本文の先頭へ
韓国:サムスン半導体79人目の死亡者、補償金問題で苦しむ
Home 検索

サムスン半導体79人目の死亡者遺族「子供のような労働者の犠牲をなくせ」

故人、労災不承認による不服訴訟、サムスン補償金問題で苦しむ

パク・タソル記者 2017.01.16 16:32

「自然に戻り、これ以上苦しむなと、 先山に芝葬で埋めてあげてきました。」

チョン・オクスク氏は息子を思い出しながらやっと話を繋いでいった。 サムスン電子半導体工場で働いて急性骨髄性白血病で死亡したキム・ギチョル氏のお母さんだ。 チョン氏は1月16日朝、故人の出棺を終えて家に戻るところだった。 悲しみが収まる前に記者の電話を受けて、話を切り出したのは 「これ以上、息子のような犠牲者があってはいけない」という希望だった。

[出処:パノルリム]

キム・ギチョル氏は去る14日の午前4時に満31歳の年齢で亡くなった。 故人はパノルリムに情報提供されたサムスン半導体LCD職業病被害者のうち79人目の死亡者だ。 2006年からサムスン半導体華城事業場協力業者の(株)クリーン・ファクトメーションで働き、 2012年に急性骨髄性白血病と診断されて闘病生活を始めた。

キム氏は入社してからサムスン電子華城工場15ラインで働いた。 15ラインでは数百種類の化学物質を使って半導体ウェハーを加工する。 キム氏はここで半導体ウェハー自動搬送装備の維持保守業務を担当していた。 ウェハー自動搬送装備の維持保守業務は、 ベンゼン、ホルムアルデヒド、ヒ素などの発ガン物質とメタノールなどの毒性化学物質と向き合わなければならなかった。 作業の動線もとても危険だった。 キム氏が作業のために長くいた所は電離放射線に露出するといわれるイオン注入工程、 ベンゼンなどの発ガン物質に露出するというフォト工程の周辺だ。 2013年、雇用労働部はサムスン電子華城工場を特別監督したが、 何と2004件の産業安全保健法に違反していた。 キム氏は直前の年に白血病と判定された。

キム氏は6年間、病魔と戦う一方、白血病が労災だったということを立証しなければならなかった。 2012年9月、血液の異常で病院を訪れ、急性骨髄性白血病と診断されたキム氏。 当時、故人を診断した亜洲大病院職業環境医学専門医は故人の業務内容を聞いて 「疾病と職業との相当な因果関係がある」と診断書に記録した。 入社前は非常に元気で、白血病に関する何の病歴も家族歴もなかったので、 キム氏は白血病が労災だという考えを固めた。

キム氏は2012年10月、勤労福祉公団に労災療養給与申請をした。 だが勤労福祉公団は2014年3月、有害物質露出水準が高いとは見られないという理由で不承認を通知した。 キム氏はこれを不服とし、行政訴訟を提起した。 訴訟を提起して2年になろうとしているが、結論に向かって進むどころか資料提出の攻防の真っ最中だ。

裁判所はサムスン電子に対してキム氏の業務環境資料を要請したが、 1年6か月を越えても何の回答も受けられなかった。 一回督促をしても同じだった。 裁判所が文書提出命令をしようとすると、その時に始めて回答がきた。 それさえも「該当資料が存在しない」とか「営業秘密に該当する」という不誠実な回答だった。

雇用労働部とその傘下機関も資料提出に後ろ向きなのは同じだった。 事業場の安全保健管理実態を点検した資料(作業環境測定報告書、特別監督報告書、総合診断報告書など)を 「事業主の営業秘密に該当する」、「保管していない」などの理由をあげて提出しなかった。 特に雇用労働部は、関連資料を提出しろという裁判所の文書提出命令があったが、 「地方雇用労働官署が判断する問題」だとして責任を転嫁した。

困難な訴訟はキム氏を疲れさせた。 キム氏は「私がこれほどまでしても(訴訟で勝つことは)難しいようだ」 という話をしばしば両親にしたという。

2015年末、サムスンは調停委員会の勧告案を拒否して一方的に職業病補償問題を終えようとした。 同じ時期、白血病が再発したという知らせでキム氏は補償申請をめぐりずいぶん悩んだという。 サムスンの一方的な補償案を拒否して社会的な仲裁機構を作ることに力を補わなければならないと思ったが、 目の前の治療費に涙を飲んでサインした。 チョン・オクスク氏はその光景を見ながら悲嘆に暮れたという。 「(サムスンが)申し訳ないふりもせず、本当は払わないがこの程度は払うという調子で話しました。 そんな金を受け取れるかというようすでしたが、両親が困るかと思ってサインを決めたギチョルさんははどんな気持ちだったでしょう。 再発の衝撃も大きかったのに、この時は心理的にとても苦しんでいました」

チョン・オクスク氏は、もう若い人々が犠牲にならないことだけを望むという。 遺影を公開したのもこの出来事を知らせるために必要だと考えたためだ。 「葬儀場に息子の同僚がきたが、同年頃でしょう。 皆優しくて、純粋な人々なのに、まだとても危険なところで働いています。 息子はきちんと治療もできずに送るが、これ以上こうしたくやしい人がいてはいけないでしょう。 サムスン工場が恐ろしいところということ、 多くの人が死んだということが広く知られたらいいですね。」

キム氏の出棺があった同日午後、朴英洙(パク・ヨンス)特検はサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長に賄賂供与罪などを適用し、拘束令状を請求した。 イ副会長は昨年12月6日、国会国政調査特別委員会聴聞会に証人で出席して 崔順実(チェ・スンシル)の認知時点について偽証をした容疑も受けている。

この聴聞会でサムスン電子半導体職業病死亡者に対する質問が出ると、 李副会長は白血病で死亡した故ファン・ユミ氏を知っていると答えた。 職業病に関して叱責が集中すると 「すべてのことに重大な責任を感じており、 これから私たちの事業場に限らず、すべての協力社まで、 作業環境や事業環境(を整備することを)がんばる」と約束した。

しかしパノルリムで活動するイム・ジャウン弁護士は、 こうした社会的約束は信頼できないと話す。 イム弁護士は「この10年間に見せてきたサムスンの態度、労働者の陳述を総合してみれば、 安全問題をサムスンに任せてはいけないとパノルリムは判断している」と明らかにした。 イム弁護士は「国家が管理監督をして、外部の専門機構が安全保健管理を点検し、 サムスンが積極的に協力をするシステム必要だが、 サムスン電子はこれに拒否感を示している」とし 「自分たちが判断してきちんとやるという約束は、前例から見て信じられない」と話した。

キム氏の死亡直後にパノルリムは声明を通じ、イ副会長の処罰を要求した。 15日、パノルリムは「サムスン電子の最高責任者として、 職業病放置、労災隠し、79人の死に対しても厳重な処置を受けなければならない」と強調した。 財閥が起こした問題のうち、労働者の生命を奪った罪は最も大きいだろう。 サムスン経営陣の殺人罪の処罰はいつ頃可能だろうか?

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-01-22 05:06:20 / Last modified on 2017-01-22 05:06:22 Copyright: Default

関連記事キーワード



このフォルダのファイル一覧上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について