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〔週刊 本の発見〕坪田譲治『風の中の子供』 | |
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"子供向け"に留まらない「児童文学」『風の中の子供』(坪田譲治 著)評者:大西赤人
坪田は、兄と叔父とが対立する同族会社の争いを身近に見聞きしており、その経験が『風の中の子供』をはじめとする諸編に反映している。全集の巻頭に収められた同作を読んだ時、小学生だった大西に強烈なインパクトを与えた言葉に――今では死語(現在は執行官)ながら――「執達吏」があった。主人公である善太(小五)と三平(小一)兄弟の父親が私文書偽造の冤罪で逮捕された後、対立する役員とともに家に執達吏がやって来る。この言葉の意味が判らなかった。辞書は調べたとしても、現実的なイメージが湧かない。その後、彼らが家中の道具を差し押さえ、「たんすにも戸だなにも、白い小さな紙が斜めに張り立てられていた」という描写が現われ、子供心に得体の知れない恐ろしさを感じたものだ。これには理由があって、坪田による本書巻末の「あとがき」に『お化けの世界』や『風の中の子供』に至るまでの毎年の原稿執筆枚数と稿料、その経済的苦境が精細に記されていて、それを何度も読みながら、�爛Ε舛良秧討慮狭討眷笋譴討い覆い茲Δ世韻鼻�大丈夫なのだろうか? (もしや執達吏がやって来たりはしないのだろうか?)�瓩覆匹般兪曚鴉�しくしていたように思う。 『笛』という短編も印象的だ。吃音のある善太は偶然拾った呼子笛に魅入られ、授業中に思わず吹いてしまう。担任から黒板の脇に立たされ放置された彼は、引っ越しを控えている家に向かってやむにやまれず走り出し、吹きつづけていた笛を電車の線路に投げつける。 「善太はなにを思ったのか、その電車の前へ大声で叫びながら駆けこんだ。 この端的な終り方は、その後、大西が文章を書くにあたって影響を与えたものと自覚する。また、本書には収録されていないが、家の窮迫に備えて(備えるつもりの)子供が、彼にとっては大いに価値があるものの金額としてはタカの知れた貨幣を庭木の根元に埋め、木肌に「マサカノトキハコノシタホレ」と彫るという短編『まさかの時』なども今も忘れがたい(文庫本が見当たらず、細部に記憶違いがあるかもしれない)。 坪田の郷里・岡山市では、1985年に「坪田譲治文学賞」を制定するなど、彼の顕彰を続けている。今の子供たちにとって、あるいは大人たちにとっても、その物語は身近な存在ではないかもしれないけれども、一読に値する作品であると思う(余談ながら、同賞が生まれた1985年に大西の出した小説『影踏み』は、第一回「坪田譲治文学賞」の最終候補作五編に入っていたそうで、現在も同賞に関するサイトに記載が残っている。大西が何らかの賞の候補になったことは、後にも先にもこの時だけである)。 Created by staff01. Last modified on 2023-12-08 08:25:22 Copyright: Default | |