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「MERS無能政府」がまたエイズ患者を追い出す

[寄稿]地域の公共病院を拡大し、投資を増やせ

クォン・ミラン(HIV/AIDS人権連帯ナヌリ+活動家) 2015.06.16 14:39

急迫した四日

6月5日午前11時30分頃、患者の家族から 「看護師長が6月9日までに退院しろと言う。どういうことでしょうか?」と電話をくれた。 彼女の声は震えていた。 とにかく国立中央医療院でそんなはずがないと、誤解があるようだと安心させたが、私も震えていた。 来るものが来たような気がした。 国立中央医療院にいた13人のエイズ患者は、短くても数か月、 長ければ1年以上の長期入院をしていた。 他の総合病院ではそれほど長く入院することはできない。

どういうことなのかを調べるために、疾病管理本部(エイズ結核管理課)と国立中央医療院に電話した。 国立中央医療院は「MERS中央拠点病院」に指定され、6月9日までに約300人の入院患者全員が退院しなければならない状況だとし、 エイズ患者が入れる病院を全国で調べていると説明した。 疾病管理本部と電話がつながったのは5日の午後2時頃だった。 金曜の午後で、週末を除き二日しか時間がなく、13人の患者が行先の病院を見つけられるのかドキドキした。

6月6日に配られた福祉部報道の資料には 「MERS患者の治療に専念する予定。 一部不可避な場合(エイズ患者など)を除外」となっていて、 マスコミはこれをそのまま報道した。 病院を見つけられなければ国立中央医療院に残れるという意味か? これからどうなるのか?

6月8日の月曜、また疾病管理本部に電話した。 「エイズ患者除外」と報道され、患者の家族が混乱しているので詳しく教えてくれと言ったところ「誤報」だという。 福祉部、疾病管理本部、国立中央医療院間のコミュニケーションがどうなっているのか、 全員退院しなければならないとすれば行先の病院が確保できたかのを問い合わせた。 疾病管理本部ではすべて確保されたと言い、患者の家族でもない人になぜ知らせなければならないかと言われ、してしばらくもめた。 しかしその時点で、13人のエイズ患者が行く病院はすべて確保されていなかった。 まだ5人の患者の病院が見つからず国立中央医療院は疾病管理本部と相談している時点であり、シェルターを調べていた。 シェルターはこれらの患者の面倒を見られるような所でもなく、シェルターもすでに満員だった。 疾病管理本部は電話をかけた患者の家族に「その患者は病院が退院命令をした患者だ。 病院を調べる必要はない」と答えた。 退院命令? 今まで入院していて一日で患者の状態が良くなったというのか?

6月9日の朝、国立中央医療院に行った。 幸い13人全員の病院が決まった。 退院手続をして3か月分の薬をもらい、荷物をまとめるなど、 転院の準備をする看護師、介護人、患者の家族で病室の廊下は混み合っていた。 慶尚道、忠清道、京畿道などにある4つの病院に行く救急車が到着し次第、互いに見送った。 長い病院生活の結果、増えた荷物の中に患者と家族がはさまっている様子はまるで避難民のようだった。 家族は看護師に「また会えますよね? また国立医療院に戻れますよね?」と何度も尋ねた。 横になっている患者を救急車のベッドに移し、病室を出て涙を浮かべた。 その患者はものが言えず人を区別することはできないが、 何かを感じたようだと介護人と家族が残念そうだった。 介護人も翌日、荷物をまとめて慶尚道、忠清道に発った。

前の日まで病院が確定しない患者がいた状況なので、13人全員が転院できると安心していたが、それがすべてではなかった。 国立中央医療院でとても苦労して病院を連係したが、3人の患者はその病院に入院しなかった。 2人の患者は総合病院の入院費が心配で、家族が家に連れていき、 他の1人の患者も家族が家に連れていったが理由はわからない。 家できちんと健康状態を維持できるのか、 なじまない病院に運ばれた患者も無事に過ごせるのか心配だ。 そして13人の患者のうち相当数が基礎生活受給権者なので、 慶尚道、忠清道などに行くための10〜40万ウォンもの救急車の利用料も大きな負担だった。 患者は1人世帯や高齢の両親、姉、義兄、配偶者が保護者役をしているが、 保護者も暮らしは楽ではない。 50代の配偶者が夜明けに牛乳配達をしたり、70代の老母が食堂でおかずを作って生計をたてている。 そればかりか、外来診療を受けてきた千数百人のHIV感染者も病院を移り、 薬をもらってこなければならないが、慢性疾患者にとって病院を変えるのは軽い問題ではない。

