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今われわれはすべてケインズ主義者?

[論説]国家と市場だけでは破局を避けられない。

ホン・ソンマン/ 2008年10月06日1時21分

「今われわれはすべてケインズ主義者だ」。1970年代、共和党出身のニクソン 米国大統領の宣言だ。それ以後、この宣言の面目を失わせるかのように、80年 代のレーガン政権の登場で新自由主義が本格化し、市場万能主義が勢力を伸ば し、ケインズ主義はひらかびた。だがニクソンの宣言から30数年過ぎた今、ま たブッシュ大統領がこの宣言を繰り返している。『今われわれはケインズ主義 者だ、すべて国家が救済する。』

サブプライムローンで破産の危機に直面したベア・スターンズをJPモルガンが 買収できるように、米政府が支給保証をした。ファニーメイとフレディマック は2000億ドルの救済金融で公企業にした。リーマンブラザーズが破産保護申請 をして、事実上国有企業になり、AIGも救済金融で国家所有企業になった。そし て今回、米議会では7千億にのぼる救済金融基金が承認がされ、また相当数の金 融企業が公企業になるものと見られる。

新自由主義の狙撃手ポール・クルーグマン教授は最近アメリカの救済金融に関 して「1990年代初め、スウェーデン政府が実施した方案、つまり金融システム を部分的、一時的に国有化する対策は、今回の事態を根本的に解決するはるか に良い方案」だと主張している。また減税より「振るわない消費支出と雇用を 刺激する景気浮揚策」、つまり積極的な財政政策を実施しろと注文する。典型 的なケインズ主義者の主張だ。

新自由主義の教理、ワシントンコンセンサスは崩壊した。それも米国によって 崩壊した。国家が介入しなければ、世界の資本主義経済の秩序はたった一日も 維持できない状況に直面したためだ。このようになって、国家の役割を強調し たポスト・ワシントンコンセンサス(Post Washington Consensus)、中国式国家 主導経済発展モデルと見なされた北京コンセンサス(Beijing Consensus)が最近 の危機状況で、また勢力を伸ばしている。ロード・オブ・ザ・リングで王の帰 還を連想させる『国家の帰還』、正確に言えば『ケインズ主義の帰還』だ。

まだケインズ主義が主流になるかどうかは見守るべき問題だが、国家の市場介 入は確かにさらに拡大しており、それが世界的な傾向だ。しかし市場の部分的 な統制と国家介入主義で、現在の危機を乗り越えられるかどうかはわからない。 新自由主義が大恐慌以後、資本の黄金時代とケインズ主義の限界と矛盾への対 応だったことを考えれば、ケインズ主義の反復が新自由主義の危機対応策にな ることはできないからだ。西欧ヨーロッパの福祉国家にさえ、新自由主義政策 が広がり、福祉が縮小し、労働権が弱まった現実は、まさにそうした形の国家 調節が不可能であることを雄弁に語っている。

根本的に、資本主義の枠組みの中で金融の投機的な性格を規制し、進歩的な方 向で資本を蓄積することは両立しない。新興市場の形成と派生金融商品の登場 で、世界経済の危機がむしろ遅れたという点を考えれば、金融的膨張は資本の 不可避な運動の過程だ。もし金融体制全体を一時的に国有化したとしても、ま た資本運動が各種の信用創出に進むしかないからだ。

規制緩和、減税、民営化、投資銀行万能主義を固守する李明博政権も不可避な 国家介入を拡大している。しかしどんな効果もあげられずにいる。最近のアメ リカ発の信用梗塞でドル貨幣価値が暴落し、それに加えて大幅に韓国ウォンが 下落している。9月末から100億ドル以上を現物市場に注ぎ込んでもほとんど効 果が上げられなかった。そのうち李明博大統領は3日の経済状況点検会議で韓中 日財務長官会議の推進を指示したという。しかし日本では韓国より10倍以上の サブプライムによる損失を受けており、資金の余力がない。その上、中国に助 けを求めると、対米関係の問題になる。経済問題ではなく政治問題になるので 米国の譲歩がなければ不可能だ。結局、財務長官会議をしてもドルを出す所も 受け取る所もない。最近問題になった外国為替保有額の使用可能規模について も「具体的に明らかはできないが相当な金額を一日または一週間以内に現金化 できる」という政府当局者の話が事実だと信じるとしても、アメリカの国債な どに投資された外国為替を米政府の承認なくすぐ現金化できるかどうかは疑わ しい。言い換えれば、常に経済はすなわち政治だからだ。

今の状況での中途半端な景気浮揚策は、有効需要が増え、消費が促進される好 循環よりも、通貨供給量を増やし、インフレに進む悪循環を誘発する可能性が 高い。金利を下げると特に高度なインフレの原因になる状況だ。外国為替が不 安定で経常赤字が拡大する現状況で、物価まで高騰すれば政府の統制は完全に 失なわれる恐れもある。また経常収支が赤字の状況で、財政赤字まで甘受して 政府支出を増やすとしても、景気が回復する展望はない。韓国が米国ではない 以上、ドルを刷ることもできず、だからといってさらに税金をかけることもで きない。

このように、新自由主義では今日すぐに崩壊し、国家介入主義では明日に崩壊 するような状況だ。資本主義世界経済と韓国経済は『死ぬか悪くなるか』だ。 新自由主義も国家介入主義も代案でないとすれば、何が代案か? それは経済主 導者の行動にかかっている。ファンドと株式市場の収益率しか見ない株主行動 主義が続く限り、どんな政策も破局に進むだろう。資本統制を目標とする社会 的な行動主義と生産手段に対する実質的な社会化が形成されない限り、国家と 市場だけではどんな代案にもなれない。これが20世紀の教訓だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2008-10-08 01:17:44 / Last modified on 2008-10-08 01:17:47 Copyright: Default

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