚山委員会は、1月11日、現代車工場に壁新聞で、嘱託職として 働いて解雇されたり解雇される予定の人に連絡しろと言った。22日までに連絡 が来た人のうち、解雇された人は10人、解雇通知を受けた人は15人に達する。 左派労働者の会側は、「現代車労働組合はユニオンショップで、現代車に入社 すると同時に自動的に加入すると決まっている」とし、「労働組合が嘱託職を 組合員として受け入れて、積極的に嘱託職問題の解決に動け」と主張した。 (記事提携=蔚山ジャーナル)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
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