▲MERS事態を放置した政府を批判して公共病院の拡充を要求する市民社会団体の記者会見。[出処:保健医療団体連合]

公共病院に押し付けた患者たち

13人の患者は国立中央医療院への入院には適していない患者だった。 彼らは全員、療養病院や療養院に行くべき長期療養患者だ。 老人長期療養保険の対象ではないので療養院には行けない。 2013年の12月までは、エイズ患者が行ける唯一の療養病院があった。 疾病管理本部が2010年から「重症/精神疾患エイズ患者長期療養事業」をS療養病院に委託したが、 そこでエイズ患者に対する人権侵害と差別事件が発生したため、 疾病管理本部は2013年12月に委託契約を解約した。 だが今まで疾病管理本部はS療養病院に入院していた数十人のエイズ患者を国立中央医療院と国立警察病院などに転院させただけで、エイズ患者が入れる療養病院を用意しなかった。 長期療養が必要なエイズ患者を国立中央医療院などに押し付けたのは、疾病管理本部だ。 全国に1300余りの療養病院があるが、エイズ患者が入れる療養病院は一つもない。 エイズに対する根拠のない恐怖と烙印のためだ。 1300余りの療養病院のうち約70か所の公共療養病院があるが、民間委託形態で運営されており、ここもエイズ患者を拒否しているのは同じだ。 そのため長期入院や長期療養が必要なエイズ患者にとって、国立中央医療院は最後に依存できる所だった。

そして総合病院や大学病院で診療を拒否されたHIV感染者が行く所も国立中央医療院だ。 2011年、新村セブランス病院で「特殊手袋」がないという理由でHIV感染者への人工関節手術を拒否し、 2014年には国立警察病院で歯科、皮膚科などの診療を拒否したことがあり、 2014年、原州のセブランス基督病院は「鮮血が飛び散るのを防ぐ幕」がないという理由で中耳炎の手術を拒否し、 最近までソウル特別市のポラメ病院は「泡沫が飛び感染の恐れがあるので別途の分離した空間(専用チェアを含む治療室)」がある病院に行けと言って歯科スケーリングをしなかった。 新村のセブランス病院、原州のセブランス基督病院、ソウル特別市のポラメ病院は、 疾病管理本部が施行する「医療機関HIV感染者相談事業」に参加する19の総合病院に含まれており、 国立警察病院は疾病管理本部がS療養病院にいたエイズ患者を転院させた所だ。 ここでも診療が拒否されるのでは、他の病院の状況はどうだろうか? その上、国立・市立病院の国立警察病院とポラメ病院は、ソウル市と安全行政部が管理・監督機関なので、質疑をして是正を要求することができた。 だがその他のすべての医療機関に対する管理・監督を担当する福祉部は 「医療法14条(診療拒否禁止)」に違反してはならないという原則的な案内をするだけだった。 経験上、この条項は患者にとって何の役にも立たない。

韓国は1、2、3次医療伝達体系を持ち、急性期-長期療養治療が区分されているが、 これはエイズ患者には何の意味もない。 エイズ患者が気楽に1次医療機関(町内病院など)を利用するのは想像もできない。 そのためHIV感染者は病気の軽重や急性期-長期療養治療を問わず総合病院の診療に依存しており、国立中央医療院が最後の砦だ。 千数百人のHIV感染者が国立中央医療院に集まるもうひとつの理由は、安い診療費のためだ。 他の総合病院より安い。

