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フランスの9.11、時代遅れの雑誌社テロは何を挑発しているのか?
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フランスの9.11、時代遅れの雑誌社テロは何を挑発しているのか?

[海外の視点]監視と弾圧、人種的対立の激化、報復の陰謀を憂慮

ダイアナ ジョンストン(作家) 2015.01.09 12:25

マスクをかぶった3人の武装暴漢が風刺週刊誌、シャルリー・エブドの事務室に入り、12人を殺害した。 フランスの政治家と論説委員は突然ジレンマに陥った。

暗殺者は逃げた。 だが長くはないだろう。 これらの男たちはよく訓練された殺人者だ。 シャルリー・エブドは数年前、預言者モハメドを嘲弄する漫画を掲載した後、 定期的に殺害の威嚇を受けてきた。 だがこの論争はほとんど忘れられ、週刊誌の販売部数は(たいていの報道機関がそうであるように)減少し、警察の保護は緩かった。 警備をしていた2人の警察は、編集会議が行われている事務室に暴漢たちが入る前、簡単に殺害された。 それほど多くの漫画家と作家が同時にいたのも珍しいことだった。 12人が自動小銃で虐殺され、他の11人は負傷、一部は致命傷を受けた。

現在この雑誌の代表編集者でシャルブと呼ばれる漫画家(ステファン・シャルボニエ、47歳)の外にも、 犠牲者の中にはフランスで最も有名な2人の漫画家、キャビュ(ジャン・キャビュ、76歳)、ウォランスキ(ジョルジュ・ウォランスキ、80歳)も含まれている。 フランスで二三四世代はここの左派の情緒を優しく描き出したキャビュとウォランスキと共に育った。

殺人者たちが現場を離れた時、1人はまた戻って傷を負い路上に倒れている警察1人を殺した。 そして「預言者は復讐した!」という大声をあげ、北東側の郊外に逃げた。

群衆は自発的に、シャルリー・エブドの事務室がある小さな道とあまり離れていないパリのリパブリック広場に集まった。 勇敢な、しかし事実ではないスローガンが広がった。 「われわれはシャルリーだ!」だが彼らは違う。 「シャルリーは生きている」違う。そうではない。 それは全滅と違わない状態だ。

誰もが衝撃を受けた。 言うまでもない。 これは冷血な殺害であり、許すべきらざる犯罪だ。 これもまた言うまでもない。 だがみんながそれを語る。 そして誰もが「われわれはイスラム極端主義者たちが私たちを威嚇することを、 そしてわれわれの表現の自由を奪うことを許容しない」というような、 さらに多くの言葉を語るようになる。 フランソワ・オランド大統領は、フランスはこれらの暗殺犯に対抗して団結すると強調した。 この種の残虐行為に対する初期反応は予想できる。 「われわれは脅かされない! われわれは自由を放棄しない!」

そうだ。いや、違う。 確かに最高に狂った狂信者でも、ユーモア作家を虐殺すればフランスをイスラムに改宗させると想像することはできないだろう。 結果は正反対になるのは確実だ。 反ムスリム情緒の拡大。 これが挑発なら、ではこの挑発は何を意味するのか? そしてこれは何を挑発しているのか? 明らかな危険は、9.11のように警察の監視を強化し、 殺人者たちが追求する方式ではなく、ポスト9.11以後に米国で自由が制約された方式で、エセ愛国法により、フランスの自由が本当に弱まるという点だ。

監視と弾圧、人種的対立激化、報復陰謀の憂慮も

個人的に、私は預言者を侮辱する漫画を-またはイエスに関することも-掲載したシャルリー・エブドの挑発的な態度は好きではない。 好みの問題だ。 私は汚らわしく猥褻な絵が宗教を問題にしようが、当局を問題にしようが、 効果的な論争になるとは考えない。私が好きな方式ではない。

殺害された人々は、シャルリー・エブド以上だ。 キャビュとウォランスキの絵は多くの出版物に登場し、 決してシャルリー・エブドを買って読まない読者層がいる。 編集会議に出てきたすべての芸術家と作家たちは「神聖を冒涜する」漫画とは何の関連もない人々だった。 言論の自由はまたしばしば低俗になったり、バカになる自由でもある。

シャルリー・エブドは事実、表現の自由のモデルではなかった。 それは結局、さまざまな「人権」のように「独裁者」に対する米国主導の戦争を擁護した。

2002年、当時編集長だったフィリップ・バルは、ノーム・チョムスキーを反米主義者であり、イスラエルと主流ジャーナリズムに過度な批判をすると非難していた。 2008年、シャルリー・エブドのもうひとりの有名漫画家のシネは、 サルコジ大統領の息子ジャンが有名家庭用機器メーカーの相続者と結婚するために、 ユダヤ教に改宗するというニュースを引用した短いメモを記録していた。 シネは「彼は将来大きくなるだろう、この野郎」というコメントを付けた。 このためにシネは「反ユダヤ主義」だという理由でフィリップ・バルから解雇された。 シネはすぐ競争紙を見つけ、シャルリー・エブドの多くの読者を連れていった。

簡単に言えば、シャルリー・エブドは現在のフランス左派の「政治的に正しい」路線とは外れた極端な事例だった。 このアイロニーは外観上、イスラム主義の殺人者が犯した殺害の攻撃が大衆的な訴求力を失い、全盛期を過ぎたこの古臭い雑誌を突然言論の自由、表現の自由という永遠のスローガンで神聖化している点だ。 殺人者たちの意図がどうだろうが、これが彼らが行ったことだ。 また、無実の人命を奪い、彼らは明らかにこの世界の残酷な混乱についての感覚を深め、 フランスとヨーロッパでの人種集団間の不信を増加した。 そればかりか、疑う余地なく不吉な状況も作った。 疑惑の時代に陰謀理論が増殖するのは確実だ。

[原文]http://www.counterpunch.org/2015/01/07/what-to-say-when-you-have-nothing-to-say/
[筆者]ダイアナ・ジョンストン(Diana Johnstone)は米国出身でパリで暮らす。「愚者の十字軍: ユーゴスラビア、NATOと欧米の幻想」の著者。
[翻訳]チョン・ウニ記者

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2015-01-13 04:26:38 / Last modified on 2015-01-13 04:26:38 Copyright: Default

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