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延命医療決定法を拙速制定、「死の階級化を呼ぶ」

韓国障害学会、延命医療決定法制定の議論を批判

ハ・グムチョル記者 2015.07.15 11:18

最近、わが国でも本格的に尊厳死や消極的安楽死の法制化の議論が浮び上がっている。 5月22日、国会で延命医療決定に対する立法公聴会が開かれたのに続き、 7月7日には金在原(キム・ジェウォン)セヌリ党議員が 「ホスピス・緩和医療の利用および臨終過程の患者の延命医療決定に関する法律案(以下、延命医療決定法)」を提出した。

しかし、これに対して障害者界からは、 延命医療決定が立法されれば最大の影響を受ける障害者の声が十分に反映されていないとし、 立法議論を中断しろと要求している。

これまで韓国には、臨終期の患者の安楽死または尊厳死についての明確な法的基準が存在しなかった。 そうした中で大法院は2009年「セブランス金おばあさん事件」の判決で、 患者が回復不可能な死亡段階に入り、 延命医療中断について患者の事前の医療指示がある場合、 延命医療を中断できるという許容基準を提示した。

この事件以後、延命医療の決定についての法的基準が必要だという声が高まり始めた。 そのため国家生命倫理審議委員会は2013年上半期に 「延命治療中断制度化特別委員会」を構成し、 同年7月、延命医療決定対象患者、延命医療の範囲、患者の意思確認方法など、 患者が延命医療を正しく決められるように特別法形態の立法が必要だと勧告するに至る。

金在原(キム・ジェウォン)議員が7月7日に発議した延命医療決定法案も、 国家生命倫理審議委員会の勧告に基礎を置くもので、 議員発議の形式ではあるものの実質的に政府が推進しようとしている内容で構成されている。 法案の主な内容は、延命医療制度化のために国立延命医療管理機関および病院倫理委員会を設置し、 19歳以上の成人は事前に延命医療意向書を作成し、登録機関に登録できるようにした。 また、延命医療の決定および履行関連の対象と手続きを規定し、 ホスピスおよび緩和医療制度化のために、専門機関の指定および評価条項などを用意した。

これについて韓国障害学会(以下、障害学会)は7月14日に声明を出し、 延命医療決定法の制定推進過程が拙速だとし、 障害者界と議論できる公論の場を用意することを要求した。

何よりも彼らは「法案が用意され、公論化される過程でこの法の大変重要な関連当事者の障害者界が参加できる何の構造も論議の場もなかった」と指摘した。 2013年に延命治療中断制度化特別委員会が構成され、意見収斂された過程はもちろん、 5月22日に開かれた立法公聴会からも障害者界は基本的に排除されたという。

そればかりか、安楽死、産前検査、選別的堕胎、胚芽研究など、 生命倫理の重要な議題の多くが障害の問題に関係しているが、 これを議論する国家生命倫理審議員会の委員55人のうち障害者当事者はもちろん、 障害者界の立場を代弁できる人は一人も含まれていないという指摘だ。

障害学会はこのような理由で今回の法案には障害者の観点が徹底的に欠けていると批判した。 彼らは「『障害者として生きるより、いっそ死ぬほうが良い』というような偏見が相変らず存在する韓国の状況で、 成年の後見人や病院の倫理委員会はもちろん、時には家族さえ障害者の意思を代弁しているとは言えない」とし 「しかも家族がいない状態で施設に居住し、法定代理人が施設の長という状況なら、 そのような障害者の生命権の保障はさらに脆弱な状況に追いやられるしかない」と主張した。

その上「法律では意思能力の問題に関し、未成年者の場合に言及しているだけで、 未成年者ではない発達障害者には何の明示的条項も置いていない」とし、 延命医療決定における障害者当事者の自己決定が侵害される状況を法案が全く考慮していないと指摘した。

障害学会はまた、臨終過程の患者に対する経済的支援方案などがない状況で進められる延命医療決定法は、 『死の階級化』を助長すると憂慮した。 彼らは「延命治療中断制度化特別委員会さえ『ホスピス・緩和医療制度確立と施設拡充』、 『臨終過程の患者に対する経済的支援』を勧告した」とし 「延命医療決定の制度化は、そのような社会的基盤の上だけでその誤用と生命権侵害の危険性を最小化できる」と明らかにした。

だが、今回の延命医療決定法案には臨終過程の患者に対する経済的支援条項は全く存在せず、 法案と共に提出された費用推計書にもホスピス・緩和医療専門機関指定などに関しては、 一銭の予算も策定していないという。 彼らは「ホスピス・緩和医療が公共医療の基礎の上に構築されなければ、そして臨終過程の患者に対する具体的かつ十分な経済的支援が形成されなければ、 障害者、ホームレス、貧民などの社会的脆弱階層がその一次的な被害者になるほかはない」と批判した。

障害学会は最後に「政府と与党は今からでも拙速な延命医療決定法の制定を中断しろ」とし 「障害者界と誠実で真剣な公論の場を用意する一方、今回の問題を契機に生命倫理政策に関する意志決定過程全般に障害者界の参加を保障することを要求する」と明らかにした。

一方、世界的に安楽死を制度的に認めている国家は2014年現在、 オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ程度で、 米国では5つの州(オレゴン、ワシントン、バーモント、モンタナ、ニューメキシコ)だけで部分的に認めている。 英国では昨年、助力自殺(Assisted suicide)を合法化する法案が提出されたが、 「誰かの人生を終わらせるにあたり、医者に事実上の『免責特権』を与えるようになる」という障害者団体の反対にぶつかっている状態だ。

付記
ハ・グムチョル記者はビーマイナーの記者です。この記事はビーマイナーにも掲載されます。チャムセサンは筆者が直接書いた文に限り同時掲載を許容します。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


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