悲しい患者はエイズ患者だけではない。 国立中央医療院には低所得層の慢性疾患者がたくさん通っていて、ホームレスもいる。 路上、施設、スラムなどの地で暮らしていたホームレスは「野宿者1種医療給与」または地方自治体の医療支援が可能だが、 ただ福祉部と地方自治体が決めた医療施設(絶対多数が公共病院)だしか利用できない。 国立中央医療院も指定医療施設の一つだ。 突然に病院が空けられ、一部のホームレスは他病院への転院を拒否されたり、 まったく路上に追い出される事が発生した。 さらに野宿者福祉機関との連係もないケースもあり、退院させられたホームレスがどこで病気と悲しみに苦しんでいるのか、知ることもできない状況だ。 国立中央医療院がホームレスに自分で転院する病院を見つけろと言って退院を勧めたり、 積極的な転院対策を取らず、福祉部は問題はないと話し、 ソウル市は一足遅れて状況を把握中だ。 6月10日付のハンギョレ新聞によれば、ソウル市は 「国立医療院に入院していた野宿者の患者16人のうち5人は他の病院に入院したが、 11人は退院した。退院者がどうなったのか現況を把握中」だという。

▲エイズ患者を治療できる国家直営療養病院の設置を要求する記者会見.

伝染病専門病院? エイズ専門病院?

とにかく行く場がないエイズ患者は政府の政策によって、また移された。 MERS事態が長期化すれば、転院先の総合病院が長期入院はできないから退院しろといえば、 S療養病院事件から今まで放置されていたエイズ患者の状況を詳しく説明し、 もっといさせてくれと哀願するようなことが起きるのか? 転院先の総合病院はエイズ患者に好意的に対してくれるのか? 総合病院の入院費が負担になって退院する患者がまた発生したらどうするのか? MERS事態が落ち着けば、彼らは国立中央医療院に戻れるのか?

これらのエイズ患者は、究極的には「国家直営」の療養病院に行くことを望む。 「国家直営」を要求する1次的な理由は、エイズ患者集団全体がすべての療養病院で差別されている状況で、国家の徹底した管理監督と責任が要求されるためだ。 エイズ患者の他にもホームレス、無縁故者、稀貴難治性疾患者、慢性感染病気者、合併症が多い患者など、療養病院から排除される人たちがいるのに、 誰もが安心して行ける療養病院が必要だ。 70余りの市道立、市郡区立療養病院があるが、民間委託運営なので地方自治体の管理・監督外にある。 「国家直営」療養病院が必要な理由は「まともな療養病院」を作り、標準モデルを提示しようということだ。

地域ごとにMERS対応をする公共病院が不充分なので、結局国立中央医療院をまるごと空けなければならない韓国の医療の現実がそのままあらわれ、 一部では「伝染病専門病院」を代案として提示したりもする。 今後も新種の伝染病は続くだろうし、これに専門的に対処しようという意味だ。 だが30余年にわたるHIV感染者の経験からみて、これは根本的な解決策ではない。

韓国は他の国と比べ、病院と病床は多い。 療養病院も同じだ。 だが、これらの病院のうち公共病院の割合は他の国よりとても低い。 1300を超える療養病院がすべてエイズ患者を拒否し、福祉部は診療点数を上げて入院を誘導しようとした。 すると大韓老人療養病院協会は「感染病管理機関に指定された病院と総合病院で入院診療を受けたり、 結核病院と同じように別途に管理するのが合理的」とし、 「エイズ専門病院など」を作り、国家が責任を持てと主張する。 エイズ患者の境遇を残念がる人の中にも「エイズ専門病院でも作って」健康権を保障すべきだと話す。

だが彼らを「専門」病院に閉じ込めるのは「プロフェッショナル」を整えるのではなく、 「社会的隔離」することだ。 これは特定の患者に対する烙印を固着化させる。 また彼らを排除する医療システムの問題を解決できず、むしろ隠してしまう。 国民の誰も現在のエイズ患者のような取り扱いを受けたくないだろうし、それではいけない。 地域ごとの公共病院を増やし、公共病院に対する投資を増やさなければならない。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2015-06-17 06:29:08 / Last modified on 2015-06-17 06:29:09 Copyright: Default

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